新鮮味無し
私は足でドアを開けながら医務室に入る。
「先生〜、怪我人〜」
「ヴィリアン様、朝からご苦労様です。今ちょっと手が離せないから、ベッドに寝かせておいてもらえますか?」
「はーい。タオルと氷袋だけ借りていいですか」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
私は攻三をうつ伏せで寝かせ、触診して一番痛がった場所にタオルと氷袋を乗せた。
「先生来たら自分でどこ怪我したか言うんだよ」
「……なぜこんなことをするんですか。僕のこと嫌いなのに」
「またそれ。はぁ、嫌いだからって見捨てたら、私が大事な人達に嫌われるから。それに」
私は攻三に目線を合わせる。
「助けてほしそうにしていたから。それだけ。じゃ、私は行くから。早く元気になりなよ。そして反省しな」
癖で頭を撫でてしまったが、ま、さっきまで応急処置で体触ってたし誤差か。はぁ、朝練できなかったな。残念。
午前の座学が終わり、昼食を挟んで午後の実習の時間となった。ちなみに魔法の授業なので、シスタとリシアと同じ授業だ。どうやら教室はティディが調整してくれたらしい。ナイスティディ!
「どんな先生ですかね」
「どうだろうね。でもわざわざお父様が時間割調整するくらいだし、おそらく熟練の──」
全く気配がなかった。後ろから思いっきり抱きしめられるまで全く気づかなかった。今の私に気配を悟られないようにできる人物なんてほんの一握りしかいない。そして、中でも私に抱きついてくる人なんて一人しかいない。
「ヴィリー様! お久しぶりです〜」
ああ、やっぱりだよ。そうだよね、わざわざ父親が時間割作成してるんだもん。察するべきだったよ。
「なんでここにいるの。まさかここで先生するなんて言わないよね」
「聞かなくても分かっているじゃないですか〜」
新しい先生に教えてもらえると期待した私のわくわくを返してほしい。
「お久しぶりです、ソルシー様」
「お久しぶりです〜。今日からはシスタ様にも教えるので、よろしくお願いしますね」
ソルシーは未だ私から離れないままリシアの方に顔を向けた。
「リシアさんですよね〜。スティーディアから聞いてますよ。いつもうちのヴィリー様がお世話になってます〜」
「ソルシーの子になった覚えはない」
「私の弟子なんで同じようなものですよ」
「ヴィリアン様の師匠の方でしたか。きっとすごいお方なんですね」
ニマ〜ってしているのが分かる。顔を見なくても分かる。
「そうです! 私はすごい魔法使いなのです! やっぱり聖魔法を授かった方は見る目がありますね! 私ちょっと頑張っちゃいます!」
手抜くつもりでいたのか。教師に向いてないでしょ。誰だよこの人雇ったの。
「あ、鐘鳴った」
「……ヴィリー様遅刻ですね」
「遅刻表記にしたら許さないから」
「そんなことしたら私も遅刻したってバレちゃうのでしませんよ!」
ダメだこの教師!
圧倒的不安しかないなか、ソルシーの授業が始まった。
「…………ダメですね」
挨拶もなく開口一番がそれだった。他の生徒も意味も分からず固まっている。
「このクラスの八割の人が魔力の抑制ができていない、または未経験ですね。魔法を使える人も一割未満です。私としては魔法を使える人に合わせて授業していきたいのですけど」
いや絶対ダメだろ。本当に誰だこの問題教師雇ったの。
「うーん、仕方ありませんね。今日はコツを教えるので、次の授業までに魔力の抑制ができるようになってください。今日の授業で出来なかった人は二割の人を捕まえて、魔力抑制に付き合わせてください。絶対に一人でやらないでくださいね。最悪死ぬので。できなかった人はそもそも私の授業についてこられないので、別の先生の授業に移ってください。私が話しを通してあげますから。そもそも私の授業は魔法が既に使える人、最低でも魔力制御をできる人を対象にしたものと書いてありましたので、文句は聞きませんから」
その条件を満たす人があまりにも少なかったから、八割流されてきたんだろうな。生徒数が少なすぎるのもおそらく何らかの不都合があるんだろうし。
「私魔力抑制できませんけど大丈夫ですかね?」
「大丈夫だよ、シスタには私がついているから。リシアは大丈夫?」
「はい。魔法は一度使えただけですが、そのおかげで魔力抑制は既に修得できているので大丈夫です」
「なら良かった」
まあ、シスタならたとえ一週間で出来なかったとしても私が口添えすれば大丈夫でしょう。




