決定
ようやく帰ってきたアドラが部屋を見て少々感動している。そういえばと私も部屋を見渡すと、ビフォーアフターできるほど綺麗になっていた。
集中するととにかく手を動かしちゃう癖のせいだろうか、想定より早く終わってしまった。
「洗濯は自分でできるよね?」
「はい!」
「もし大変とかだったら、また私を頼ってね」
「これ以上ヴィリアン様に迷惑かけるのもあれですし、できるだけ自分で頑張ってみます」
「うん、頑張れ」
さてと、アドラが来てくれたおかげでさっきの質問に答えなくて良さそうだ。さっさと戻ろ。
「あれ? ボス、リシアに聞かなくていいの?」
「え?」
あ、忘れてた。
「そういえば私に何か聞きに来たのでしたね。すみません、私の部屋が汚いばかりに」
うん、本当だよ。そもそも掃除さえしなければ私に新たな悩みも増えなかった。
「人は誰しも欠点の一つや二つあるから。それで、私が聞きたいことなんだけど、シスタに誕生日プレゼントを贈りたいんだけど、何を贈ったら良いと思う?」
「私に聞きますか……」
リシアは眉を顰めて少々困ったように笑みを浮かべた。
「平民は誕生日に好きな食事を作ってもらうことくらいしかしませんからね」
「じゃあリシアは何を貰ったら嬉しいの? もしかしたらボスがプレゼントしてくれるかもよ」
「プレゼントは大丈夫ですけど。そうですね、欲しい物……ぬいぐるみですね」
「これ以上物を増やすつもり?」
「あくまで欲しい物ですから! それに、贈り物は大切に扱っていますから」
「そういうことにしておくよ。でも、どうしてぬいぐるみ?」
「昔、少し大きな町に一度だけ行ったのですが、そこで見たふわふわの綺麗なぬいぐるみがすごく綺麗で可愛くて。けど、流石に平民が手を出せる代物ではないので、眺めるだけでしたが」
前世でもぬいぐるみって物によったらめっちゃ高いしな〜。この世界のぬいぐるみなんてもっと高いだろうな。
「シスタちゃんはぬいぐるみ持ってるの?」
「いや、持ってないね。シスタは遊ぶことより本を読むことを好むから、両親もシスタにはよく本を与えていたし」
「じゃあぬいぐるみでいいじゃん。可愛いの選んであげよう」
「そうだね。じゃあ、外出許可取ってくるよ」
ぬいぐるみなら市販品だろうと持っていても問題ないし。
「僕も行く!」
「私も一緒にいいですか?」
「分かった、良いよ」
寮の帰宅時間まではまだ時間があったけど、もしものことを考え、寮長から外出許可証を貰い、職員室に向かう。
「失礼します。エスマルト先生のクラス所属のヴィリアン・ロジャーと申します。エスマルト先生はいらっしゃいますか?」
私に気づいたラウザの先生が駆け寄ってきた。
「ヴィリアン様。エスマルト先生はウィザルド先生の部屋にいるはずです。ご案内しますよ」
「ありがとうございます」
「いえ。何か御用でもあるのですか?」
「外出許可を貰おうと」
「ああ、それは確かに担任でないとダメですね。どうですか? 学園は慣れましたか?」
「そうですね。でも、正直家の方が気は楽です。そちらは? ラウザの調子はどうですか?」
「帰ってきたヴィリアン様を驚かせると日々剣術に励んでいますよ。私の目から見ても、随分と強くなられた」
「それは楽しみです」
ソルシーの部屋の前まで案内してもらい、ラウザの先生とは別れた。
ノックをしようと構えた瞬間、ドアが開いてソルシーが顔を見せた。
「ヴィリー様! どうしたんですか? 私に会いたくなっちゃいましたか!」
「違う。ティディに用があって来たの」
「私ですか? すみません、手だけ洗わせてください。本当、この子ったらいつもいつも何度言っても部屋を散らかして。自分の家ならいくら汚してもらっても良いのですが、ここは学園なのもあって、こうして私が片付けないと迷惑がかかるので」
私とアドラは自然とリシアに目を向けた。リシアは罰が悪そうに顔を逸らした。
「スティーディアは細かいんだよ。ちょっとしか汚していないじゃん」
「脱いだ服は床に放置。杖だって見かける度に買う。しかも買ったら買ったで床に放置。魔法薬だって、作ったら満足して棚に入れっぱなし。消費も処分も面倒くさがってしないから、棚をどんどん増やしていって。他にもたっくさん言いたいことがあります。掃除なんて一切しないからすぐに埃まみれ。何も考えずに物を買って、結局埃を被らせるだけ! 本っ当にあなたは! それのどこがちょっとよ! ここにいる以上人の生活基準に合わせなさい! あなたの家がどれだけ廃墟でも構わないけれど、ここは借りている場所! そのことをもっと自覚しなさい!」
「はいはい、気をつけますよ〜」
「口だけ動かしても意味ないの!」
「も〜、スティーディアは口うるさいんだから。そんなんだから旦那に逃げられたんだよ」
「語弊のある言い方をしないでもらえる? 逃げられたんじゃない、あなたみたいにだらしのない人で私が愛想尽かして追い出したのよ」
しばらく続きそうだな、この言い合い。




