ダンジョンネイバー
{旧 章題:ご近所付き合い編}
{ウェスティリア魔術学院}
お隣さん家。
それは地下ダンジョンの真上に聳え立つ。
タンテは伝統ある学舎のその中で、
世界の情勢と、自身の絶望的な運命を理解する。
「俺はどうして、生かされた.....」
―――ダンジョン作りにはSayがいる!!
{寮生編}
目次
①ダンジョンネイバー
②9歳児と言う勿れ
③タンテ・イン・ワンダーランド/鏡の国のタンテ
④ウェスティリア魔術学院の入学式
⑤新学期 ~出会いの季節はヤバい奴にもよく出会うから~
⑥妖精編
⑦遠足という名の『神』イベント
⑧vs.大幹部司祭、レイチェル・アレクサンドロス戦
⑨vs.大幹部司祭、レイチェル・アレクサンドロス戦
『私がオルテガ・オースティック。』
その男は、ローブを靡かせ振り返る。
『この学院に住んでいる、アナタ方の『隣人』です。』
「・・・」
彼はダンジョンネイバー。
伝統ある我らが地下ダンジョンの上に住んでいるらしい。
名前はオルテガ・オースティック。
チャームポイントは目尻に配置されたホクロ。
悪びれる事のなさそうな満面の笑みが憎たらしい。
種族で言えば、俺と同じ人間である。
『宜しくお願い致します。タンテさん。』
「・・・」
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さて。
この胡散臭い教師に出会うまでの、
俺と地下ダンジョンの
ざっくりとしたプロフィールを説明するならば、
おおよそ9年でこと足りる。
よく頑張ったなぁ、俺。
一部ルタルちゃん製の、
ホクホクの年表コーナーを再利用して振り返ろう。
☆ ☆ ☆
【ホクホクの年表コーナー】
9年前 『最後の抵抗』
・0歳児~
・人間の中級冒険者が崩壊しかけた廃ダンジョンへ赤子を連れてくる。
・副産物として限られた食糧と冒険用装備の一式がダンジョンへ舞い込む。
・全ての食料が赤子のために調理される。
・中級冒険者は食料が尽きて死亡。
・その時、ルタルちゃんは気まずくて見殺しに。
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8年前 『巣箱ダンジョン』
・1歳児~
・オレ、立つ。
・ドラマグラっぽい。
・呂律は弱いが饒舌に喋る。
・中級冒険者分のマナで養殖イモムシ用の巣箱を作る。
・オレ、めっちゃイモムシ食う。
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7年前 『身体づくり』
・2歳児~
・呂律がハッキリとし、この世界の言葉を覚える。
・食っては寝るをせわしなく繰り返す。
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6年前 『ダンジョンコア起動』
・魔法を学ぶ。
・部屋の机からアカムレーター発見。
・滑落しながらも、光眠石Get!!
・QSAIちゃんと出会う。
・ダンジョン創りのSAYという標語を学ぶ。
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5年前 『ダンジョン農地化が始まる。』
・第一次産業スタート。
・養虫に加え、野菜を作り始める。
・光石地帯のコケを食用モンスター化。
・突然変異させたコケモンスターを多年草モンスター化。
・土を耕したりして農地拡大。
|
4年前
・地上との交信を実現。
・オルテガ・オースティックと会話。
・バハムート討伐の為、修行開始。
・4年間にわたり地道に力をつける。
|
現在
・遂に地下ダンジョンを脱出。
・謎の集団に命を狙われる。
☆ ☆ ☆
・
・
・
というわけで......
意気揚々とダンジョンから出た矢先。謎の集団に命を狙われてから、この妙に胡散臭くて女癖の悪そうな寮長教授に出会うまでの記憶を振り返ってみようと思う。加速するように移ろう周りの環境だが。如何せん今日は朝から長い一日になることは確定していたので、大忙しなのは承知の上、楽しめるだけ楽しんでいこうと思う。それはかつての探偵事務所に舞い込んでくる、依頼の波をさばくかのように。
――――――――――――――
{地上・開通したダンジョン前}
振りかぶるように引かれたナイフ。
次の瞬間。
顔には血飛沫が掛かり、
刃先は喉元でヒヤリと止まる。
とても冷たい。
恐ろしい冷たさを感じている。
「子供はダメだ。遺恨が残る......」
「言ってられっか。コイツは殺さなくちゃならねぇ。」
状況は未だ呑めない。
両目を手の平で塞がれているからだ。
しかし声を辿るに男が2人、
後方と左側に一人ずつ。
「テメェは何のためにココにいる.....!!」
「では、この子を殺せば終わるのか?」
「ああ?!」
何やら作戦会議中らしい。
俺の命を天秤に乗せた会議。
「復讐が終わるのか?」
「それは.....」
「私なら生かす、今この子は我らの支配下に在る。分かるか?私の言いたいことが。」
しばらくの沈黙を経て、
視界に光が戻っていく。
目の前にはそっぽ向いたガタイのいい大柄白タンクトップの角刈りと、肩から血を流し背丈はヒョロリと縦に高く伸び、シルクハットとタキシードを身に着けた男が立っていた。
「な、何なんですか貴方たちは!?」
あー。
と言いつつ、完全に理解した。
このシルクハットが俺を守ろうとし、
この角刈りが俺を刺そうとした気性の荒い奴だ。
近寄らないでおこう。
俺は少しばかり左側に後退りし、
シルクハットの方へ。
右前方の角刈りとは距離を取る。
恐らくコイツら。
右にいるゴリゴリのフィジカルで全てを解決しようとする筋肉担当と、左のテクニカルな知性でサポートする頭脳担当との、日頃から色々摩擦はあるものの結局戦いになれば相性抜群で最終的にはリーダーから絶大な信頼を得る系デュオに違いない。見える見える。汗と涙、背中合わせの死線、時には喧嘩。お前らのここまでのバックストーリーまで全て見える.....
