ダンジョンメイカー
{旧章題:ダンジョンランキング上昇編}
{地下牢層間の監守室}
閉ざされた世界
自由の枯渇
絶望のアンダーグラウンド
そこに集うは四種族の長とダンジョンマスター
これは新星の聖火に滅びゆく
矮小なる共生の物語
―――ダンジョン作りにはSayがいる!!
{共生編}
滴る雫がピトンと響く。
洞窟に流れる清流、苔の緑と土の匂い。
ここはとあるダンジョンの入口。
「団長ぁ.....本当にこんな所にお宝があるのですや?」
≪ゾッキ―盗賊団、団員 ノノノ・アパラチア≫
危険度☆
種族:人間(盗賊種)
「バカ言ってんじゃねえ。俺の嗅覚は絶対だ。」
≪ゾッキー盗賊団、団長 ゾッキ―・アパラチア≫
危険度☆☆
種族:人間(盗賊種)
「なんせオイラはむかし、ノスティアのダンジョンギルドで若くしてギルドマスターを勤め上げていた。そこでオイラは知ったのさ」
「――またですやぁ団長!!」
「うるせぇぃ黙って聞けぃ」
「こないだはサステイル2つ星レストランのコック長でぇ、その前はウェスティリアの町医者?、その前は考古学者の助手やなんて!!ノノノもバァカじゃありませんから?!なんでもかんでも騙せると思ったら大間違っ」
『ダソジョンランキング。.....それは迷信の類だった。』
「――勝手に始めんなぁ!!」
―――――――――――
{ゾッキ―曰く、ノスティアのダンジョンギルド}
凍えるような風が止み、雪解け。
若々しい新緑の芽が顔を出すような季節の時合だった。
「ギルドマスター就任おめでとう。この折に、伝えておかねばなりませんね。アパラチア氏。」
俺は高貴な鎧兜を纏った女騎士に連れられて、ダンジョンギルドの地下に連れてかれた。入ったことのねぇ場所だった。途切れた部屋の先に在る大きな空洞。そこには地上の文化もノスティアの厳しい規律も無い。完全なる治外法権の聖地。整えられた木目のあるフローリングの先に大地が連なり、大きな墓石にも似た岩塊が、土の山に刺さっていた。
女騎士は跪き、墓石の前に在る直径1mほどの穴に、今朝換金された中でも最も大きな魔石を転がすように入れたのさ。
『グノームどの。・・・ご教授をお願いしたい。』
その一声へ呼応するように、荘厳な地鳴りを響かせて墓石の山が観音開きに割れた。
「これは全地下の支配者、土精霊たちの叡智です。」
地上の光が一筋垂れた。そこには三枚の滑らかな石板が並び、俺の目には細かく刻まれた光の文字が目についた。
一際大きく刻まれた文字。
題名は【ダソジョンランキング】
パチモンみたいな名前だ。
1位から66位まで格付けされたダンジョンは、どれも実在するものであったが、その順位は人間が定めたものとは到底かけ離れていた。
だが、女騎士は囁く。
「危険性と見返り。人々を魅了する魔性のダンジョンがここで分かるのです。」
根拠など何処にもないが、
ただ後に、その女騎士が精霊崇拝者であることを知ったのさ。
――――――――――
「へぇー、団長。その話ってまだ続きやすかい?ノノノは腹が減りやした。」
「人間の知名度とは関係無ぇ。」
「――聞いてねいやぁ」
「魔力量やお宝の数。潜在性、将来性、そして最も重要な文化的生産性などをベースに、グノームだけが知っている魔性の魅力を総合評価。人々を惹き込む価値のあるダンジョンだけが順位を伸ばし、高い評価を受けた高付加価値ダンジョンだけが、33位以上と銘打たれる。」
「つまりぃ?」
「最近、その33位以上に人知れず名を連ねた上質なダンジョンがある。世界の冒険者たちが戦争に協力している今、そのダンジョンを俺達が根こそぎ開拓してやろうって魂胆よ。」
「なるほどですや!!だからノノノらはココにぃ」
――――バリバリリィッッ!!!!!
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ドロリとした透明の粘液と緑色の体液が
ツーと殻の上から靴底までを粘っこく繋げる。
「あぁー、勿体ねぇやー。貴重な卵がッ――!!」
――バコンッ!!!!!
ゾッキーの目の前を巨大な影が横切った。
「ノノノォーッ!!」
――――マァァァアアアアア・・・・!!!!!!!!!!
