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貴重な手合わせ

 自分の部屋に戻る途中、少しだけ、ほんの少しだけ期待を寄せてラウザの部屋の方に向かった。

部屋に入れてくれないことは分かっているから、せめてすれ違えたらと思って。


「ラウザ!」


部屋に入ろうとしているラウザの腕を掴んで、無理やり少しだけ時間を作った。


「ラ、ラウザ、あのね、私今日」

「……噂になっていましたよ。剣術、認められたのですね。それと、お誕生日おめでとうございます」


私の顔は見てくれないけれど、おめでとうと言ってくれただけで少し救われた気がした。


「ありがとう、ラウザ」


 私は意気揚々として庭へと出た。ようやく団長と手合わせできるのだ!


「よろしくお願いします」

「……ヴィリアン様、一つお願いしてもよろしいでしょうか?」

「何でしょう?」

「真剣でお願い出来ませんか?」


きっと団長は教官が作った剣を受けてみたいのだろう。私も試したいし、一番最初にこの剣で相手をするのが団長なら願ってもないこと。


「構いません」


 ソルシーも魔法の準備が出来たということで、隊長の合図で両者共動き出した。

一切隙のない攻撃の連続、少しの油断が命取りとなる。流石は王宮騎士団団長。しかし、教官に比べると動きが鈍い。流石に本気は出していないだろうが、多少本気を出してもらったとしても避けれるし防げる。

マントの下に隠されている剣に警戒しながら、とにかく剣をぶつけて隙を作る。けど、少しでも違和感を感じた隙は間違えても狙わない。相手のペースに決して乗せられないようにする。

剣を変な風に持ってかれたら、手を離して瞬時に持ち変える。初めての相手なら、戦い方の特徴から攻撃のパターン全て予測する。それが全て外れても、とにかく瞬時に対応する。

自分より強い者相手には決して無理に反撃をしない。とにかく根気強くその時を待ち、僅かな瞬間を逃すな。散々言われていることだ。そしてようやく、決着が着いた。


「それまで!」


 私の剣が団長の首筋に当たるか当たらないかのところで、試合は終了した。


「参りました」


私は負けたのだ。


「よく見ておられますね。流石はザベル様がお認めなさるだけはある」


私のその宣言に団長は満足そうにしていた。


「教官には散々言われていますから」


一見、今回の勝敗は首筋に剣を持っていった私の勝ちだ。でも実際は団長の勝ち。もし本当の戦闘ならば、私は団長が手に隠し持っていた短剣で心臓か首を貫かれている。近接の場合、斬るよりも突く方が圧倒的に早い。首に傷は付けられても、斬ることはできない時点で相打ちにもならない。


「それはそれは。同年代の子達よりも強いからと天狗になっているうちの馬鹿息子の鼻を斬ってほしいくらいです」


きっと攻略対象のことだろう。


「私はまだまだですよ。私が越えるべき相手は教官ですから」


そしてもう二度と、お前は俺には勝てないなどと言わせない!


「ははは! わたしも彼が負ける姿を見てみたいです! でも、彼を倒すならまずはわたしですね。その時を待っていますよ。今日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそお時間いただきありがとうございました。また機会があればぜひ。次はもっと手強くなるので」

「楽しみにしております」


素晴らしい時間が終わってしまった。できれば団長からアドバイスの一つも欲しかったけれど、贅沢は言えないか。

ちなみに母親は許可した身ではあるが、怖くて見れなかったらしい。娘の成長くらい見届けてほしかったよ。

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