師範の思い
両親に話はつけたので、早速ラウザと一緒に通うことになった。何気にこの服装で外に出て、男装のことを知らない人達と会うのは初めてだ。魔法の時はローブで大体隠せていたし。
「着きましたよ、姉さん」
感想は一単語、廃墟。それしか出てこない。いや、マジで初期魔法校舎より酷い。風が吹いたら倒れそうな小屋。中に入るとボロボロの装備が置いてあり、二つある部屋のうち一つに入ると、年齢バラバラの生徒達。一番幼いのはラウザで、一番年上は私と同じ来年から成人の十四歳。ちなみに、平民は十五になった時点で、貴族と一部の平民は学園卒業時に成人となる。
「ラウザ、そういえば師範は何人?」
外用の低めの声で小さくそう聞くと、ラウザは暗い顔をした。嫌な事を質問してしまった。
「今は三人です。去年は七人いたのですが、体調や気持ちを崩してしまった為辞めています」
「そっか」
「本当に今ここに残っている三人の師範方には頭が上がりません」
「じゃあその師範達のためにも頑張らないとね」
「はい」
片腕のない師範の一人がボロボロの箱を持って部屋に入ってきた。生徒達はそこに指南料を入れていくと、外に出ていく。
「ああ、あなたが」
「はい、ラウザの兄、ヴィリアン・ロジャーです。ラウザから話が言っていると思いますが、私も剣術を認められた身、あくまで生徒ですが補佐として役に立とうと思っています」
「本当に助かります。どうかよろしくお願いします」
「こちらこそ」
私も指南料を払った後外に出る。好き勝手に動き回ったり、お喋りをしたりなど、ちゃんと指南を受けている生徒はラウザのみ。そんな光景に呆れていると、後ろからため息が聞こえる。
「酷いですよね。一体何のためにここに来ているのか分かりません。ここで剣術を教えている者は皆、たとえかつてのように剣は振れずとも、自分の持つ剣の技を授けたいという情熱がありました。しかし、全く真剣に取り合ってくれない生徒達を見て、心を折る者も多いです。また、家族を養うためにももっと給料の良い仕事に移ったり、建物内で怪我をしたりと、ここで教える事を諦め、去っていく者が後を絶ちません。我々も仕方がない部分があるということは大変理解しています。ですが、少しでもここを剣に対して希望を見出せる場にしたいと師範一同思っております。ヴィリアン・ロジャー様、どうかお力添えを願います」
「任せてください。その代わり、今日だけは私に一任して貰っても良いですか?」
「構いませんよ」
「ありがとうございます」
私は他の二人の師範達も紹介してもらった。一人は片目と手先の感覚を失い、もう一人は激しく動くことができない。しかし、少しだけ、全員に無理なくできる範囲で剣術を見せてもらったが、本当に強かったことが伺える。たとえもう二度と剣を持って戦えなかったとしても、こんな素晴らしい技術を持っている人達の教えを聞かないなんてもったいない。そもそもこの人達の技術をあんな安い金で教えてもらえるなんてことがおかしい。
聞けば、三人は元上級冒険者だという。上級冒険者は有力貴族の護衛を任されたりするといえば凄さが分かるだろう。そんな三人の話を聞かないとは愚かな者共だ。これは、ちょっと本気を出すとしよう。ラウザがいるから大人しめだけど。