闇の中から空気を揺らす咆哮。
岩陰から表れた獣の角にノノノが貫かれる。
「たっは・・・」
瞬き一つ。
刹那の出来事。
重低音が響き渡る。
大地が震えている。
「なんだ。警戒は怠ってねぇ。なんだ?なんだなんだ?急に現れた。そんなはずはねぇ。クソ来るな、やっぱり来い。顔を出せ。やっぱり出すないいや出せッ。だがヤツは!!クソクソッ!!なんてことだ・・・!!ヤツはァ!!」
鞘から取り出す大型のナイフ。
ゾッキ―は陰りから現れた猪型のモンスターと目を合わせる。
蒼い魔晶石が顔面に同化し、キラキラと魔力の塵が光った。
「未確認個体じゃねぇかァ・・・!!」
蹄踏みから舞い上がる土埃。
両者の距離が一方的に縮んでいく。
「うおおぉぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!!!!!!!!!!!!!」
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滴る雫がピトンと響く。
苔の緑と土の匂い。
ここはとあるダンジョンの入口。
「ヒグッ.....だ、団長.....団長ぉ・・・!!」
「おめぇ.....どうして..........?」
ゾッキー・アパラチアは目を丸くする。
泣きじゃくる少女を前にして。
『ノノノは一度、死にましたァー!!』
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{第一層、???}
「たァーーーーーーーー」
「たァーーーーーー」
「たァーーー」
「たァー.....」
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侵入者2名の排除を検知。
ダンジョンコア正常作動。
データ1
データ2
データ3
訓練用監視プログラムを再起動しますか?
>はい ←
>いいえ
はい、を選択。
・・・え。
・・・・本当に?
・・・・本当に再起動しますか?
>はい ←
>いいえ
はい、を選択。だってさw
・・・ぷぷ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!
・・・・再起動、して欲しいですか?
・・・・して、欲しいですね?
>はい ←
>いいえ
はい、を選択。
・・・それじゃあ再起動。
・・・・するけどさぁ?ほらねぇ?
・・・・もっと敬ったらどうですかぁ??
>はい
>YES ←
>いつもありがとうございます。
『このシステム.....うぜぇえええええええええええええええ!!!!!!!!!』
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FW:ダンジョン作りにはSayがいる。
第6章 共生編 ・・・始動
【――――――――――――――――】
{第三層、居住区}
「ほどほどにしてやってよ、キューちゃん。」
ディスプレイから眺める光景。
第一層のとある部屋。暗がりに光る水晶を加工した画面の中で、スライムのマスコットキャラクターが人間と○○○〇達の前に照らし出されている。
「ほどほどにして欲しいですか?」
「もういやああああああああ・・・・」
ウザさの根源がぷにぷに動く。
アレの名前はダンジョンメイカー。
伝統ある地下ダンジョンの1層と2層を管理する、メインコアの1つだ。
搭載OSはキューセラアーティフィシャルインテリジェンス。
略してQSAI
ダンジョンメイカーには特別な要素があり、従来のメインコアの役回りを人間に任せる機能が備わっている。
そんな例外中の例外コア。
【ダンジョンメイカー】の持つ追加能力は大きく分けて3つだ。
①監視能力――――――Ⅰ
・オルテガが散らした目たちの情報により監視能力が強化されている。
(従来はサブコアから放たれるエコーのようなもので情報を解析していたが、魔力感知媒体の増加、通信機能の向上、目視による確認によりダンジョンの情報が人間にも詳細に把握できるようになった。)
②応戦能力――――――Ⅱ
・目を埋め込まれたオルテガの傀儡、ダンジョンメイカーで統制可能な人工モンスターたちを思いのままに配置してある。
③成長能力――――――Ⅲ
・人間が人間を鍛えるために、そのダンジョンは稼働する。人間の寄せ集めた悪意が、人間の魔力を吐き出させ、繰り返し改良され続ける。
もちろん。
人間に管理させているコアのその上から全体を管理している存在こそが、メインコアを制御している【精霊ルタル】並びに第三層に在るこの部屋ということになる。
[コア一覧]―――――
第1層 浅層メインコア(ダンジョンメイカーの部屋)サブコア×2
第2層 サブコア×3
第3層 マザーコア(精霊居住区のメインコア)、サブコア×2
第4層 ???(メインコアに匹敵するものあると推定)
――――――――
けれどもけれど。
だがしかし。
しかしながらの大前提。
人間との共生を選んだこの精霊管理型ダンジョンは、従来の常識を打ち破る前代未聞の空間に他ならない。
バグもイレギュラーも全部が在り得る。
一世一代のしっぺ返しとして。。。
「はぁ.....」
ルタルちゃん最近、ずっと張り詰めた顔をしている。
悩ましいといったように眉をひそめる。
そりゃそうだ。
リスクもリターンも全てが自分に返ってくる。
気疲れだってするだろう。。。
「シュークリームって栽培できないのかしら.....?(小声)」
うん。
余計なお世話だったよね。
「OKキューちゃん。シュークリームのシューって何?」
「はい。キャベツという意味です。」
「ハァ(息を呑む音)、やっぱり私って天才だわ(小声)。――って何見てんのよ。今日は休日でしょ?さっさと四層開拓してきなさいよ。」
「へーへー。」
ルタルちゃんと目が合った。
しばらくの俺の主事業は四層開拓だ。
どうやらダンジョンメイカーのある第一層から物理的な距離を取るために、居住区であるマザーコアを四層に引っ越したいとのこと。
人間との共生を念頭に置いたリスクヘッジ。
シュークリームのこと以外も一応は色々と考えているらしい。
しかしそのためには先ず、四層に在る深層コアを見つける必要がある。
それも出来るだけ俺以外の人間の手を借りずに。
「あ、――いやルタルちゃん様。思い出しました。今日はやることありました。」
「なによー。」
金髪が不満そうに揺れる。
ハの字眉毛の困り顔。
「モンスターたちと飯。ほら、俺、ダンジョンマスターだから。」
――ヒュッ!!
