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意外な来客

「そう言えば、待ち合わせの人達が集まったらどうするんだい? 予定はもう決めているんだろう?」


 俺と西川さんを交互に見ながら、上坂さんが不意に問いかけてくる。

 そう言えば、その辺りのことは特に伝えていなかったな。


「ええ。高梨さんと沙羅がお昼休みになるまでは、合流した皆さんと少し見て回ろうかと」


「そ、そうか。それで、お昼はもう決まっているのかな? どこかの模擬店で食べるのか、買ってきて…あぁ、生徒会室を使ってくれても構わないし…それで…」


 俺も人のことは言えないのかもしれないけど、上坂さんの顔には「西川さんと一緒にお昼ご飯が食べたい」って、思いきり書いてあるんだよ…

 その気持ちは分からない訳じゃないけど、俺達もお昼は楽しみにしているから…だから、はいどうぞって訳にもいかない。


「ありがとうございます。ですが、お昼はもう決まっているので大丈夫ですよ。ね、高梨さん?」


「え、ええ。お昼は皆でお弁当を持ち寄って食べることになってるんですよ」


 楽しそうにニコニコと笑顔を溢しながら、西川さんが俺に話題を流してくる。本人に他意も悪気もないのは分かっているけど、そんな言い方をすれば、また上坂さんが誤解をして…


「お弁当を…なら高梨くんも?」


「はい…っても、俺の場合は、沙羅さんが台所に立つことすら許してくれないんで。そう言えば西川さん、お弁当は…」


 話をしていて気付いたけど、そう言えば西川さんの荷物は可愛らしいポーチが一つだけだ。それ以外には何も持っていない…よな?


「え? あぁ、はい。私もちゃんと作りましたよ。後で持ってくるようにお願いしてあるので、今は手元に無いだけです」


「あ、そうなんですね。ちなみに…西川さんは料理…」


 何となく西川さんのイメージとして、色々なことが一通り出来そうな気がする。

 沙羅さんと似たようなタイプだと思うし、万能型じゃないかな…と思ったり。


「私だって料理は出来ますよ。沙羅には勝てないとしても、夏海よりは自信があります」


「そうなんですね。それは楽しみです!」


「はい。高梨さんは沙羅と花子さんのお弁当で大変でしょうけど、私のお弁当も少しくらいは食べて下さいね。男性に自分の料理を食べて貰うのは初めてですから、今日のお弁当は頑張ったんですよ?」


「りょうか…」

「は、初めて!?」


 上坂さんが異常な食い付きを見せた…けど、それはさておき。

 沙羅さんと花子さんのお弁当で俺が大変ってのは、まぁそうだとしても、そのくらいの覚悟は既に出来ている。だから問題ない。

 それに沙羅さんは、俺が他のお弁当を食べることを見越して、いつもより量も減らしてくれたから…


「っ!?」


 そんなことを考えていたら、突然俺の視界が真っ暗になってしまった。

 もちろん夜になった訳じゃないし、俺の目に異変があった訳でもない。これは単に、後ろから目を塞がれただけ。


 さっきから西川さん達が、妙にチラチラと俺の…いや、正確には俺の後ろだったんだろうけど…を見ているなとは思ったんだよ。

 あれはこういうことだったのか。


「ふふ…だーれだ?」


 俺の真後ろから、普段と違い、ちょっとイタズラっぽさを感じさせるような可愛い声が聞こえてくる。

 勿論、俺がそれを間違える訳がない。


「沙羅さん」


「ふふ、正解です♪」


 少し悩む素振りを見せようか一瞬考えたけど、沙羅さんの可愛いイタズラが嬉しくてつい即答してしまう。

 最初から決まっていたことだと言っても、せっかくの楽しい学祭で、いきなり沙羅さんと離れることになってしまった訳で…やっぱり俺としても、寂しかったというのが本音だから。


「お帰りなさい、沙羅さん」


「はい、只今戻りました。と、その前に。正解した一成さんにはご褒美です♪ んっ…」


 ちゅ…


 沙羅さんがスッと顔を寄せてきたと思えば、そのまま俺の頬に柔らかく幸せな感触。

 軽く触れる程度でも、沙羅さんからの優しいキスが堪らなく嬉しい!


