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保護というより押し付け

 一切状況を呑めていないリシアを馬車に乗らせ、リシアの家まで向かう。


「その子が例の子ですか?」

「そうです」

「仲良いんですね」

「はい」

「あ、あの、どちら様ですか?」


 そりゃそうだ。私だってリシアの立場ならどちら様だ。


「同僚です」

「ああ、魔法の」

「はい。とりあえず見つかってよかったです。仲も良いようですし、学園開始まではヴィリアン様の家で保護しておいてください。上にはそう伝えておきます」 

「え⁉︎」

「保護?」

「下手に別のところで保護させるよりも、ロジャー家で保護してもらう方が安全です。ウィザルド様の庇護下にも入りますし」

「いや、ギルドとか」

「どこに内通者が潜んでいるか分かりませんので。それに、ウィザルド様がロジャー家に出入りしている以上、この国で最も安全な場所はロジャー家です。あの人本気出せば一大陸くらい一瞬で消せますし」


 えーやば。えー。国じゃなくて大陸って……。って、違う違う!

 

「いや、それ我が家が巻き込まれるとかってないよね?」

「逆にあったらあったでじぶん達は公爵家味方につけられるのでラッキーです。とにかくよろしくお願いします」

「いや、でも……」


 そんなこと言われると心配になるんだけど。


「……もし、別のところに預けてそこに裏切り者がいた場合、その子殺されますよ。今はまだ聖魔法使えないんですよね? その事を知られたら、他の教会に預けられたとしても、聖女の名を語る愚か者めとか難癖つけられて殺されます。最悪、散々身体弄ばれてから殺されます。ご友人をそんな目に合わせたくないですよね」


 あまりに淡々と語るレティスさんを見て、少し怖くなった。

 レティスさんはそういう教会の一面を知っている。きっと、この言葉は大袈裟ではないのだろう。

 はぁ、帰ったらまた説教か。


「分かりました、我が家で保護します」

「よろしくお願いします」


 私とレティスさんの話が一区切りしたタイミングを見計らって、リシアが気分悪そうな顔で話しかけてきた。

 殺されるやら何やら言われたらそんな顔にもなる。


「あの、さっきから何の話をしているのですか? 私が殺されるってどういうことですか?」

「ちゃんと話すよ。実は──」

「家、ここじゃないですか?」


 本当にこの世界ときたら!


◇◆◇◆◇


 リシアの家に場所を移し、詳しいことを話すことにした。


「すみません、少しここで待っていてください」


 リシアは先に家に一人で入る。


「お母さん、お客様が──」


 うんうん、予定外の来客は困るからね。親としても、ワンクッション挟んでほしいよね。

 私は挟む暇もなく対面だけど。父親が帰ってきていたら、何とか望みはあるけど。


「すみません、お待たせしました。どうぞ中へお入りください」


 部屋に通されると、リシアのお母さんが頭を下げて出迎えてくれた。


「本日はこのような辺鄙な場所まで足を運んでいただきありがとうございます。大したおもてなしはできませんが、どうかごゆっくりお過ごし下さいませ」


 流石はリシアのお母さん、美人だ。


「いえ、急な来訪でご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。リシアさんとは学園で仲良くさせていただいております、ヴィリアン・ロジャーと申します。こちらは私の知り合いの魔法使いでレティスさんと言います。本日はお二人にとあるお話があり、お邪魔いたしました。少しお時間よろしいでしょうか?」


 リシアとリシアのお母さんはお互い顔を見合わせた。

 再びこちらに顔を合わせると、二つ返事で了承したので、私達は二人に少女失踪事件のこととか色々と説明した。


「そういうわけですので、この長期休暇の間、リシアさんを我が家でお預かりしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか? 久しぶりにお会いできた娘さんだというのに、大変心苦しいとは思いますが、現状何も分かっていない以上、もしリシアさんが関係なかったとしても、リシアさんを守る為に動きたいと私達は考えております」


 リシアのお母さんは少し悩んでいるようだった。

 そりゃそうだよ、大切な一人娘なんだから。


「リシアはどうしたいの?」

「私は、ヴィリアン様が良いと仰って下さるのならお願いしたい」

「そう。なら、荷物を纏めてきなさい」

「うん」


 リシアが早足で部屋に向かうと、リシアのお母さんは溜息をついた。


「すみません、せっかくの親子の時間を」

「いえ、それは構いません。むしろあの子を守る為に動いていただき感謝しているくらいです。ただあの子、少しだらしのないところがありまして。そのことでロジャー家の方々に迷惑をかけないか心配で心配で」


 なるほど、さっきの葛藤はそういう意味だったのか。


「それってあの、あれですか? 部屋がちょっと、というかかなり……」


 そこまで言うと、リシアのお母さんは察した顔をした。そして次の瞬間、深々と頭を下げた。


「うちの娘がお見苦しい物を見せてしまい大変申し訳ありません」

「え、いや、大丈夫ですよ」


 大丈夫じゃなかったのはアドラの方だし。


「たしかに最初は驚きましたが、頑張って綺麗にしましたし」


 主に私が。


「それに、お母様が謝ることではないですよ。顔を上げてください」

「すみません、本当に。学園なら少しくらい綺麗に使っていてくれると信じていましたが……。あの、もしロジャー様のお宅でも同様のことをしでかしましたら、遠慮せず叱ってやってください」


 心中お察しします。


「我が家は毎日メイドが掃除に入るので流石に大丈夫だとは思いますが、もしその時が来れば、お母様の許可もいただいていることですし、少し提言させてもらいます」

「お願いします」

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