俺は角刈りを正面に向きながら、もう二歩後退り、シルクハットの背中へいつでも飛び込めるような距離を取る。利用価値はあると言っていたな。つまり少なくとも俺には猶予がある。例え命を狙われていたとしても、魔力が回復するまでの時間が稼げればきっと何処かにチャンスはある。俺は微笑むシルクハットの優しそうな顔をチラリと見ると、あれ、ちょっと待って、なんかナイフ振りかぶって――
「あー、ダメだやっぱり殺す⤴(高音)」
「お前がフィジカルかい!!!!!!!」
「やめなさい!!」
豪快な腕が伸び、
ナイフを振るう細い腕を制止。
取っ組み合うように両者が腕に力を込める。
よく見れば、肉だるま白タンクトップの手の平には流血があった。
「分かれ、マッドハッター!!」
「チッ!!」
――マママ、狂った帽子屋!!
マッドハッターと呼ばれた狂犬はタンクトップの手を振りほどき、俺と目が合うと優しく微笑んだ。
完全にイカレている。
情緒が分からない。
なんで笑ってんだコイツ。
そもそも帽子屋にマッドが付いてる段階でコイツは何人か殺ッてる。
お茶会をしてないのなら、なんらかの前科が必ずある。
無くてもこれから先でいつか殺る。
「すまなかった。タンテ・トシカ殿。私の名は白兎だ。」
尻餅付いた俺にデッカイ手が伸びる。
機能性に全振りしたような角刈り。
白い布越し隆起した大胸筋。
繋がる肩から指先に掛けた筋肉のアルプス。
白ウサギというより、シルバーバックだろう。
性欲は白ウサギくらいありそうだが.....
「我々は護衛士、君を依頼主の元まで送り届ける命を受けた。」
「護衛士.....?」
俺は手を取り立ち上がる。
二人の出で立ちは護衛士というカッチリしたものよりかは、賊っぽい個性を放っていた。
タンクトップのそいつは俺の視線に気づくと気さくに笑って言う。
「なぁに、生命線が伸びただけだよ。」
「た、たはは.....」
仲間に刺されてなお、この対応。
こいつ間違いない。
紳士だ。
――ボォン......!!
「ん?」
唐突に遠くで上がる黒煙。
火薬か何かの爆発音に付随したもの。
距離からして10㎞にも満たないだろう。
そして身構えるオレに対して、ラヴィットが黒煙に視線を向ける傍ら、マッドハッターはその様子を一瞥すらせず俺を見張っている。
「行こうか。ここも時期に戦場になる。」
こいつら、慣れてる。
この黒煙にも対人戦闘にも。
「戦争をしているんですか.....?」
俺の問いに白兎は笑う。
「何も知らないんだな。殺さなくてよかった。」
護りたいのか殺したいのかハッキリしろ。
何て言葉を飲み込み、俺は黙る。
彼らを刺激する言葉はダメだ。
「急ごう。」
「うげっ」
白ウサギはそんな俺を肩に担ぎ上げ、
脱兎のような一歩を踏み出した。
――ブゥゥウンッ!!
富士急ハイランドのドドンパみたいな風切り音。
初速と共に上昇し、二歩目で地が離れる。
「うぉおおおおおおおあッ!!」
木々の背丈を軽く越え、世界の一端が目に映る。
美しい川、森、街、
「出来れば声を抑えて頂きたい。でないと――」
白ウサギは何かに勘づくと、声を上げる。
「マッドハッター!!」
追従するシルクハットは黙って速度を落とし
右方を向いて、ナイフを構える。
「どうしたんですか!?」
「治安の悪い情勢だ。通学路にすら悪漢がいる。」
俺は進行方向をチラリと振り返る。
「ここが.....」
白ウサギの肩越しに見えたのは、
壊れた外壁と塔が剥き出しになり、
煙を上げながら聳え立つ大城であった。
「さぁ向かうぞ。ウェスティリア魔術学院へ.....!!」
{ダンジョンステータス}
Qキューブ(搭載OS:Que Sera Artificial Intelligence)
研究レベル:0
DP :0
MP:0
RP:0
状 態:地上(ダンジョン外)
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