「ありがとうございます、沙羅さん」


 キスは直ぐに終わってしまったけど、何となく、まだ沙羅さんと触れ合っていたいような気がして…

 だから思わず自分からも手を伸ばしかけたところで、不意に周囲からの視線に気付く。

 よく見たら、遠巻きにこちらを見ている新聞部の連中とか、他にも色々…

 ただそれよりも、どんよりとした西川さんの暗い視線が一際凄くなってきて…いや、これはちょっと。


「…ちょ!? い、いま、何が…おき…!?」

「…は、はは、いやいや、ま、幻だ…そうじゃ無きゃ困る、はは、困るだろぉぉぉ!!」

「…な、な、な、何だったんだよ今のぉぉぉぉ…」

「…嘘だぁぁぁぁぁ、絶対に嘘だぁぁぁぁぁ」


「ひゃぁぁぁ、見た!? 今の見た!?」

「見たぁ!! なになになに!? 薩川さんが!?」

「きゃぁぁぁぁぁ!! 副会長と付き合ってるって噂、マジだったんだぁ!?」

「バカ、あの薩川さんが人前でキスしたんだよ!?」


「沙羅!? あなた、ここが何処なのか分かっているんですか!?」


「いらっしゃい、絵里。早かったですね。それで、ここが何処か…でしたか? 本部テントですけど、それが何か?」


「それが何か? じゃない!!! ここは人前でしょうがぁ!? 私達の前だけならまだしも、こんな…こんな公衆の面前で…それに、高梨さんだって困るでしょう!?」


「へ?」


 西川さんの言ってることも分かるけど、俺は別に迷惑とか困るとか、そういう気持ちは全くないんだが…

 俺にあるのは、普通に嬉しいって思う気持ちと、沙羅さんが愛しい気持ちだけで。


「あぁ…そうですかそうですか。高梨さんも沙羅と同じですか。ええ、ええ、そうでしょうとも、このバカップル…」


 西川さんの完全に白けたような目線が、それはもう盛大に突き刺さってくる。

 と言うか、俺はまだ何も言ってないのに…

 どうしてこうも毎回毎回、考えを読まれてしまうのか…本当に謎すぎる。

 ここまでくると、俺が単純だからと言うよりは、周囲が鋭すぎるだけなんじゃないかと思ったり。

 

「絵里、私のことは構いませんが、一成さんを馬鹿にするような言い方は絶対に許しませんよ」


 そして、俺のことになると冗談が通じなくなる沙羅さんが、即行で西川さんに噛みついた…と。


「ねぇ沙羅…もしかして、それ本気で言ってる?」


「勿論ですよ。私は、一成さんのことで冗談など言いません」


「あぁそうなのね…女の友情なんて、男が出来れば所詮…」


「それはそれ、これはこれです。ですが、一成さんの妻になる私が夫を最優先するなど当然の話でしょう?」


「ぐっ…こ、このリア充がぁ」


 えーと…西川さんにリア充って言われるのは流石にちょっと違和感…

 男女関係のことを言うにしても、西川さんが気づいてないだけで、既に目の前に一人、ハイスペック男子が想いを寄せているだろうに。

 

「ええっと…お話中ごめんなさいね。ちょっといいかしら?」


 突然別方向から声をかけられ、受付のテーブルにお客さんが来ていることに初めて気付いた。

 しまった…沙羅さんと西川さんのやり取りに気を取られていて、そちらの方を疎かにしてしま…


 …ええええ!?


 な、何でここに!?


「あ、すみません。失礼しました…何かお困りでしょうか?」


 上坂さんは直ぐに爽やかスマイルを浮かべて応対を開始したが、俺は正直それどころじゃない。別にマズいことなんかないし、困るって訳じゃないんだけど…いきなり過ぎて驚きが…


「あの、一成さん、如何致し…」


「あぁ、やっぱり一成くんだった! ご無沙汰ねぇ。元気だった?」


「「「一成くん?」」」


 俺を「一成くん」と呼ぶ、その人。

 何処となくオカンを彷彿させる豪快な笑顔。若干、恰幅のいい体型に、トレードマークでもある帽子並みに大きい布製ヘアバンドが、遠くからでも良く目立つ。

 相変わらずの出で立ちで、実に分かりやすい。


「…え、お義母様に?」


 沙羅さんも何となく気付いたみたいだけど、知っている人が見れば面影を感じるくらいには雰囲気が似ていると思う。


「伯母さん、お久しぶりです」


「「「おばさんっ!?」」」


「久し振りね~、一成くん。と言っても、顔を合わせなかっただけで、五月くらいまでは様子を見に行ってたんだけどね」


「えっ!? 来てたんですかっ!?」


 それは初耳過ぎるぞ!?

