喧嘩?
両頬を強く押してると、また新たに部外者がやってきた。
「よおヴィル! 今日から剣術だな! ヴィルはもちろん剣術取ってるだろ!」
相変わらず肩を組むのが好きだな。もう慣れたよ。
「お前らは何を取ったんだ?」
「私は料理を取りました」
「お前よくヴィルとも料理してないか? わざわざ授業でも取ったのか?」
「授業選択の時はそうなるとは思いませんでしたから」
「そっか! どうせなら今度俺にも食べさせてくれ!」
「私が許可しない」
「いいじゃねーか、嫉妬かヴィル〜」
「お前に食べられる料理が可哀想なだけだ」
「相変わらず酷いな。妹の方は何を取ったんだ?」
「あ、えっと、私は音楽を……」
「ピアノなら王子と一緒だな! 何を専攻したんだ?」
「あ、えっと、ピアノです……」
「そっかそっか! 王子は性格悪いけど、関わらなければ害がないから安心しろ!」
あいつと一緒なのか〜。心配だ。
「何故性格が悪いと言われなければならない」
あーらら、まあ来るよね。
「よっ!」
「性格なら君の方が悪いじゃないか。何故何もしていない僕がそのように言われないといけない」
「そういうところだ。もっと広い心を持てよ」
「僕の疑問に答えたまえ」
「答えただろ」
「僕を納得させられていないのだから、答えになっていない」
「お前一々めんどくせーな。ヴィルを見習え」
「何故そうなる」
何故私を巻き込む。
「ヴィルは呆れたら無視するからな! 賢い生き方だ! それに強いしな!」
「強いのは関係ないだろ」
「強いと心に余裕が生まれるからな!」
なんでこいつは私を例に出して誇ってるんだ?
「なら君は余裕がないんだな」
今まで笑顔を浮かべていた顔がその一言で険しいものとなった。
「……あっ?」
「そんな君に性格が悪いだなんて言われたくない」
「俺だって王子にそこまで言われたくないな。いつもいつも俺を馬鹿にしやがって」
馬鹿なのは間違ってないから仕方ない。
「僕は馬鹿になんてしていない。ただ事実を述べているまでだ」
「はぁ! もういっぺん言ってみろ!」
「何故ムキになる。君はいつも無駄なことにエネルギーを使っているな。だから唯一の取り柄だった剣ですら彼には敵わなかったんだ」
あーこれは、やばいかも。
「何一つ努力をしてこなかったお前にそれだけは言われたくねーよ」
「何故努力をしなければならない。努力せずとも、観察さえすれば簡単にこなせるのだから必要ないだろう。努力なんてものは、君のような馬鹿がやるものだ」
ネイトはそう言い残して去ろうとする王子の胸ぐらを掴み、壁際に追いやる。
「おい、ふざけんなよ。王子だからって何言ってもいいと思うなよ」
「この手はなんだ。馬鹿だから身分すらも分からなくなったのか?」
「ネイト、手は離せ」
「ヴィルはこいつの味方をすんのかよ」
「冗談はよせ。でも、無抵抗の王子相手にそれは駄目だ」
「……ちっ」
ネイトは少々乱雑に手を離した。王子は汚れを払うかのように服を整えていく。
「王子様、流石に言い過ぎです。今の言葉は努力している者全員を侮辱する言葉ですよ」
「何故無関係の君が口を挟む。前もそうだったな。平民で僕らと同じクラスだから賢いのかと思っていたが、勘違いだったようだ。こいつと一緒にいるんだ、君も、他の者も皆馬鹿なのだろう。類は友を呼ぶ、とても的を得た言葉だと思わないか?」
「ならばあなたに友人がいないことにも納得がいきますね。あなたのように人を見下すことを当然と思っている人は少ないでしょうから」
「僕がいつ人を見下している」
「以前からずっとです。今も見下していますよね。あなた、ネイトのことを馬鹿だと言いましたよね、その通りだと思います」
「ヴィル⁉︎」
「ですが、馬鹿だからこそ、あなたとは違って素直です。間違いだって認められます。けど、あなたは違う。あなたは知らなさすぎる。特に人のことを。自分で世界が完結している。言っても無駄だとは思いますが、そのことを改めない限りあなたは永遠に無知なままです」
「意味が分からない」
「ならそれでいいです」
スッキリなんてしないけど、ここで話を続けていれば全員の心がすり減っていく。なら、キリのいいところで切り上げる他ない。
「ほら行くぞ、馬鹿ネイト」
「いてて、引っ張るなよ。まだ話は終わってないぞ!」
「引くことも立派な強者の行為だ」
「……それもそうだな!」
はぁ、どいつもこいつも本当に碌でもない。




