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隠された才

 身体を温めるために私も茶を一口飲み、話の流れ自体をリセットする。


「それで、どうして私を殺そうとしたのですか?」

「殺すなんて滅相もありませんぞ。ただ、あの一番問題を抱えていた弟子が嬉しそうに自分の弟子の報告をしてきたからの、どのような相手か見てみたいと思うのは当然のことじゃ。この校舎もボロく、そろそろ建て替えようと思っていたこともあり、壊すことには躊躇いはありませんからの。ただ、そちらの男性方には申し訳ないことをしてしまったの。気絶しているだけとは思いますがの」


本当に情けない護衛達だ。それにしても、私を殺そうとしていなかったということは、あの顔はそういうことだろう。


「いえ、気にしないでください」

「おじいちゃんに弟子って呼ばれるの不服。私の方が強いのに」

「あの溢れんばかりの魔力で一撃一撃が大魔法になってしまうお前に命をかけて制御方法を教えたのは儂だというのに、感謝も出ないのか。あのままだったらお主、自身の魔力放出量に体が耐えきれず死んでおったぞ」

「私は天才なのでそれくらいどうにかしてました」

「恩知らずな弟子め」

「はぁ、まあ少しくらいは感謝してますよ。おじいちゃんがいなかったら百年は掛かってましたから」

「ちなみにソルシーの寿命は?」

「七百年くらいですね〜。長生き出来ればもっといけますけど。私は全属性を習得したいので千年は生きるつもりですよ! 新たに属性を得るには、魂が複数個ない限りは一つに百年掛かると言われていますからね!」


わーなんて頼もしい。


「その頃には私のこと忘れてるんだろうね」

「おやおや〜寂しいのですか〜」

「別に」

「薄情です〜! 忘れませんからヴィリー様も死んでも私のこと想っていてください〜」

「はぁ、覚えていたらね」

「覚えていなくてもです〜!」

「はいはい。暑いから退いて」

「ヴィリー様濡れているので暑いくらいが丁度いいですよ」

「誰のせいだと思って」

「良いじゃないですか。あそこで止めなかったらヴィリー様大怪我していましたよ」


やはりか。あそこまで詰めたら私を殺すくらいのことをしないと引き離せなかったのだろう。あの時はとにかくこのジジイをどうにかするのに必死で気づかなかったけど、あの焦り顔は私を傷つけてしまうことに対してと考えるのが正しいだろう。


「説明少ないんですよ、おじいさん。私も手合わせだって知ってたらあそこまで本気になりませんでしたよ」

「はて? 言ったと思うがの。いや〜しかし、お主に魔法剣士の才があったとは知らなかった故、危うかったの」


あれは愉快犯としか思えない言い方だよ。まあそれよりも──


「魔法剣士?」

「ちょっとおじいちゃん! それだけは絶対に許さないから!」


いつもヘラヘラとした顔を浮かべているソルシーが、珍しく顔を顰めて睨みを利かせている。


「魔法剣士というのはな」

「おじいちゃん!」

「彼ならこの単語を聞いた時点で自ら調べるであろう。ならば、もうここは教えてしまった方がよい。分かったら座りなされ」

「余計なことを言うから」


ソルシーは不服そうに座った。


「さて、魔法剣士とは、名の通り魔法と剣を融合させて戦う者のことですじゃ。お主、魔法に必要なものと剣に必要なもので矛盾が発生する部分があることは分かりますかの?」

「はい。まず魔法は遠距離戦が基本。対して剣は近距離でないと戦えません。一応剣を投げたりとか遠距離にも対応はできますが、そういうのは一旦無視します」

「それで良い。こういう話で基本以外を考えないのは賢いことじゃ。たまに突飛なことや珍しいケースを持ってきては話を複雑化させようとする者もおりますからの」


ジジイはそう言ってソルシーの方を見た。分かる、ソルシーは絶対口論になったら変なこと言って話をぐちゃぐちゃにするタイプだ。


「続けて良いですか?」

「おお、すまんかったの。続けてくだされ」

「剣術は必要最低限ではありますが、とにかく身体を動かして隙を無くす事、または作る事が基本ですが、魔法は逆に相手の動きや魔力、魔法を見て、たとえ後手であろうと確実に有効な魔法を発動させます。他は大体同じな気がしますけどね。鍛える部分が違かったりしますけど」