 まさか、沙羅さんが家に来てた頃から知ってるのか!?


「あはは、家には行ってないわよ。学校帰りの様子をたまに確認していただけ。でも一成くんが連絡を寄越さないから、最悪押し掛けるつもりもあったんだけどね」


「学校帰りに…いや、全然気付きませんでした」


「こっそり見てたからさ。でも冬美が直接様子を見に行ってからは、流石に私も控えていたけど……ねぇ…」


 そう言った伯母さんは、何故か意味深なまでの笑みを受けべて…

 これはオカンが悪巧みをしていたり、俺的に宜しくない何かを企らんでいるときの顔にそっくりだ。

 だからつまり…何となく嫌な予感が。


「母さん、いきなり居なくならないでくれよ。ここで何をして…おっ?」


「あ、信也さん! 久しぶり!」


「一成っ! 久しぶりだなぁ」


 伯母さんの後を追うように現れた男性は、信也さん…伯母さんの息子さん、つまり俺の従兄。

 大学生で実家を出ていたから、俺も会ったのはかなり久々。


「信也さん、帰ってたんだ?」


「あぁ。ちょっと色々あってな。一成がこの学校にいるって聞いたし、俺もここのOBだからさ。母さんの付き添いで来たんだよ。いや、本当に久し振りだな」


「だね。元気そうで何より」


「おう。ちょっと一成が訳有りだって聞いてたから心配したけど、その様子だと大丈夫そうだな?」


「あぁ。心配かけてゴメン。もう大丈夫だからさ」


「みたいだな。それは良かった。んで、一成はここで何を…し…て…!?」


 俺と話しながらテント内を見回していた信也さんが、ある一ヶ所で視線を急停止させた。

 非常に嫌な予感…いや、これはもう予感じゃない。


 どっちだ?

 考えられる可能性は二つしか思い浮かばない。

 まさか両方とか!?


「…………」


 信也さんは、もう目が離せないとばかりに、呆然と一点だけを見つめ続けている。

 それが西川さんだったならともかく、もし沙羅さんだった場合…その視線はあまりにも危険すぎる訳で。

 信也さんは曲がりなりにも俺の従兄であり、将来的な親戚付き合いという意味でも、沙羅さんと険悪な雰囲気にはなって欲しくない。


 だからここは先手を打って、もう紹介しておくべきか。


「あの、伯母さん、信也さん、先に紹介しておきたい…」


「そうそう、その話よ。冬美から少し聞いたけど、一成くんにいい人が現れてくれたお陰で、立ち直れたって聞いたのよ。この学校の子なんでしょ? 良かったら紹介して貰いたいわ」


「な、何だぁ一成、もう彼女が出来たのか? そうかぁ…いやぁ、俺は"大学の勉強に集中"してたからさぁ。今までそんな余裕が無かったんだけど、俺もそろそろ彼女が欲しいとは思ってるんだ」


 チラチラと俺の後ろに視線を飛ばしながら、何故か言葉の端々を強調する信也さん。

 もう面倒なことになる前に、早く紹介しておくか。


「…沙羅さん」


「はい!」


 俺が声をかけると、待ってましたと言わんばかりに嬉しそうな返事をしてくれた沙羅さん。そのまま俺の真横に並ぶと、深々と物凄く丁寧なお辞儀をした。

 そしてそれを見た伯母さんは、鳩が豆鉄砲を食ったような表情になって…あと信也さんは、変な笑顔のまま固まった。


 やっぱり沙羅さんを見てたのか…


「初めまして…薩川沙羅と申します」


「こ、これはこれはご丁寧に…水谷和美と申します」


 こんな丁寧に話す伯母さんを見たのは俺も初めて。妙に畏まった様子だし、ひょっとしなくても沙羅さんに引き摺られてたりする?


「ご挨拶が遅くなりまして、申し訳ございません。一成さんとは、結婚を前提にお付き合いさせて頂いております。今後とも、どうぞ宜しくお願い致します」


「「…へ?」」


 沙羅さんの丁寧な挨拶を聞いた二人が、間の抜けた声を残して固まってしまい…

 相変わらず呆然とした様子で沙羅さんの顔を見つめながら、それぞれ違う様相で…


「「……けっ」」


「「…けっ……けっ…」」


 様相で…


「「けっこんんんんんんんんんんんんんんん!!!???」


「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーー!!!!!!?????」」」


 な、何事!?


