大掃除②
あの悍ましい体験したクローゼットとその周辺を念入りに掃除し終え、何とか嫌悪感が無くなるレベルまで綺麗にした。
「はぁ……。リシア、服頂戴。分かってるとは思うけど、洗濯しているやつね」
「はい。お願いします」
私服三枚、パジャマ二枚。このレベルでリシアの持ち物は少ないのに、どうしてあんな山になるのだろうか。嫌なちりつもだな。
「ヴィリアン様⁉︎ 何してらっしゃるのですか⁉︎」
「一応確認」
服は別に臭くないな。リシアとこの部屋自体は臭くないから当たり前だろうけど、この惨状を目の当たりにしている以上、少々意外にも感じる。
「アドラ、ハンガー」
「は、はい、ボス」
アドラは聖域から出たくないのか、精一杯手を伸ばして渡す。
「リシア、面倒くさくても服はちゃんとしまわないとダメだよ。シワになっちゃってるじゃん」
「すみません……」
「手先は器用だし、人柄も成績も良いのにどうして自室はこんななの」
「よく使うものはしまわずすぐに取れるようにしていたせいか、いつのまにか片付けるということをしなくなってしまいまして……。すぐに使わない物はとにかくどこかに押し込めとけば、見た目は綺麗になるので、その、そんな感じの生活を送っていた結果、こうなってしまったのです」
「つまり、リシアの家もここまで、いや、もしかしたらこれ以上酷いのか……」
「私の家は綺麗ですよ! 母がいつも掃除してくれるので! あ、それもあるかもしれません。掃除はずっと母が担当でしたので」
「………………そっか、とりあえず、綺麗なようで良かったよ」
心の底から。生まれてきてくれてありがとう、リシアのお母さん。
「すみません、だらしがなくて。今もヴィリアン様に掃除をさせてしまい。怒っていますよね」
「ううん、怒ってないよ」
呆れてるんだよ。
「服はこれで全部?」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ次下着ね」
「えっ」
「別にリシアの下着見たところで何とも思わないから平気だよ。そもそも女性物の下着なんて見慣れてるし」
自分ので。
「で、ですが──」
「進まないから、今だけは羞恥心を抑えて」
まあ、男にそんなこと言われても中々勇気出ないとは思うけどね。
リシアはもじもじとし、かなり悩んでいる。
「じゃあ、下着持ってここ座って」
私は足を崩し、そこに座るように促す。隣に座らせたくても座れるスペースがないから仕方がないのだ。
「こ、こうですか」
リシアは遠慮がちに座り、私の足に収まった。
「そうそう。目は瞑るから、リシア自身で畳んで。パンツは丸く、胸当ては折らないでね」
リシアの事だ、パンツなんて小さい布、絶対行方不明にするだろう。だから、丸くしといた方がいざという時見つけられやすくなるはず。
「丸く?」
「分からない? じゃあ一枚だけ貸して。目は開けないから、安心して」
手の上に置かれたパンツをリシアの膝下で畳む。
「こうやって畳んで」
「え、えっと、これで良いですか?」
触った感じは問題ないな。
「そうそう。できるじゃん。この調子でやっていって」
リシアの頭を撫でると、リシアは少し嬉しそうに声を漏らした。
「なんだかヴィリアン様とこうしていると、お母さんを思い出します」
「私がお母さんだと言いたいの?」
「たしかに、今のヴィリアン様はお母さんのようです」
「使用人でもお母さんでもどっちでもいいから早く僕をここから出して」
「だから帰れって言ったのに。自分の言葉に責任くらい持ちなさい」
逃してたまるもんか、道連れだ。
「うう……」
「私の部屋ってそんなに酷いですか?」
「酷い。足の踏み場が無い部屋なんて初めて」
「それは本当にすみません。入学を機に気をつけようとは思ったのですが、自分一人の空間になってしまいますとやっぱり手を抜いてしまいまして」
手を抜くってレベルじゃないけどね。
「まあ気にしないで。掃除は私ができるから。リシアが苦手ならいつでも手伝ってあげるよ」
「私、ヴィリアン様のご両親に怒られるんじゃ……」
むしろ怒られるのは私だろうな。絶対母親に人様の生活環境何口出ししてるんだって言われる。父親は……家でやってたことが外でも役に立って良かったねって言いそう。
「大丈夫だと思うよ。怒られるのは私だろうし。リシアにはむす──こが勝手に手を出して申し訳ないって謝るよ」
あっぶなー、危うく娘って言いそうになったよ。
「では、バレないようにしませんとね。ヴィリアン様が怒られるのは不本意ですから」
「その前にリシアが綺麗に掃除できたら全てが解決だよ」
「そ、それは頑張ります……」
「分からなければ聞いてくれていいからね」
「はい。ありがとうございます」