「あだっ。」
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{第一層、監守室}
???『彼らの恩恵はやがて我々の生活にも及び始めましたな。.....魔力循環、生産性は共に良好。つるはしは渾身の出来上がり。鍛冶スキルと建築スキルは、特に目を見張る成長がありますな。..........して、タンテ殿。どうして額をお怪我されているのですか?』
タンテ「うむ.....石礫が降って来たんだよ。偶然。.....あるだろ?そういうこと。」
温もりの有る木製の空間。
隙間風の止まない壁の穴は塞がれ、ランタンは新調。
血の染みた床板は入れ替えられた末に埃一つも落ちいてない。
棚にはワインのコレクション。
武器庫は今や食料の冷暗所。
大きな書棚は隠し通路の入口で、冒険者には気付かれない。
イモムシのステーキとカエル肉のスープ。
ミネラルたっぷりのサラダに学院のコッペパン。
同じく学院でちょろまかしたマカロンはデザート。
木製の円卓を囲んで食後のレモンティーを啜る。
???『カッカッカッこの様子なら、ルタル様と喧嘩したらしい。』
タンテ「してない。あれは喧嘩じゃなくて偶然起きたとされる一方的な暴力である。なんて酷い引きニート。」
???『ルタル様・・・怖い・・・・・』
タンテ「ねー!!」
出窓からは1層と2層に跨る地下牢の通路が一望できる。
下へ降りれば更なる暗闇、恐怖と魅惑の深淵へ。
真っ直ぐいけば知識の楽園、魔術学院への入口がある。
あるいは、、、
上が学校。
下が実家。
???『いっそタンテ様も鎧を着ませんか?』
タンテ「重いんだよそれー。まあ、サイズが合えば検討。」
???『ぜひぜひ。』
リエラが殺されてから3年が経った。
俺は今12歳。
初等科3年生となる。
この間に俺たちはキリエ大幹部の一席を退け、ダンジョンではその戦いの復興が進んでいた。
タンテ「でも、蒸れそうだしなぁ・・・」
???『それはご褒美ですね!!』
タンテ「ご褒美じゃないですよ?それに栄誉ある国軍騎士の鎧は俺には分不相応だよ。」
???『そんなことは.....ありませぬぞ。』
地上では未だ争いが絶えない。
圧倒的な脅威を前にすれば、学院の防御もまだまだ手薄だ。
それに今年は中等科への内部入試がある。
受験生とダンジョンマスター。
そんな二足の草鞋を履く。
???『ここにいる皆が、救われた。』
掲げられた各々のカップ。
連なる異種族の手。
物語は歴史を遡る。
???『タンテ・トシカと、アンダー・ウェストに。』
開かれた世界
自由の豊穣
希望のアンダーグラウンド
そこに集うは四種族の長とダンジョンマスター
これは新星の聖火に滅びゆく
矮小なる共生の物語。
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{ダンジョンステータス}(コアが無いため、城内分は未記載)
内部コア(搭載OS:Que Sera Artificial Intelligence)
研究レベル:5
DP :5037
MP:4202
RP :1508
分 類:精霊管理複合多層型
構 成:全6層
状 態:ダンジョン街
称 号:O33、27位
危険度:レベルα【推定適性ライセンスB級以上】
(期間限定コメント)
新話更新、大変長らくお待たせいたしました。
ダンジョン作りにはSayがいる!!
残すところ、あと3章になります。
終幕のカウントダウンが刻まれていくのを実感します。
そして!
2025年も残りわずか。
次話更新は現実的に来年となりそうですので、
本話にて年末挨拶をさせていただきます。
今年もご愛読いただき誠にありがとうございました!!
良いお年を!!!!!
――――Date.2025/12/27. 西井 シノ