 伯母さん達の驚きに重ねたように、まるでコーラスのような特大すぎる大絶叫…って、よく見たらテントの周りに人だかりが出来てるし!?


 い、いつの間に…


「け、け、け、け、けっこんんんんんっっ!?」

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁぁ!?」

「いや、で、で、でもあの薩川さんが嘘なんかつくかよ!?」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、嘘だったら嘘だぁぁぁぁぁぁ!!」

「うおおおおおおおおお、まだ告白してなかったのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待て、一成っ!! 結婚を前提って、お前達まだ高校生だろっ!!??」


「ふ、冬美達は知ってるのっ!? それに、そちらのお嬢さんの親御さんは!?」


「結婚なんて、そんな簡単に言うような話じゃないぞっ!?」


 もうテントの中も外も、騒ぎが大きくなって完全にパニック状態。

 信じる信じないその他で言い合いをしている外の連中と、泡を食ったように矢継ぎ早で問い掛けてくる伯母さんと信也さん。

 剣幕が凄くて、なかなか上手く会話に割り込め…


「私達は正式に婚約しております。このことは私の両親も認めておりますし、一成さんのご両親も認めて下さいました。近々顔合わせも予定しております!」


「「「「「っ!?」」」」」


 沙羅さんが絶妙のタイミングで話に割り込むと、まるで全体に言い聞かせるような迫力でキッパリと言い切った。

 必要な部分の説明も入っていたし、周囲も二人もピタリと口が止まったから…取り敢えず理解はしてくれたんだと思う。


「か、一成くん…ほ、本当に?」


「本当に、そ、その人と、婚約、した…のか?」


「え、ええ。沙羅さんは俺の婚約者です。と言うか、オカンから聞いてないんですか?」


「そ、そこまでは聞いてないわよ…冬美ったら、何でそんな重要な話を…」


「うぉぉぉぉ、マ、マジかよぉぉぉぉぉぉぉ…羨ましすぎるだろ…」


 まだ衝撃は残っているみたいでも、沙羅さんの話はちゃんと理解してくれたらしい。ただ信也さんの、大袈裟なくらいにガックリと項垂れた様子がちょっと…


「「「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」


 そして信也さんと同じように項垂れていた連中(男子)が、激しい奇声と共に一目散にどこかへ走って行った…しかも全員同じ方向。


 あっちに何かあるの?


「…上坂さん…あの二人、こんな騒ぎになっても妙に慣れている様子ですけど…ひょっとして」

「…ええ。いつものことですね」

「…はぁ…学校で何をしているんですか…」

「…まぁ、本人達は"いつも通り"仲良くしてるだけですからね。周りが騒ぐだけで」

「…成る程…つまり"いつも通り"ですか…全く」


 こっちはこっちで、やっぱり俺達をダシにすれば普通に会話が出来ている…と。

 上坂さんも、それが分かっているのか妙に嬉しそうで。

 と言うか、ニヤけすぎだ。


………………


「一成くん、こんな良い子、滅多にいないからね?」


「は、はい。わかってますよ」


 一通りの話(同棲以外)を済ませ、最後に伯母さんから出たのは、どっかで聞いたような「いかにも」な一言。

 滅多にいないと言うより、俺はそもそも沙羅さんのような女性が他に居るとも思っていないんだが…まぁ仮に居たとしても、俺には沙羅さんが居てくれるからどうでもいい話ではある。


「…いやいや、こんな超絶美人で家事完璧で性格最高でひたすら尽くしてくれるような女性が他に居る訳ないだろ…一成、羨ましすぎるぞぉ…」


 一方の信也さんは、さっきからずっと引き攣ったような笑みを浮かべていて、何かをブツブツと呟き続けている…みたいなんだけど。

 何故だろう、西川さん程じゃないにしても、黒い何かが見え隠れしているような…そんな気がしてならない。


「さてと…最大の目的も達成したし、これ以上仕事の邪魔をするのも悪いからもう行くわ」


 伯母さんがサッと周囲を見回すと、唐突にそんなことを言い出した。

 或いは空気を読んでくれたのかもしれないけど、正直言って俺も助かったり。

 流石にこちらから「もういいですか?」なんて言う訳にはいかないから。


 そして言うが早いが、伯母さんはまだブツブツ言ってる信也さんを半ば引きずるように引っ張り始めて、そのまま玄関の方へ向かって歩いていく。

 しかも何故かスマホを耳に当て始めて…


 うーん…激しく嫌な予感…


 と、そんな様子を眺めていたら、今度はそれと入れ違いになるように、生徒会の皆が続々と玄関に姿を現し始めた。どうやら皆、帰ってきたみたいだ。

 その中には花子さんと藤堂さんの姿も確認できて…花子さんは手伝いにでも行ってたのか?


