解決
三日寝込んだ。そして、完全復活した。私があそこまで弱ったのにはいくつかの要因が重なり過ぎていた。まず、あのジジイと戦ったことにより、私の魔力がごっそり持っていかれた。そして次にソルシーのせいで濡れた服で過ごしていたことだ。そんな体が冷えやすい状態で馬を全速力で走らせ、思いっきり風を切った。
次に人攫いとの一件。私は魔力だけを貯めているつもりだったが、もうあの頃には風邪をひいており、判断力と感覚が少々鈍っていたせいもあり、とにかくラウザを助けられる大魔法をと、体力すら魔法に変換していた。そして、あの突風と氷魔法でこれでもかと追い討ちで自身の体を冷やし、トドメのラウザの言葉。ストレスが限界点を超えてしまった。そして、家に着いたことでアドレナリンが切れ、倒れたというわけだ。
それを知った両親だが、いくら普段温厚だからとはいえ、流石に怒ったらしい。ソルシーやラウザの先生だけでなく、私の状況に気づかなかった護衛隊の皆々様も揃って怒られたらしい。
そのことを後から知った時、やり方はあれだったが、あのジジイから助けてくれたソルシーと私が突き放した護衛隊は庇ったが、ラウザの先生は放っておいた。
その為、ラウザの件もあり一時は解雇の話も出ていたが、まさかのラウザが庇ったという。おかげで減給で済んだらしい。やれやれ、うちの両親は甘いんだから。
さて、そんな優しさに溢れているラウザはというと、今私の目の前にいる。
かれこれ三十分、お互い話し出せないでいる。シスタを間に入れることも考えたのだけど、これは私の責任。シスタを巻き込むわけにはいかないと、二人で話すことを決意した。
「…………私がラウザを見ていないってどういう意味? そこだけは教えてくれないと私も分からない」
この五年間、私はラウザのことを気にかけていた。それは紛うことなき事実。なら、私が見落としていること、もしくはラウザが勘違いしていることが必ずあるはず。
「……姉さんは、僕のことを見ていない。姉さんはただの一度も僕だけを見て、一対一で話したことはない。いつも姉様や他の事に気を配りながら、片手間に僕の相手をしていた。姉様の時とは違う。だから、姉さんは僕のことを邪魔に思っているんじゃないかって……」
「…………」
ラウザの言う通りだ。考えてみれば、私は一度もラウザとこうして話したことはない。いつも筋トレや魔法の特訓をしながらだったり、シスタと三人だったり。
たぶんケーキの時も、本当は私に叱ってほしかったんだ。叱ってもらえれば、真っ直ぐ見てもらえるとそう思っていたから。そこまでしないと見てくれないと思ったから。でも、私はそうしなかった。あの時私はなんて言った? 何をした? あの時間はいつも一人を堪能する時間だった。ラウザの相手が面倒で、執事にラウザを託した。執事に相手をしてもらうように言った気がする。ラウザはきっと、その瞬間私を諦めた。私に見捨てられたと思ったんだ。諦めて、突き放そうとした。
これは私の責任だ。私のせいだ。私はシスタ中心で動いていた。推しだから。守りたくて。そのせいで、私はラウザを傷つけた。齢三つの弟を見ず、ずっとシスタだけを見ていた。ただの一度もラウザの気持ちを考えたことなんてなかった。ただ、仲直りしたい。それだけしか思っていなかった。
「ごめんね、ごめんなさいラウザ。本当にごめんなさい」
小さく細い体。そして、優しく繊細な心。今でも十分子どものラウザを、もっと小さい頃に深い傷を負わせてしまった。反省しよう、償おう、そして誓おう。もう二度とラウザを傷つけないと。
「寂しかった」
「うん」
「姉様が、羨ましかった」
「うん」
「僕だけを、見てほしかった」
「うん、ごめんね。本当にごめんなさい。もう二度としない。これからはちゃんとラウザのことを見るから。ラウザの気持ちに寄り添うから。だから、チャンスを、下さい……」
辛いのはラウザなのに、涙が出てくる。
「……いいよ」
二人してボロボロに泣き、目を腫らした。目を腫らしながら、お互いの気持ちを伝え合った。ようやく、ラウザの気持ちを報うことができた。




