着替え
トイレの個室にリシアとシスタを入れ、私は外で待つ。
「リシアちゃん、大丈夫?」
「はい……」
「少し脱がすね」
「お願いします……」
服の擦れる音がする。別に邪な気持ちがあるわけじゃないけど、着替えの音ってなんかえっちだよね。別に私が変態ってわけじゃないけど、ちょっと思う。特に相手が美少女だと。
「あの、お兄様、ちょっと」
何もしていないが、シスタに考えが伝わったのではと一瞬焦った。その焦りで高鳴った心臓はすぐには収まらないだろう。
「どうしたの?」
「その、さらしってどうやって取れば良いのですか?」
シスタは胸元まで服を下げているが、さらしって腰辺りまで巻いていることが多いから、これじゃあ取れないな。
「私が言う通りに手を動かしてもらえる?」
「はい」
「まず、もう少しドレスを下げて」
「このくらいですか?」
「もうちょっと、袖が抜けるくらい」
「え、かなり下げますね」
「さらしは長いからね、腰のあたりまで巻いてたりするんだよ」
「詳しい、ですね」
あ、やば、事情を知らないリシアからしたら私が変態みたいじゃないか。
「あーえーっと、ニーファが言ってたんだよ、ニーファが」
「そう、なんですね」
ニーファごめん! もし何か言われたら話合わせといて!
「下ろしました。あとは取れば良いですか?」
「うん。どこかの隙間に端を入れているはずだから、探してみて」
「その、胸の辺りにあるはずです……」
「胸の辺り……あった! それじゃあ取っていくね」
「お願いします」
シスタがさらしを巻き取り始めたので、私は外に移動する。
「お兄様、さらしは取れたのですが、そのせいでドレスが着られなくなりまして……」
「リシアは下着着けてる?」
「いえ、邪魔になるから着けなかったそうです」
「じゃあさらしを胸当て代わりにして。潰すんじゃなくて、隠すようにね。さらしの邪魔な部分はこんな風に軽く腰辺りで結んであげて。袖は結んだところ突っ込んどけばいいよ。出来たら上半身隠すようにネイトの上着を着てもらえればいいから」
上着を脱いで腰の部分を袖で結ぶというなんとも意味の分からない説明を、シスタは分かりましたと即答し、個室に戻った。
「これで大丈夫ですか?」
「うん、完璧」
よく分かったなと褒めてあげたい。流石はシスタだよ。あの馬鹿が相手だったら絶対に伝わらない
「ストールはシスタが使って。リシア、胸はどう?」
「大丈夫です。かなり楽になりました」
「そっか、良かった。少し脱水の症状があったから、もう少しここで休憩していこう。あと、腕触らせてもらっていい?」
「大丈夫です」
「それじゃあ触らせてもらうね」
リシアの脈を測ると、さっきよりも落ち着いていた。息も上がってはいるが整いつつある。良かった、とりあえずリシアは大丈夫そうだ。
「リシア、お腹に息を溜めるようにゆっくり吸って」
リシアは何も言わずに大人しく従った。
「そうそう。それじゃあ、その溜めた息を外に出すようにゆっくり吐いて。それを繰り返していって」
何度か繰り返させていると、リシアの顔が徐々に良くなっていく。
「そうそう、偉い偉い」
リシアの頭を撫でると少し恥ずかしそうにした。
「お兄様、あまりリシアちゃんを私やラウザみたいに扱わないでくださいね。リシアちゃんはお兄様の妹ではないので」
「ごめんごめん、ついね。これからは気をつけるよ」
「お兄様はそう言っていつも繰り返すのですから」
「そうだっけ?」
「そうです」
「まあまあ。シスタちゃん、私は構わないから大丈夫だよ。もう慣れてきちゃったし」
「リシアちゃんはお兄様のことを分かっているからいいけど、お兄様誰に対してもこんな感じだから、勘違いする人が出たら困っちゃうんだよ」
「分かった、分かったよ。これからはあまりスキンシップしないようにするから」
「そうしてください。でも、私にはいつも通りで良いですからね」
「あ、私もいつもみたいに接してもらって大丈夫ですから」
「了解です」




