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シスタ・ロジャー④

シスタ視点です。

 屋敷に着いた後はお姉様の手当ての後、私の腕も手当てしてもらいました。


 部屋に戻されてからはずっと腕を眺めていました。

 眺めている内に私が悪かったのかと思うようになっていきます。

 私がいなければお姉様はあんなに涙を流すことも、声を枯らすまで叫ぶことも、何より傷を負うこともありませんでした。

 そう考えると、この腕の腫れは私の罪の大きさでしょう。


「私は、呪われた子」


 本当にその通りでしょう。

 私のせいで、私に優しくしてくれたお姉様を悲しませてしまった。

 そして、今後もお姉様は私といる限りそうなってしまう。

 お姉様は私と関わらない方が幸せな日々を暮らせるでしょう。


「痛いです」


 心も体も両方とも。

 お姉様に会いたい。けど、傷つけたくない。

 涙を流して眠るのは久しぶりです。


◇◆◇◆◇


 ここ最近、お姉様のメイドさんが私の面倒を見にやってきます。


「お姉様はどうですか?」

「お怪我はすでに完治しておりますのでご安心ください」

「そうですか」

「……シスタ様、これを」

「鍵、ですか?」

「旦那様からお預かりしたものです。シスタ様に渡してもよろしいと。どうご活用なさるかはシスタ様次第です。それでは、私はこれで失礼します」


 これはきっと私の部屋の鍵。いつでも部屋の外に、お姉様に会いに行ける鍵。

 けれど──。


「こんな私に、お姉様と会う資格なんてありません」


 この髪が無ければ、この目が無ければ、私が普通の子であれば、お姉様と姉妹になることができますのに。


「こんなもの、無ければ良いのに、私なんていなければいいのに、お姉様のこと、諦めることができればいいのに、どうしてですか、どうして」


 髪を引きちぎってしまいたいと手に力を込めますが、その度に腕に痛みが走り、お姉様が頭を撫でてくれた記憶が思い出されてしまいます。

 結局私は自分一人では何もできないのです。

 これではお姉様に迷惑をかけることしかできません。


「死にたいです、お姉様」


 今日もベッドに座って腕を眺めます。

 眺めてると思うのです、この腕が頭を守りさえしなければ、私は死ぬ事ができたのではないでしょうか。 お姉様を私という呪いから解放することができたのではないでしょうかと。

 そう思うと、徐々に治っていくこの腕が憎くて仕方なくなります。


「シスタ……」


 ゆっくりと扉に目を向けると、お姉様はいつもと違い少々険しい顔をして立っていました。


「お姉様……」


 お姉様は私の正面に立つと、頭を下げました。


「ごめんなさい」


 なぜお姉様が謝っているのか私はずっと理解ができません。

 パーティーの時からずっと。

 ですから、私はその謝罪は受け取らず、別のことを聞きました。


「お姉様は知っていたのですか?」

「知らなかった。けど、知っていたよ」

「……どっちですか」

「シスタが疎まれているのは知っていた」

「どうしてお姉様は私の側にいようとしたのですか?」

「いたいと思うのに理由は必要?」

「……分からないです。何も分からないです」


 私はお姉様に迷惑しかかけない、私一人では何の役にも立てない呪われた子なんです。

 ですから、全てが分からないのです。

 お姉様の優しさも、私の存在している意味も。

 ですから、私は意味が欲しかったのです。


「シスタ、私が今までシスタに伝えてきた言葉を覚えている?」

「……はい」


 お姉様がかけてくださった言葉を忘れるなんて私にはできませんから。


「それが、私がシスタといたいと思う理由」

「おかしいです、おかしいですよ」


 私は何もしていないのに。ただ、お姉様の優しさに甘えていただけです。

 なのに、どうしてそんな私といてくれるのかやっぱり分からないです。


「何がおかしいの?」

「全てです! 全て、おかしいです」


 ああ、涙が零れてしまいます。

 お姉様に心配かけたくないのに、涙が、嫌な言葉が零れてしまいます。


「この白い髪は人を死に誘う呪いがかけられていると言われました。お姉様は私が聞こえていないと思っていたのですか? 聞こえていました。誰よりも聞こえていました。老人のような、骨のような、生気を感じられない髪と。目もです。悪魔の呪いがかけられていると言われました。底知れぬ闇を彷彿とさせる、真っ黒な人の物とは思えない目と。そんな私を、呪われた子を、なぜお姉様は今もこうして」

