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新事実

 訳も分からないまま、先ほど私を殺そうとしてきたジジイとソルシーとの三人で、開放感がある私担当の教室で簡素なお茶会を開く。と言っても飲んでいるのはソルシーだけだけど。


「へ、えっくちっ」

「わぁ〜、ヴィリー様のくしゃみ可愛い〜」

「誰のせいだと思って──へ、えっくちっ」


誰かさんの魔法のせいで全身びしょ濡れ。とりあえず脱げる服は脱いで、ソルシーのローブに包まりながら、少々睨みを利かせる。


「とりあえず説明してください。なんですかこの状況は」

「それは私もですよ〜。どうしてここにいるんですか?」

「まずは儂の紹介をさせてもらいましょう。昔、ソルシーの魔法の師匠をしておりました。オルド・アスターと申します」

「……ソルシーの師匠⁉︎ ソルシーに師匠なんていたの⁉︎」

「最初の頃だけですよ」

「そうですな。もう四十年程前になりましょうぞ」


ソルシーは思いっきり口に入れていた茶を吹き出した。高いんだぞそれ。

 ……ん? ちょっと待って。


「四十年⁉︎」

「左様。今はまだ落ち着いたといえますがの、あの頃はとにかく人を見下すわ話は聞かないわで本当に苦労しましたの」

「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってください! よ、四十年って?」


ソルシーの見た目はどう頑張っても二十代前半。我が家に仕えていた期間と宮廷魔法使いであったことを考えても少なくとも七十年は生きていないと説明がつかない!


「い、いや〜ね〜、もうボケてるんですよ。誰と勘違いしているんですか〜おじいちゃん」

「ボケとるわけなかろう! なんじゃ、お主言っとらんのか?」

「何をですか?」

「こやつが魔人ということをじゃ」


 ……魔人? いや、たしかに全然老けないな〜とは思っていたけどさ。


「魔人?」

「うむ。魔人が何かは知っておるよな?」

「それは、まあ、はい。けど、本当にいるんですね」


前世で言うところの絶滅危惧種といったところで、さらには私達人族のいる土地の真反対で生きている人達らしいから、正直無縁と言っても差し支えない。


「おじいちゃん!」

「……魔人なんだ」


そう言うと、ソルシーはへなへなと床に腰を下ろした。


「はぁ、言いたくなかったのに」

「お主、雇われ先でも言っとらんのか?」

「ちゃんと雇い主とかには言ってるよ。じゃないと問題になるもん。でも、ヴィリー様には言いたくなかったの。怖がられるかもしれないじゃん」


魔人は受け子とも呼ばれ、寿命とどこか身体的特徴が人間より遥かに優れている代わりに、極端に感情が乏しかったり、不安定だったりと、恩恵を受けている部分以外で何かしらの問題を抱える呪いを祖先が受けた種族だと言われている。受けたといっても無理やりではなく望んでらしいけど。だから、偏見を持つ人族も少なくないため、基本は人族と魔人は関わり合いにならない。それもあって、地図上にも魔人が住んでいると言われる土地は描かれてない。魔人への偏見はシスタへの反応と似たようなものだろう。おそらく、ティディが紹介する時期が違えば、私の元にソルシーは来なかっただろう。


「通りでずっと見た目が変わらなかった訳だよ。おかしいとは思ったんだよ。でも、納得はできた」


ソルシーは顔を隠した。何今さら隠しているんだと言いたい。


「私が魔人を怖がるわけないじゃん。シスタの兄弟だよ」


それに、乙女ゲームのちょっとした知識で呪いがあることは知ってるし。なんだっけ、たしか二作目でメインに出てくるんだっけ? ああ、モヤがかっていてよく分からない。ま、二作目はたしかやってないからいっか。


「この教室にはレティス殿も居られますからの」

「……レティスさんも魔人なの?」

「レティス殿は普通の人間ですぞ。ただ、呪いの身代わりになったと言ったところじゃろう。儂も彼女から直接聞いたわけではありませんので、よく分かりませんがの」

「へー」


意外と身近にあるもんだな、呪いって。禁忌のはずなんだけど。一体どこから呪いの掛け方とか仕入れるのやら。


「まあとりあえず、気にしなくて良いよ。むしろ性格をどうにかしてほしい」

「酷いですね。こう見えても精神年齢は立派な大人なんですから!」


どこが? ま、復活したようで何より。本当に切り替え早いなこの人は。


「あー疑ってますね。私の見た目は精神年齢に起因するのです! ですから、私はヴィリー様より全然大人なんですから!」


むしろそんだけ生きていてその見た目ということに危機感を持った方がいいと思う。言わないけどさ。

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