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お出かけ

 次の日、私はニーファとリシアを連れてドレスを買いに王都まで来た。

 リシアもいるし、たまにはと平民に扮してみることにした。


「好きなの選んでいいよ。お金はツケだから心配ない」


 ニーファはともかく、リシアはあまりの場違いな立場に萎縮してしまっている。


「リシア、どれか着てみたいのある?」

「え、あ、その……」


 うーん、そういえばドレスを買いに行く回もこんな感じで萎縮していた気がする。

 攻略対象によって着るドレスも変わるんだよね。

 シック系、セクシー系、可愛い系で。

 今のリシアはどれが良いんだろう。


「とりあえず見て回ろうか」


 私はリシアの手を引いて店内を回る。


「あっ」

「良いのあった?」

「はい」

「…………」


 不意にそんな笑顔されるとちょっと困る。


「じゃあ、それにしようか」


 リシアが選んだのは薄めの紫色のドレスだ。

 可愛い感じのドレスだが、装飾は大人しめ。

 うん、良いと思う。


 ニーファも既に選び終わっていたので、二人が採寸している間に私は紳士服店にいき、適当に見繕ってもらう。


「マントはどうされますか?」

「今回も白で」

「かしこまりました」


 最後に再度確認のため、生地や色を見せてもらっていると、リシアとニーファが店に入ってきた。


「お待たせしましたヴィリアン様」

「私ももうすぐ終わるからちょっと待ってて」


 最後に装飾の確認をしていると、店主が聞き忘れていたと言わんばかりに聞いてきた。


「マントの裏地はどうされますか?」

「え? あー、そっちも白でいいですよ」

「かしこまりました」

「はい。服はいつも通り一式我が家に送ってください」

「承知しました?今後ともどうぞご贔屓に」

「もちろんです」


 店を出ると、リシアが不思議そうに聞いてきた。


「ヴィリアン様、常にマントのお色は白ですよね? 何か理由でもあるのでしょうか?」

「うん? いや、別に。ただ、ソルシーがくれたローブが白だから、違和感ないようにマントも白にしているの。私、魔法を教えに行く時はいつもローブを着ているから、生徒達も白のマントを身につけていた方がすぐに私だって分かるでしょ? だから、白にしているの。それに、白って何色にも合うからね。なにより、シスタの髪色だし」

「シスタ様の髪色という理由が九割占めていそうですね」

「失礼な。シスタの髪色に合わせるなら、裏地は黒にしているよ」

「目の色ですか?」

「もちろん。ああ、そう考えると黒にすれば良かったって後悔が」

「もう遅いです。それに、裏地黒のマントならあるじゃないですか」

「それはそうだけど。はぁ……」


 私達はせっかく王都に来たというのもあり、用事を済ませた後も少し王都を見て回ることにした。


「やっぱり王都は賑わっているね〜」

「学園近くの町でもあんなに賑わっていましたのに、ここは格別ですね」

「そうだね。せっかくだしシスタとラウザにお土産買ってこ」


 でも、何あげれば良いんだろう? ラウザは分かりやすいけど、シスタはちょっと私の専門外になってしまう。

 ファッションとか化粧とかいつも人任せだから私じゃ良し悪しの判断がつかない。


「あ」

「何か見つけましたか?」

「うん」


 私、ファッションには疎いけど、スキンケアには気を遣っているから、ああいう店なら良いの見つけられるかも。


「ヘアオイル! ヘアオイルなんてあるの⁉︎ 成分も匂いも良いし、買おうかな〜」

「おや、お目が高いですね。そちらはヒエルト王国発祥の物でして、最近出たばかりの物なんですよ」

「へ〜」

「髪に与える成分も良いですよ。ただちょっと値が張りますが、貴方様なら問題ないでしょう」

「……たしかに。買います!」

「ありがとうございます! あと、こちらも一緒にどうでしょうか? 今の季節、どんなに気をつけていても肌がカサついてしまいますよね。こちらは保湿クリームといいまして、手だけでなく、顔や身体にも塗っていただけますよ」

