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席の場所

 来るのが遅く、二人並んで座れる場所が前の一つのみとなっていた。


「あそこに座ろうか」

「そうですね」


流石は貴族の学校、イスにはクッションがついており、長時間座っても疲れないようにされている。しかし


「どうされましたか、お兄様?」

「あ、いや、イスがあることが違和感で」


ずっと空気椅子しかしていなかった弊害がここで出てしまった……。どけたいけど、長イスだからそれもできない。なら腰を浮かせれば良いと思うかもしれないが、空気椅子は姿勢も大切、そう安易にはできない。


「ずっと座っていらっしゃらなかったですもんね」

「うん。最後に座ったのって私の十歳の誕生日だから」

「それは、随分と長いこと座っていませんでしたね」

「これから慣れないと……」


それにしても後ろが騒がしいな。早速喧嘩? と、後ろを向くと、どうやらもっと面倒くさいことになっていた。主人公がどこぞの令嬢に難癖をつけられているようだ。そんなシーンゲームであったっけ? って思ったが、そういえばここってシスタとの出会いのシーン、つまり、元々主人公が座るべき場所に私が座ってしまったことにより、問題が起こってしまったのだ。


 ──え、いや、どうしよう。ここは主人公に譲るべき? いやでもシスタと離れたくない……。


 葛藤の末、ようやく結論が出せた。


「すみません、何かありましたか? よければ力になりますよ」


ここはシスタと主人公が友人となるきっかけの場面、そんな大事な場面を私の我儘で壊すわけにはいかない。それに、シスタには友人を作って欲しいから。


「一体どなたですの?」

「これは失礼、ロジャー公爵の息子、ヴィリアン・ロジャーと申します。あまり表に顔を出すことがなかった為、困惑してしまいましたよね。無礼を働いてしまい、申し訳ありません」


名乗った瞬間目も態度も変わったな〜。


「いえそんな、こちらこそ存じ上げず申し訳ありません」

「いえいえ。それで、何があったのですか?」

「そんな大したことではございません。平民がここに座りたいと申しましたので、立場を弁えるよう忠告していたのです」


彼女もここの生徒です、なので立場なんて関係ありませんよ。何てことは口が裂けても言えない。貴族社会では貴族が上で平民が下、そうやって教えられてきている。むしろ平民を擁護してしまえば私が変わり者となる。ここは穏便に主人公を誘導する他ない。


「ですが、ここ以外にもう空いている場所はありませんからね。もしよろしければ、前の席になってしまいますが、私が座っていた席に移りませんか? 私であれば、こちらの席にお邪魔してよろしいですよね?」

「それはもちろん!」

「ありがとうございます。あなたはそれで良いですか?」

「はい」

「では、お手をどうぞ」


私は一段下がり、少し腰を低くして彼女に手を差し出す。


「いえ、その、大丈夫です」

「カッコつけさせてください。相手によっては目の前の女性を蔑ろにしても良いと私は教えられていませんので」


出まかせを述べると、彼女は遠慮がちに手を取った。


「あの、ありがとうございます」

「構いませんよ」


 私は主人公を連れてシスタの元に戻った。シスタは主人公の顔を見て少々驚いた顔をしている。そして、主人公もまたシスタを見て驚いた顔をした。


「私の妹です。良ければ仲良くしてください。シスタ、彼女が席の件で少々揉めていてね、隣に座らせてもらっても良い?」

「もちろんです。どうぞ」

「ありがとうございます」


主人公は少々遠慮がちに座る。


「初めまして、シスタ・ロジャーと申します」

「リシアと言います。よろしくお願いします」


二人の笑顔は流石に破壊力がありすぎる。


「シスタ、私は後ろで見守っているからね。私なりに注視しているつもりでも、離れていると見えなかったりするからね、もし周囲の人に何かされたり言われたりしたらちゃんと教えてね。注意するから」


剣に触れながら周りを見回すと、皆慌てて目を逸らした。


「分かりました。ですが、あまり揉め事を起こしてはお養父様とお養母様に叱られてしまいますよ」

「シスタの為なら構わないよ。リシアさんも、この教室では唯一の平民ですので、何かと言われてしまうかもしれませんが、困ったことがあれば気軽に相談してくださいね」

「すみません、ありがとうございます」

「いえ。では、私は失礼するね」


ただでシスタの隣を離れるのも辛いので、頭を撫でてから上の席に向かう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヴィリアすごい完璧な対応、ただでさえ悪目立ちだもんね、これなら平穏に済ませる
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