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子どもの頃

 リシアが来た為か、ニーファはこっちで髪を乾かすことにしたようだ。リシアと私の髪、どちらも放置できない為の折衷案だ。


「ヴィリアン様って部屋では髪を下ろしているのですか?」

「うん。家でも下ろしてるよ。髪を上げるのは家の者以外の人に会う時だけ」

「何か理由でもあるのですか?」


そりゃ家の者は私の事情を知ってるから、わざわざばっちり男装する必要ないからね。


「…………弟と被らないように」

「弟様と?」

「うん……」


嘘は言っていない。ラウザと差をつける為に髪型を変えたのは事実だ。けれど、よくよく考えたら変な理由だ。


「そうなんですね。普段の髪型も良いですが、今のヴィリアン様も素敵ですよ」

「ありがとう」

「ヴィリアン様、乾き終わりましたが、お着替えされますか?」

「そうするよ、ありがとう。ごめんリシア、ちょっと席外すね」

「いえ、お気になさらず。むしろ押しかけてしまい申し訳ありません。そろそろ戻った方が良いですよね」

「構いませんよ。まだ夕食まで時間がありますし。それに、リシアさんがいらした方がヴィリアン様はしっかりしますので」


なんて失礼なことを。これじゃあ普段の私はだらしないみたいじゃないか。


 着替えも終わったので、再び隣室に戻る。流石に部屋で、しかもお風呂上がりに上着とマントはおかしく思われる可能性がある為、泣く泣く置いていった。まあ、手袋があるだけ安心だよ。


「え、そうなんですか?」

「はい。ヴィリアン様は意外と涙脆いですよ。逆にシスタ様が泣いているところはあまり見たことがありませんね。最後に泣いたのは十年前じゃないかと思ってしまうほどに」

「シスタちゃん結構強いですからね。でもそうなんですか、ヴィリアン様が。可愛らしいですね」


二人して何私とシスタの話で盛り上がってるんだ。まあ、共通の話題は私とシスタくらいだけどさ。


「ヴィリアン様の可愛らしいエピソードなら他にも沢山ありますよ。それ以上に危なっかしいエピソードがありますが」

「今は随分と落ち着いていらっしゃるように見えますがね」

「それはリシアさんの前だからです。家では奥様と旦那様の頭をよく悩ませてますよ。一番最近やらかしたことは──」


まずい、これ以上なに言われるか分からない以上、今ここで止めなければ! てか絶対家の窓壊したこと言うでしょ!


「ニーファ! 着替え終わったよ!」

「では、私も席を外させていただきますね」


 ニーファも着替える為に隣室へと移っていった。


「一体何を話していたの?」

「ちょっとした世間話ですよ」

「私の話なんて面白くないでしょ」

「そんなことありませんよ! ヴィリアン様の知らない一面を知れる機会なんてそうそうありませんから。ニーファさんだからこそ教えてもらえる話もありますし」


なんか、私にとってあまり良くない感があるのだけれど。


「……一体何を話されたの?」

「ヴィリアン様がニーファさんのお見合いに乱入した話や、家庭教師の方の授業を真面目に聞かずに悩ませていた話ですね。あと、詳しくは教えてもらえなかったのですが、ほとんど毎年やらかして公爵様方を困らせているとか」


本当に碌な話してないなニーファ! 主人の話なんだよ! 私にとって良いことを話してよ!


「その話聞いていて楽しい?」

「はい! ヴィリアン様もちゃんと子どもらしい所があるのだと知れて私は嬉しいです」


リシア、気づいていないかもしれないが、それ私に子どもっぽいって言ってるのと同意義だよ。捉え方によっては悪口だよ。あのダメンズ共に言われたら許さないよ。相手がリシアだから気にしないけど。


「ですが、そう考えますとシスタちゃんって昔からあまり変わりませんね」

「シスタは境遇が境遇なだけにね。しっかりしていないとダメだったんだよ。昔よりは笑うようになったし、友人も出来たから兄としては良かったと思うよ。……うん? 待って、遠回しに昔の私がやんちゃみたいな言い方じゃない?」

「そういう意味ではありませんよ。でも、子どもなんですから、やんちゃなのは良いことだと思いますよ」 


フォロー入れた途端否定が肯定になったよ。まあ、父親の心をよく泣かせていたし、母親をよく怒らせていたけどさ。…………私は私の親にはなりたくないな。ストレスやばいだろうな。そう考えると、あの両親は凄いな。


「ちなみに、リシアはどんな子どもだったの?」

「私ですか?」

「うん。知りたいな」

「私は……」


リシアは難しそうな顔をした。一言で表すのが難しい幼少時代だから仕方ないけど。


「そう、ですね。あまり良い表現ではありませんが、暗い子でしたよ。平民は魔法の存在は知っていてもほとんど無関係だったりするのです。そもそも貴族の方のように、魔法の先生をお呼びする機会もありませんので。偶然発現しない限りは一生魔法に関わらないなんてことも多いです。むしろそのような方が大半でしょう。それに、平民にとっては呪いの方が身近なので、魔法を呪いだと言われて避けられるんですよ」


 リシアは眉を顰めて笑いながら語った。

リシアがシスタを嫌がらなかった理由の一つに自分も攻撃される側だったってのがある。リシアの属性は本当に貴重。だからこそ、認知度も低く、より怖がられてしまったのだろう。リシアもある種の呪いの子。リシアが魔法を一度使えたにも関わらず、現在使えない理由に昔怖がられたからってのがある。小さい頃に受けた傷っていうのは大きくなって受けた傷よりもずっと深かったりする。

 ……てか、リシアの魔法にこんなシリアス設定つけるなら死に設定にするなよ運営。活かせ! これほど活かせる要素があるのに逆によく殺せたな!


「すみません、空気悪くなりますよね。もっと楽しい話をしましょうか」

「リシアは昔の自分は嫌い?」

「そうですね、あまり」

「じゃあ、今の自分は好き?」

「まあ、昔と比べれば。笑顔でいられる日々が送れますから」

「なら良かった」 

「……?」

「自分が嫌いって辛いよね。他人ならまだしも自分相手だとどうしようもないからさ。だから、少しでも好きになってくれて良かった」

「私が私を好きになれるようになったのはヴィリアン様のおかげですよ。ヴィリアン様が私の手を引いてくださったから今があるのです。あの時は本当にありがとうございます」


あれ? なんか既視感があるな。何だろう、重要なシーンだった気がするんだけど。どのルートだっけ? ……分からない。いいや、いつか思い出すかこの疑問を忘れるでしょう。それまでは気にしないでおこう。


「どういたしまして」

三章第一部もう少しで終わるのですが、区切りの別キャラ視点入れるか悩み中です。リシアは三章の別の部で入れることが確定しているので、入れるとしたらダメンズ組なんですが、三章は三部構成なので、ダメンズ組はぶられる人がいるんですよね。ハブられた人の為に四章で男キャラメインのストーリー展開をするのは百合作品として良いのだろうか?

とりあえず、もしかしたら二章第三部のように別キャラ視点がないかもしれないと思っておいてください。

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