「シスタの髪は天使からの授かり物だよ」


 お姉様は呪われた子である私にそんな真反対の事を言いました。


「天使はね、真っ白な輪っかが浮かんでいて、真っ白な羽が生えていて、真っ白な服を着ているの。シスタのその髪は、そんな天使達からの贈り物なんだよ」

「てん……し……」

「そして、シスタの目は未知の魅力の塊なんだよ。夜になると空は暗くなり、星や月を輝かせる、昼には知ることのできない素敵な未知の空間を作り上げる。深い海の底には真っ暗で見えないけれど、私たちの知らない未知の生き物が日々暮らしている。真っ暗な洞窟には、まだ誰も発見できていない未知の宝物が眠っている。シスタの目は、そんなまだ誰も知らない未知の存在の魅力を映している」


 お姉様は私の前に立ち、少し屈んで私の涙を拭っていきます。


「こんなに可愛い私の妹が呪われた子なわけない。シスタは正真正銘祝福を、愛を受けた子だよ。でも、どう捉えるかはシスタ次第。残念だけど、シスタは呪われた子だとこれから先も言われてしまう。けれど、それ以上の愛を私は与え続ける。シスタは自分をどっちだと思う? どっちだと思いたい?」


 お姉様の顔を見ていると、私の欲望が、我儘が溢れ出てしまいます。

 我慢しなくて良いのだと思ってしまいます。

 私は、愛されても良いのだと思ってしまいます。

 お姉様を離したくないと思ってしまいます。


 お姉様は抱きついた私をそっと抱きしめてくれました。頭を撫でてくれました。

 そんな優しいお姉様の存在が私の都合の良い夢だったらと思うと怖くて、顔を上げたくありませんでした。


「じゃあ、夢から覚めるおまじないをかけてあげる。それでもシスタの側にお姉ちゃんがいたら顔を上げて」


 怖くて怖くてどうしようもない私の頭に柔らかい感触がしました。

 不思議と勇気がもらえて、嬉しくて、なによりお姉様がまだ私の手の中にいるのが安心できて、ようやく顔を上げることができました。


「やっとこっち見た」


 お姉様は太陽のような眩しい笑顔を見せると、私の額に口付けをしました。


「私が話した物語覚えてる? 眠りについたお姫様は、みんな王子様のキスで目覚めているの。私は王子様じゃないけど、シスタは夢から覚めることができた?」

「はい……」


 たしかにお姉様は王子様ではありませんが、私を照らしてくれて、幸せにしてくれて、知らない感情を与えてくださる。

 今もお姉様を見ていると何か分からない感情が込み上げてきます。

 そんな知らない私を見つけて教えてくださるお姉様は、きっと私にとってのたった一人の王子様です。


「シスタ、大好きだよ」

「私もです、お姉様」


 お姉様は私の手を持って目線を合わせました。


「今度こそ絶対、シスタのこと守り切るからね。約束」


 私は弱いのでお姉様を守ることはできません。ですから、私はお姉様を悲しませないようにします。

 そう心で誓いながら、お姉様が差し出した小指に自身の小指を絡ませます。


「約束です」 

一章終わりです!ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!ブクマや評価、pv数が少しずつではありますが、伸びているのを見て本当に嬉しかったです!ありがとうございます!

この作品を書いていると、ヴィリアラじゃありませんがシスタシスタシスタになって頭がおかしくなりそうでした。二章からもよろしくお願いします!

ここまで読んで少しでも気に入った方はブクマや評価、いいねや感想をいただけると嬉しいです!


ちなみに一応伝えておきますが、作者はヴィリアラのこと性格良いと思って書いていません。そのことが顕著に出てくる話もありますので、解釈不一致が出ないよう、このことを覚えていただけるとありがたいです。

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