「そうじゃな。簡単に言ってしまうと、剣術は考える前に動く、逆に魔法は考えてから実行する。決して相容れぬ物であるが、極一部の者はそれができる。どういう人物であると思いますかの?」


そんなこと言われても分からないんだけど。


「同時に複数の事を分けて考えられ、こなすことができ、常に冷静でいられる者じゃ。あとは両方の才があれば問題ない」

「うーん、案外簡単にできそうな気がしますが」

「お主は相手に魔法を使う時、何を考えておりますかの?」

「え、うーん、相手の属性と型から、きっとこのパターンの魔法がくるから、魔力の流れをよく見て、避けの準備をしつつ確実に相殺し、狙えるならば相手の無力化をするということを考えています」

「では、剣の時は?」

「相手の筋肉や持ち方、視線、剣先を見て、どこを狙っているのか予想し、先に動かれる前に押さえ込んで、先手を取って相手の隙を突きますね。相手の方が早ければ、先回りで防御に徹します。……逆ですね」

「そうじゃ。魔法を意識すれば後手に周り、剣を意識すれば魔法がブレる。魔法はイメージが一貫していないと上手く発現できんからの」

「なるほど。よく分かりました」


私にそんな才能があったとは。魔法剣士、案外良いかもしれない。


「そういえば、さっきのあれは融合にはならないのですか?」

「なるにはなるのじゃが、魔法剣士は名乗れんの。魔法剣士はもっと複雑な魔法を繰り出す。例えば、お主の魔法ならば、剣を振るたびに氷を発現させたり、剣が当たった瞬間に相手を凍らせたりの。魔法剣士の戦い方は千差万別、片方しか使わない時より戦いの幅が広がる。儂が見る限りはそう思いましたの」

「そうなんですね。その、どなたか知り合いの方で魔法剣士の方はいらっしゃいませんか? 可能ならば紹介してほしいのですが」


ジジイが口を開く前にソルシーが机を強く叩いて立ち、前のめりになった。


「絶対ダメです! 私が許しません! 師匠のせいでヴィリー様興味持っちゃったじゃないですか! どうしてくれるんですか!」

「なんでソルシーはそんなに嫌がるの」

「こやつ、魔法剣士が目の前で死ぬのを見た事があるんじゃよ。魔法剣士はたしかにすごい、剣術と魔法どちらの弱点もカバーできる、戦士としては最高峰の者達じゃ。しかしのお、そんな完璧に近い存在でも弱点はどうしてもあるのじゃ。魔法剣士はよく事故を起こしてしまうからの」

「事故?」

「そうじゃ。杖を通さずに魔法を発現させるとどうなるか知っておりますかの?」

「身体の許容量を超えると内から爆発するんですよね」

「そうじゃ。魔法剣士はそれが特に多いのじゃ。剣を振り、身体強化を行い、そして適切な魔法を出す。疲れが溜まったり興奮をしたりして、ついうっかり思考が乏しくなった時、まずどこが疎かになると思うかの?」


そんなの一つしかない。たった一つだけ、身体に染みつかせず頭に染みつかせるものがある。


「魔力を杖に通すことですね。身体強化は体内で完成させている。その魔力を体内から直接外に出して魔法を発動させようとして……ということですね」

「だから私は絶対に反対なんです。人間、絶対大丈夫なんてないんですから。ヴィリー様、人の肉や内臓が口に入って、他人の血が目にかかる感触分かりますか? すっごく気持ち悪いんですよ! そりゃ私仕事で何人も殺してきましたが、あれほど不快感被ったことはないですよ! ヴィリー様にはあんな風に死んでほしくないです!」  


この人、私に気持ち悪い想像をさせた上に事故死すること確定で話しているよ。


「とりあえず話を聞くだけだから」


嘘だけど。


「こう言ってはすまぬが、儂も知り合いにはいなくての。過去に一度、酒場で話し、手合わせをしただけで、名も知らぬし顔も覚えておらぬ。明らかに儂より年上だったからの、生きているかも分からぬ」

「そうですか……」


残念、魔法剣士になれば教官とソルシーから少しくらい本気を引き出せるかと思ったのに。


「まあまあ良いじゃないですか! 魔法剣士なんて碌なことがありませんよ!」

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