天才の嫉妬
団長が教官の話で一人盛り上がっているのを見ていると、後ろから抱き寄せられた。
「スティーディアは本当に人脈広いですよね〜。ヴィリー様、言っときますけど私だってあのおっさんに負けないくらい凄い魔法使いなんですからね」
ソルシーは自分の太ももに私を座らせ、不貞腐れたように言った。教官が褒められて嫉妬したのだろうか? 嫉妬したのだろうな。
「ウィザルド様は魔法使いならば皆尊敬し、憧れるほどの素晴らしい実力を持つ魔法使いです。そのようなお方に指導されておられますヴィリアン坊っちゃまを、羨ましくも誇らしく思います」
ほぉ〜魔法部隊のリーダーにそこまで言わせるとは。
「そうそう! 聞いたヴィリー様! 私は凄い魔法使いなんですからね!」
「分かってるよ、そのくらい」
「本当ですか〜?」
「本当だよ。だって、ソルシーは私をここまで育ててくれたじゃん。私が誇れる先生だよ」
というか、散々自分で天才だって言ってる癖に何言ってんだこの人は。
「ヴィリー様……。かーわいい!」
「うっ」
ソルシーは勢い余ってか思いっきり私を抱きしめ、頬をすりすり、頭を撫で撫でしてくる。
「わ、ちょ、ソルシー! 強い強い! た、隊長! 助けて」
「はは、それくらいヴィリー様なら大丈夫ですよ」
あんた我が家の家臣でしょ! 何がははっだ! お嬢様を助けろ!
「お、お母様!」
「微笑ましいですね。今後ともうちの子をよろしくお願いします」
「任せてください!」
ど、どうして誰も助けてくれないんだ! 父親と団長は何か話し込んでるし。あとはソルシーに強く出れる人達じゃない!
「も〜、ソルシーのこと嫌いになるよ!」
「それは困りますね〜。既成事実でも作っちゃいますよ〜」
声量を抑えたとはいえ、この人は未成年とその親の前で何言ってんだ!
「と、冗談はこのくらいにして」
ようやくソルシーから解放された。
「ヴィリー様、これくらい逃げれるようにならないとダメですよ。じゃないとまた襲われちゃいますよ〜」
「逃げれるよ。ただ、下手したら傷つけるかもしれないから、解放されるのを待った方が良いでしょう。私を傷つけないって分かってるし」
「じゃあもう一回やりましょうか!」
「やらない!」
「む〜」
大の大人がむ〜じゃないよ。
「はぁ、私はそろそろ失礼するよ。明日の警護とかについてまだ話し合うんでしょう」
「よく分かりましたね」
「ここに集まっている人を見て察しが付きましたので。それに、ソルシーが以前、最近は人攫いが多いと言ってましたので」
「流石はロジャー様のご子息、賢いですね。剣お返しします。とても良い物を見せていただきました。ありがとうございます」
「いえ」
そういえば、この人王宮騎士団団長なんだよね。じゃあ、この国では一、二を争う剣の実力を持つ人ってことだよね。
「どうかしましたか?」
「あの、不躾なお願いで申し訳ありませんが、よければ私と一戦交えていただけませんか?」
「ヴィリアン⁉︎」
「こちらとしては大変ありがたい申し出でありますが。なにせかの有名なサベル様の御弟子様、むしろこちらから願い申しあげたいほど。しかし……」
団長は両親の方を見た。もちろん二人は渋い顔をしている。父親は母親の回答次第といったところだろう。
「お父様、お母様、お願いします」
「……分かりました。その代わり、ソルシーさん、危なくなったら入ってもらえますか?」
「いいですよ〜。良かったですね、ヴィリー様!」
「うん」
「それじゃあ、話が終わったら呼ぶから、部屋で待ってなさい」
「はい! それでは失礼します」