「これもヒエルト王国?」

「はい」

「へー」


 ヒエルト王国って美容大国とかだったっけ? そんなの聞いたことないけど。それにしても、ヘアオイルやら保湿クリームやらリップクリームやら入浴剤やらトリートメントやら、前世にあって、今世にありそうでなかった物ばかりだ。


「たくさん買いましたね」

「うん。あ、はいこれ」


 私はニーファに保湿クリームを渡した。


「何ですか?」

「手荒れとかに良いんだって。あげるよ。感想聞かせて。良かったら私も使う」


 ニーファは絶対あげるだけじゃ中々受け取ろうとしないから、一言使わせる理由を言わなければいけない。

 最近学んだ。


「ありがとうございます」

「うん。シスタへのお土産も買ったし、あとはラウザに何か買って帰ろう」

「そうですね」


 ラウザが喜ぶものはすぐに見つけられた。

 ラウザはまだ真剣を持ち歩くことは許されていないが、学園にあるもの同様、人を傷つけられない剣なら家の中でのみ所持は可能だ。

 前話した時欲しそうにしていたから、見つかってよかったよ。


「あ。あそこのアップルパイ美味しいらしいよ。ソルシーが言ってた」


 私は行列の出来ている店を指す。


「購入されますか?」

「もちろん」

「では、お二人は少々お待ちください」

「いや、私が買うよ。二人は私の目が届く範囲で座って待っていて」

「いえ、主人を並ばせるなんて許されません」

「主人の命に逆らうのはもっと許されないと思うけど」

「ですが」

「あの、ニーファさん。きっとヴィリアン様も私達が休んでいる方が安心できると思うのです。ヴィリアン様はそういう方ですから」


 リシアの援護もあり、なんとか納得してもらえた。


 一時間ほど並び、ようやく次になった。

 一ホール、いや、二ホールでいっか。

 ラウザなら一ホールくらいペロリだろうし。


「でも、前はこの値段で一切れ買えた……」

「値上げしちゃったの、ごめんね」


 前に並んでいた五、六歳ほどの小さな女の子が、困ったように店員と話していた。


「ママの、誕生日で。お小遣い頑張って貯めて。こ、今度足りない分持ってくる。だから──」

「それはちょっと難しくて。ごめんね」

「……はい」


 女の子は肩を落として店からトボトボと出て行った。


「次の方どうぞ」

「すみません、アップルパイ三ホールください」


 私は商品を受け取ったあと、ニーファとリシアの元には行かず、早歩きで先ほどの女の子を探した。


「そこのお嬢さん、少しいいかな?」 


 女の子はこちらを振り向くと、怪訝そうな顔を浮かべた。

 私は女の子の前に膝をつき、箱を一つ女の子の前に出した。


「お兄ちゃん、間違えてアップルパイ一つ多く買っちゃったんだ。家に持って帰ってもダメにしちゃうから、良ければ買い取ってもらえないかな?」

「え、でも、お金ない……」

「今、いくら持ってるの?」

「こ、これだけ」


 前世で例えると大体三百円ほど。平民の子にとっては大金だ。


「じゃあ、それで売らせてもらえないかな?」

「で、でも」

「お兄ちゃんを助けると思ってお願い出来ないかな? それに、ママもきっとアップルパイを喜んでくれると思うよ」

「ママ、喜ぶ?」

「うん、喜ぶ」


 女の子は目をキラキラと輝かせて、アップルパイの入った箱を見る。


「お兄ちゃんも嬉しい?」

「すっごく嬉しい」

「じゃ、じゃあ、買う!」

「ありがとう」


 女の子は箱を嬉しそうに受け取ると、満面の笑みを浮かべた。


「ありがとう、お兄ちゃん!」

「どういたしまして。落とさないように気をつけて、まっすぐ家に持って帰るんだよ」

「うん!」


 女の子は私の頬にキスをすると、手を大きくブンブン振りながら走り去っていった。


 ダメだよ。ママやパパによくキスをされているから私にしたのかもしれないけど、赤の他人にキスはダメだよ。

 ご両親の方々、あの女の子が魔性の娘になる前にしっかりと教育してあげてください。

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