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体育祭 その2

よーい…パン!


「さて今年も始まりました体育祭。実況は去年に引き続き、放送部のみなみんがお送りします!」


実況が始まったようだ。

実況といっても、事細かに逐一やる訳ではない。

目立っていることとか注目生徒とか、ある程度ピックアップしつつ場を盛り上げるトークも混ぜてやっていくのだが、その辺りの匙加減は実況担当である深澤先輩のお手並み拝見だ。


「「みなみ〜ん!!」」


どうやらファン的なやつらがいるみたいだな。

ツインテールをなびかせて、声のした方に手を振っている。


「さて皆さんお待ちかね、恒例のゲストですが…今回はなんとスペシャルゲストです! 勉強運動問わず優秀、我々の気持ちを汲んでくれたありがたい活動実績もあるけど近寄りがたい! 男性撃墜数は伊達じゃないぞ、生徒会副会長というボジションもあざとい! 我が校が誇る孤高の女神様、薩川沙羅さんで〜〜〜す!!」


「「「おおおおお!!」」」


…沙羅先輩が人気あるの知ってたけど、何このノリ…先輩が凄く嫌そうな顔をしている。

こういうの好きじゃないだろうしな。


「ええ…と、ご紹介に預かりました、薩川沙羅です。生徒会副会長を担当させて頂いております。」


先輩は嫌そうな顔のままだが、黙っている訳にもいかないと思ったのか自己紹介を始めた。


「薩川さ〜ん!」

「今日も可愛いぞ〜」

「結婚してくれ〜!」

「付き合ってくれよ!」


雰囲気に流されて調子に乗った連中が現れるのも当然ではあるが、あまりいい気分ではない。


「お断りします。」


外野の声が嫌だったのか、先輩が即座に反応してしまった。


「おっと早くも撃墜数が加算されました。大人気ですねぇ…かく言う私も、隣に薩川さんがいるのが信じられません。よく引き受けて貰えましたねぇ私。」


「…実況を開始しましょう。」


先輩の機嫌がどんどん悪くなっているような気がする。

深澤先輩には真面目にやって欲しいとも思うんだが、でもこういう雰囲気作りも重要なことだとわからないでもないし…


…つまり俺のフォローとは、こうやって機嫌が悪くなることがわかっている先輩を宥めろということか。


俺は先輩にだけ聞こえるように、少し顔を近付けて話をする。


「沙羅先輩、正直俺もこんな風に周りが調子にのって、先輩に軽々しいことを言うのは嫌です。」


「高梨さん…」


俺がいきなり真面目なことを言い出した為か、先輩は少し驚いたように俺の方を見た。


「でも生徒会としてこの体育祭を楽しいものにしようと、沙羅先輩も俺もみんなも頑張りました。今日一日だけです。俺も我慢しますから、一緒に乗り越えて下さい。」


正直、かなり恥ずかしいことを言っているのは自分でもわかっているが、本心でもあるし先輩の為に我慢だ。


「高梨さん…一緒に…はい、今日一日だけですよね。私、頑張ります。」


先輩が笑顔を見せてくれた。

俺はこの笑顔の為に頑張る。

余計なことを言ってくるやつが来たら排除してやる


「…うわぁラブコメだよ青春だよ…。真顔であんな台詞言えるとか高梨くんも凄いねぇ。え、ひょっとして私はこの後も隣でイチャラブを見せつけられるの?」


深澤先輩がぶつぶつ言い出した。

なぜ俺の回りにはぶつぶつ言い出す人が多いのだろうか…


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「さて100m走ですが、当然運動部が多いです。注目は陸上部のエース田中くんと、テニス部のイケメン横川くんの直接対決ですねぇ。薩川さんどうですか?」


「え…と、陸上部の方が有利ではないでしょうか?」


素人な上に興味がないであろう先輩に聞いても、この返答が当然だろう。


「既にスタートエリアには、横断幕を持った横川くんのファンクラブと、やっかみで田中くんを応援するつもりなのか男子集団もいます。」


せめて田中くんの応援団と言ってあげて欲しい。

横川はテニスを頑張っているのは事実だろうが、いくらなんでも本職には勝てないだろう。

まぁ学校のイベントでムキになってもな。


あの二人の対決はやはり田中くんが勝った。

つまり応援団も勝ったのだろう…色々な意味で。

横川も勝てるとは思っていなかったようで特に悔しそうな様子もない。それでも僅差で2着なんだから大したものだ。


と思っていると、こちらに向けて笑顔でサムズアップしてきた。


「おっと、横川くんがこちらにアピールしたようですが誰なのか〜?」


ファンクラブが騒いでいる。

深澤先輩は沙羅先輩へのアピールだと考えて煽ったのだろうが…多分あれは俺だな。


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100m走が終われば当然次は200m走になる訳で…嫌だな。


俺の運動神経は並だから、最悪でもビリにならないようにしよう。

どうせイベントだしムキになることはない。

沙羅先輩が見ているのに格好いいところを見せる力が無いのが残念だ…


スタートエリア付近に来ても、当然クラスから応援の声が飛ぶなんてことはない。

沙羅先輩は実況席だから、さすがに応援に来ることはないし。


「さて注目選手という訳ではないですが、体育祭の準備も頑張ってくれました生徒会執行部役員、高梨くんが出場します。薩川さん、彼は運動は…ってどこ行くんですかここに居てください!」


俺のことを実況するのは本気で止めて欲しい。釘を刺すのを忘れたことをとても後悔している。

ところで最後の焦った様子はなんだったのか?


「…高梨さんは普段運動をしておりませんので得意ではないと思います。ですが真面目な方ですので頑張って下さると信じております。頑張って下さいね、高梨さん」


あああ、嬉しいけど全校生徒が聞いてるのにそんな優しく言ってくれると


「「「ブーブー」」」


これは走る前から周りが敵だらけに…

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませて頂いています。高梨さんが生徒会入りしてからコメディの度合いがぐっと高まり、毎回笑ってしまいます。私が本作品で最も惹きつけられるのは、高梨さんと薩川さんとのコンビと二人を…
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