一件落着
こんな夜に私が来たら父親はどんな反応をするのやら。
「ヴィリアラです。お父様、いらっしゃいますか?」
「入っておいで」
「失礼します」
父親は何かの資料でも見ているのか、こちらを一瞥するとまた資料に目を戻した。てっきりこんな時間にどうしたんだ!? 何かあったのか!? って焦るものかと思ってたけど、自意識過剰だったみたい。
「どうした」
「あ、あの、服のことなんですけど、男の子用の服を仕立ててほしいと思いまして」
父親は資料を見る手を止めて、立ち上がって窓の外を見た。
「覚悟はしていたが、そうか。これから先、ずっとその格好でいるのか?」
それはシスタ次第といったところかな。
「私もまだ断定はできません。ただ、学園を卒業するまではこの格好でいます」
「そうか、そうか〜。ヴィリアラのドレス姿が見れなくなるのか〜。それは残念だな。ああ、残念だ」
後ろから見ただけで父親が本気で落胆しているのが分かる。申し訳ないとは思うけど、これもシスタの為の犠牲。受け入れてほしい。
「メドーさん」
「はい」
「メドーさんはそもそもこのことを知っていたのかね」
「いえ、私も急に言われたものでして」
「お父様、ニーファを責めるのは間違っています!」
「いや、そういうわけではないよ。ただ、メドーさんはヴィリアラから聞いてどう思ったか聞かせてほしい」
「それは……」
ニーファはチラリと私を見た。何か私にとって都合の悪いことでもいうつもりだろうか。
「病の後遺症ではないかと疑いました」
「ニーファ!?」
「そうか、安心したよ。そう考えるのが普通であると知って」
「お父様!?」
「もう一度医者に診せた方が良いだろうか」
「え、ちょ、違うよお父様! 違いますよ! 私もう元気いっぱいですよ! そうだよね、ニーファ!」
「そうですね」
「むしろ病の後遺症であってほしかったよ。ああ、パティアになんて説明すれば良いか。メドーさん、一つ頼みがある」
「何なりとお申し付けください」
「パティアにヴィリアラのことを説明する時、一緒について補佐をしてほしい」
父親は縋るようにニーファを見て、ニーファは憐れむような目で父親を見ている。
「かしこまりました」
「ありがとう。ヴィリアラ、服の件は引き受けた。だが、せめてこれからは自分一人で決めずに先に相談してほしい。決して勝手に実行しないでほしい」
「分かりました」
できる限りは善処しますという意味だけど。あ、あともう一つあった。
「早速ですが、私の名前をヴィリアラではなくヴィリアンということにしてもらえませんか? 家の中なら別に良いのですが、やはり他の貴族がいる場ではそっちの方が見た目に合っていると思うので。あ、お父様達は家の中では変わらずヴィリアラと呼んでもらって構わないですから」
「ああ、分かった。名前を捨てないだけ良かったよ」
「本当ですか!? ありがとうございますお父様!」
よし、今度こそ忘れていることはないでしょう! とりあえず男装の件は片付いて良かった良かった。




