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限界

短いです

 しばらくすると我が家の護衛隊や騎士、衛兵が駆けつけてきた。

ラウザのことしか目に入らず気づいていなかったが、辺りには血が散っていた。それを見た兵達は血相を変えて私とラウザを見たが、怪我がないと知り、安堵の息を漏らしていた。

人攫いは拘束し、衛兵が連行していった。私とラウザは我が家の隊達に促されるまま、馬車へと乗り込む。


 途中ソルシーと合流して、濡れた服を返してもらった。私の顔を見て何か言っていたが、今の私には何も聞こえない。ただソルシーの口が動いているのを眺める。まるで遠い景色のようだ。

ずっと見ていて、ソルシーがローブを着用していないことに気づいた。着ているローブを脱ぎ、力無くソルシーに渡すが、受け取ってくれない。それどころかまたローブを羽織られた。まるで毛布に包めるように。最後に額を触られた。ひんやりしていてほんの少し気持ち良かった。


 服も回収し終わったので、今度は真っ直ぐ家に帰る。ラウザは疲れて眠ってしまっている。大冒険だったからこればかりは仕方がない。ぐっすり眠って疲れを癒してほしい。私も家に帰ったらまずは服を着替えて……いや、汚れているしお風呂が先か。そっか、ソルシーはだから受け取らなかったのか。ちゃんと洗濯して返さないと。あれ? なんだっけ? あ、そうだ。お風呂入って、着替えて、その後はラウザとしっかり話して……ああ、頭が痛い、動悸がする、気持ち悪い。でも、向き合わないと。逃げたら碌なことがない。前だって意地になって逃げたから……あれ? 何? 意地になって逃げたこと、私にあった? 


「ああ」


前世の記憶か。どうしてこうも前世は嫌な時にしか感じられないんだ。


 家に着き、馬車を降りる。玄関のドアまでが遠く感じる。なんだか視界もぐちゃぐちゃしているし、ドアもいつもより重い。ああ、でも、シスタの輝きはいつもと変わらない。

心配そうな顔を浮かべている。ラウザは無事に見つかったって言って安心させないと。安心させて、笑顔にさせないと。


「…………」


あれ? 声が出ない。それどころか変なものが込み上げてくる。力が入らない、このままじゃ倒れちゃう。シスタを安心させなきゃいけないのに、このままじゃさらに心配させちゃう。どうしよう。

 ……良かった、ニーファだ。助けてニーファ、私なんか変──


声の代わりに私は吐いた。まだ消化されていなかった物も混じっている。気持ち悪いなーとは思ったが、それだけで何もしなかった。何もできなかった。視界がどんどん暗転していって、差し出されたシスタの手を取れず、私は床に倒れた。

私の周りで騒ぎが起こっているのは分かっているのに、何を言っているのか分からない。私だけ夢の中に囚われている気分だ。お願いだから前世の嫌な思い出だけは感じないで。

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