弟の涙
今日は庭で魔法の特訓。一年前にラウザを助けた時の突風の正体は私の操作型風魔法だった。ま、転生者特典といったやつだろう。でも、そのことをソルシーに伝えた時、魂が二個あるのではと半分冗談で聞かれた時は焦った。だってあるんだから!
とまあ、そんなこんなで二属性を操れるようにする為に、最近はずっと魔法を集中的に特訓している。氷も風も片方づつなら問題なく出せるんだけど、二つとなると一気に難しくなる。
「よし、この氷魔法が消えないように、風魔法を加えて……で、できた!」
氷魔法で作った足場の下に風魔法で風を上に向けて吹かせる。風魔法を強めに出力し、ついに、ついに浮くことができた! 三センチだけだけど。
しかし、これは大進歩だ。もっと魔法の調整を上手く出来れば、いずれは空を自由に飛ぶことだって夢じゃない。
「とりあえずは移動してみよう。これならいつも以上に風を強めても問題ない」
風魔法の角度を調整し、前に進む。風を強めれば車にも劣らぬ速度を出せる。こんな速度で地に足をつけずに移動をするなんて、気分はかの有名なお猿さんだ。
「やあ! やあ! 我こそは──」
「姉さん!」
ラウザの声に驚いて魔法がブレてしまい、そのまま、氷が地面とぶつかり、私もその勢いで前に押し出された。いやほんと、こういう時に受け身って大事だなってよく思う。ここ最近は特に。
「ど、どうしたのラウザ」
理由は分かっているけど。
「この前もお母様にそういうのは止めるよう言われていただろう! どうして姉さんはまた繰り返しているんだ! いつもいつも転んで、怪我でもしたらどうするんだ!」
「大丈夫だよ、受け身取れるし」
「変な転び方をして首でも折ったらどうするんだと僕は言っているんだ!」
「大丈夫だって。本当にラウザは心配性だね〜」
「な、ちょ、姉さん」
ラウザを黙らせるにはこうして抱きしめてあげるのが一番。ラウザはシスコンだからね〜、こうすると強くは出られない。一体誰に似たのやら。
「もう、止めてくれ! とにかく危ないからそういう危険な行為はやめてほしいんだ」
「そんなこと言ったら剣術だって危険だよ。まあ見ててよ。さっき上手くいったの。ようやく調整が上手くいったんだよ。これをもっと改良していけば、いつかは自由に空が飛べるようになる。夢があるでしょう」
「それはそうかもしれないけど」
「ラウザ、心配してくれるのはありがたいけど、私は私がやりたいことをしたい。だから、ラウザも応援してくれると嬉しいな」
母親よ、きっと私があなたの言うことは一切聞かないと思ってラウザを差し向けたのだろうが、甘いな。私だってラウザの扱いは心得ている。
「僕は姉さんのことが心配だというのに、どうして分かってくれないんだ。僕の言うこと、姉さんは聞けない?」
母親よ、あなたはやはり親だ。そう、私の負けだ。弟の涙には敵わないよ。
「分かった分かった。止めるから。だから泣かないで」
「言いましたね。では、今日はそのくらいにしてケーキでも一緒に食べましょう」
嘘泣きで涙を流せるのはもう役者なんだよ、ラウザ。
「はあ、ずるいよ。良いよ、食べよう。シスタも誘って──」
「あ、いえ、姉さんに相談したいこともあるので今日は姉様抜きで」
「分かった。それじゃあ着替えてくるね」
前話ラウザ・ロジャー⑦に、各キャラ視点最終話の恒例で書いていたあとがきを追加しました。




