シスタのお勉強
結局、暴走を恐れてか、はたまた出し切ってしまったのか、どちらかは分からないが一向に魔力を出すことができなかった。
「ダメですね。このまま続けてしまうと最悪体力や生命力を魔力に変換しかねないので、今日はここで切り上げましょうか」
「え!? てことは来週まで」
「お預けです! それではヴィリー様、来週またお会いしましょう! 私はこれで失礼します!」
ということで来週までお預けとなった。というかなんかテンション元に戻ってるし。思うように進まなかったな。嫌な思いもしたし。
こんな気分が沈んだ時に行く場所なんて一つしかない。
「シスタ〜。お姉ちゃんを慰めて〜」
私は机で本を読んでいるシスタに後ろから抱きついた。
「どうしましたか、お姉様」
「魔法の授業上手くいかなくて」
「大丈夫ですよ、お姉様。まだ始めたばかりではありませんか、ゆっくり焦らずにです。私も分からないことだらけですが、それならばと自主的に取り組み、少しでも次に繋げているところです。お姉様は私よりもすごい方ですから大丈夫ですよ。私が保証します」
「シスタ……。そうだよね、シスタが言うなら間違いないね! でもそれはそれとして、シスタ、一旦立ち上がってくれる?」
「良いですよ」
私はシスタが座っていたイスに座り、太ももを叩いた。
「シスタ、ここに座って」
「え、ええ! そ、そんな、お姉様にそのようなことできません!」
「いいからいいから。お願い」
「……お願いはずるいですよ、お姉様」
シスタが遠慮がちに座って来たので、思いっきり抱きついてしっかりと座らせた。私は顎をシスタの肩に乗せ、片手でシスタをホールドしつつ、閉じられた本を再び開いた。
「どこが分からないの?」
「え、あの」
「私はニーファみたいに丁寧に教えられるほど頭良くないし知識も無いけど、私なりに教えられることは教えるよ。お姉ちゃんだからね」
「えっと、その、ここが分からないです」
「あー、そこは前の文章に書いてあるここの言葉がこの単語の説明になっているんだよ。急に出てくるからこんがらがっちゃうよね」
「なるほど、たしかにそうですね。目新しい単語にばかり目がいってしまいましたが、しっかりと読めば分かるようになっているのですね。やっぱりお姉様はすごいです」
ああ、なんて可愛い笑顔。知的な横顔も、天使の笑みもこんなに近くで見られるなんて幸せ。シスタがこちらを振り向くと息も少しかかって本当に素晴らしい! 息くらいなら袋に詰めて保存しておくことできないかな? いや、髪の毛の方が可能性あるだろう。あとでニーファに頼もうかな。
そういうことでニーファに頼んだ結果だけど──
「ヴィリアラ様、流石に仲の良い姉妹とはいえ限度というものがございます。どうか今のうちにそのような考えだけでも改めてください」
と言われた。酷いよ、人を変態みたいに言って。
「まあ、それはそれとして」
「話を流さないでください」
「まあまあ。シスタの家庭教師はどうだった?」
「当然ではありますが、勉強を始めた年がヴィリアラ様より遅いため、ヴィリアラ様と比べてしまうと知識がなく、進行が止まることもあります。ですが、要領は良い方だと感じました。また話もしっかりと聞いてくださるのでとても教え甲斐がありました。ここはヴィリアラ様が見習うべきところですね」
「一言余計だよ」
「それは失礼しました」
絶対思ってない。でも、要領が良いか。
乙女ゲームの学園は主人公以外も普通に平民が通ったりしてるけど、平民はその中でも特に優れている生徒って位置付けなんだよね。たしかクラスは身分ごとに分かれていて、主人公は特別な魔法を保有しているって事で一番上のクラスの唯一の平民。もちろん、身分の高い貴族は昔から家庭教師をつけられて勉強させられるから、下のクラスと比べて圧倒的な学力差がある。それでも主人公は学年トップに食い込む成績。そんな主人公と友達になって、勉強を教え合えるくらいだから、シスタって相当頭いいんだよね。うん、当然だよね。だって私の天使なんだもん! シスタ最高! さすがはシスタだよ、お姉ちゃん誇らしいよ!
「何か良いことでもありましたか、ヴィリアラ様」
「え、あ、そりゃーシスタのことを褒められて悪い気はしないよね」
「それもそうですね」
「そうそう。……あ、そうだ忘れてた、お父様に言伝を願いたいんだけど」
「何をお伝えすればよろしいですか?」
「とりあえず男の子用の服を十着ほど仕立ててほしいって言っといて」
「な、なぜそれを私に。ヴィリアラ様が言うのではダメなのですか?」
珍しく動揺してる。父親に言いたくない事情でもあるのだろうか?
「いや〜、私が言うとお父様そろそろ泣き出すかなって。私のドレス姿が見られなくなるって。だから、ニーファからの方がダメージ小さいかなって思って」
「そのことをお伝えするのは私にとっても大変心苦しいです。せめてもの温情でやはりヴィリアラ様からお伝えください。私もついていきますから」
あー、ニーファも私と同じだったわけか。




