ニーファ・メドー③
ニーファ視点です。
ヴィリアラ様が男装をなされてから月日が経ち、生活にも慣れてき始めた頃に問題が起こった。
「メドーさん」
「ソルシー様? 珍しいですね、どうなされましたか?」
訪問時の挨拶以外でソルシー様が誰かに話しかけることなんてなかった為、正直困惑してしまった。
「ヴィリー様のことですが、もしかしたら今やっている剣術の特訓中に倒れてしまうのではと思いまして。私は週一でしかヴィリー様のことを見れませんが、剣術の特訓が本格的に始まってからというもの、ヴィリー様かなり無理しているご様子でしたので。本人は大丈夫と言っておりましたが、限界を超えるのなら今日ではないかと、ヴィリー様の魔力の流れと魔力疲れからそう感じたのです。忙しいとは思いますが、今日だけはヴィリー様のお側で見守っていることを勧めます。私も心配ですので、これから見に行きます。仕事が一段落してからでもよろしいので、駆けつけてくださると幸いです」
ソルシー様はそう言って頭を下げられた。
「かしこまりました。私はヴィリアン様のメイドです、主人を後回しになどいたしません。すぐに向かわせていただきます。告達いただき感謝申し上げます」
「大丈夫ですよ〜。もし本当にヴィリー様が倒れたらメドーさんがいないと困りますからね。ついてきてくれて心強いです! さぁ、行きましょう!」
おそらくこのソルシー様がヴィリアラ様の言う関わりづらい時なのでしょう。
そんなハイテンションなソルシー様に続いてヴィリアラ様の元に駆けつけますと、地面に倒れて動かないヴィリアラ様が目に入りました。その瞬間目の前が真っ暗になり、今まで出したことのないような大きな声でヴィリアラ様の名を叫びました。
まずは息をしていることに安心し、ソルシー様、ムッシュ様、それとすぐに近くにいた他の使用人にも協力を仰ぎ、ヴィリアラ様を部屋までお連れしました。
まず初めに水を飲ませましたが、意識がないためかうまく飲み込めずほとんどを零してしまいます。
「水なら操作できますよ。飲ませれば良いのですよね?」
「はい。お願いしてもよろしいですか?」
「任せて。私の可愛い教え子だもの」
ソルシー様は脇にあったコップの水を操り、少しずつヴィリアラ様の口の中に入れていきました。
「ありがとうございます」
「いいよいいよ〜。元はと言えば誰かさんのせいだからね」
「ふん」
「お言葉ですが、ソルシー様の言葉を私は否定できません。特訓終わりのヴィリアラ様の様子を見るたびに度を越した特訓量だと思っておりました。ヴィリアラ様本人が何も言わずこなそうとしていた為何も言いませんでしたが、こうなってしまった以上は別です」
私は溜まっていた文句を言いながら、ヴィリアラ様の体を拭き、服を着替えさせた。
最後に少しでも栄養をつけようと、栄養価の高い物を口で噛んで食べやすくし、口移しで少しずつ食べてもらいました。水を飲み、汗を拭いたことで多少なりとも体力が戻ったのか、口に入れた物は自力で飲み込んでくださいました。
食事を済ませてしばらく寝かせておきましたが、それでも中々起き上がる気配はありませんでした。
「全く起き上がる気配ないね。どうしてくれるの、ヴィリー様に何かあったら責任取れるの?」
「これくらいでくたばるような奴に育てた覚えはない!」
「そんなの関係ない! こうなることを危惧して今日は休ませてって言ったのに!」
「それを判断するのは俺だ! そもそもこいつの気持ちが足りなかったからだ!」
「お願いですから静かにしてください! ヴィリアラ様がお休みになられているのですよ!」
不安で押しつぶされそうになっていると、ヴィリアラ様の手が僅かに動いた。
「ヴィリアラ様!?」
「特訓!」
いきなり起き上がったヴィリアラ様は、前のめりになっていた私とぶつかり、頭を痛そうに抑えられた。
ヴィリアラ様は自分のことはそこそこに、すぐに私の心配をなさった。
思わず手で抑えてしまうほどの痛みだったけれど、ヴィリアラ様が起き上がって、いつものように心配してくださって心底安心した。
だからこそ、ヴィリアラ様の心配もしないムッシュ様に対しての怒りがつい露わになってしまった。
結局は旦那様の命であったことが判明し、恥を晒したことになってしまったが、ヴィリアラ様が元気に過ごしてくれるのなら私の恥など安い物。
ちなみにソルシー様からはお礼とヴィリアラ様がお嬢様であることの確認を何度もされました。ヴィリアラ様から聞いてはおりましたが、本当にご存知ないとは思っていなかった。
ニーファの話は全四話と①の後書きに書かせてもらいましたが、話が予想以上に長くなってしまった為、四話、五話と分けました。その為、ニーファの話は全五話になります。二章の続きを楽しみにしてくださった方がいましたら申し訳ありません。ご理解頂けますと幸いです。