「きゃあああ、西川さん、久し振りぃぃ!!」


「はい、お久し振りです」


「うわぁお、西川さんますます綺麗になったんじゃない?」


「あはは、そんなに変わってないと思いますけど」


 合流した先輩達との再会で盛り上がっている西川さんに微笑ましさを感じながら、こちらはこちらで直ぐに報告を始める。

 すると「キーン…」という、スピーカーからマイクの電源が入った特有のノイズ(?)が聞こえてきたので…となれば当然、始まるのは…


「やっほー、皆、楽しんでるぅう? みなみんからの…オススメ情報の時間だよぉぉぉ!!」


「「「みーなみーん!!!」」」


 校舎内からお約束の「みなみんコール」

 相変わらず、ノリのいいことで。

 お客さんに笑われてるけどな…


「あ、洋子と橘くんが来た!!」


 珍しく大声をあげた藤堂さんの視線の先に俺も目を向けてみると、ちょうどこちらに手を振りながら、小走りで駆け寄ってくる立川さんの姿…そしてマイペースに歩いてる雄二を発見。

 どうやら二人で一緒に来たようだ。


「お待たせ~!!」


「いらっしゃい、洋子!!」


 パンッ!


 雄二よりも一足先にテントまでやってきた立川さんは、藤堂さんとハイタッチを交わし始めて…その足で俺の方に向かってきた。

 これは俺もか?


「高梨くん、久し振りぃ!」


「おう、立川さん、いらっしゃい!」


 パンッ!


 と、お互いの軽い挨拶と共に、小気味良い音が周囲に鳴り響く。

 今日の立川さんは絶好調なまでにご機嫌な様子で、そのまま花子さん、西川さん、そして沙羅さんとハイタッチを順番に交わしていく。

 そんなやり取りが一通り終わる頃、ちょうど雄二も到着だ。


「お疲れ、雄二」


「スマン、待たせたか?」


「ほらほら、橘くんもカッコつけてないでハイタッチ~」


 立川さんが楽しそうに、俺と雄二の両方に手を上げてきて…ホントにご機嫌だな。


「ふふ、賑やかになってきましたね」


「ですね。俺もワクワクしてきました」


「私も」


 沙羅さんも花子さんも楽しそうに笑顔を浮かべていて、それを見ていると俺もますます楽しくなってきて…

 いよいよここから、俺達の学祭本番が始まるんだって感じがして、ワクワクが止まらなくなってきた!!


「えー、ここで放送部から業務連絡でーす。先程、複数の男子が奇行に走ったという通報がありまして、その原因と思われるたれ込みも複数寄せられましたぁ。私はそれが誰とは言いませんがぁぁ…校門付近にいるどこぞのバカップル!! あんたら影響力強すぎるから自重しろぉぉぉぉ!! …以上で~~~す!! 」


 プツン


 え…と…


 マイクの電源が落ちる音と同時に、盛り上がっていた周囲の空気まで電源が落ちたようにピタリと静まり返ってしまい…周囲と言っても主に俺の周囲なんだけど。

 そして皆の視線が、何故か一斉に俺と沙羅さんに集まってきているような。

 あれってまさか、俺と沙羅さんのことじゃない…よな?


「カップルというからには恋人なんでしょうけど、周囲に迷惑を掛けるのは良くありませんね。まぁ私と一成さんには全くもって関係のない話ですが。…ところで皆さん、何故私達のことを見るのでしょうか?」


「「「…………」」」


 別に沙羅さんのこれは、ボケでもないし突っ込み待ちをしている訳でもない。

、それなのに、皆の白い目が、まるで何かを訴えているようにも見えてしまい…

 でも俺達は周囲に迷惑をかけてるつもりはないし、単に仲良くしてるだけ。

 だから、みなみんのアレは俺達のことを言ってる訳じゃないと思う。

 皆も単なる誤解で俺達を見ているだけだ…きっと、多分…だよね?

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