擬似社交界
緑色のドレスを着て、白いストールを纏い、慣れない様相で不安そうな表情を浮かべながら会場へと入ってきた少女。流石は主人公というべきか、こういう挿絵が挟み込まれるであろう特別なシチュエーションでは普段より一際輝いて見える。
リシアはキョロキョロと辺りを見回し、私と目が合うと安心したように顔を綻ばせた。だから私もリシアをさらに安心させる為に笑顔を向ける。なんだかこのやりとりにデジャヴを感じるのだが、気のせいだろうか?
「ヴィリアン様、シスタ様、えと、ご機嫌よう。で大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。リシア、すごく可愛いね。ドレスよく似合っているよ」
「ヴィリアン様にそう言ってもらえて嬉しいです。ヴィリアン様も格好良いです。いつも格好良いですが、普段とは違った良さがあります。何と言いますか、凄く落ち着きます」
髪色に合わせて薄めの茶色だからね、視界が色でごちゃごちゃしないんだろうね。マントも相変わらず白だが、服に合わせて内は濃いめの茶色だからってのもありそう。
「ありがとう」
「シスタちゃん……シスタ様は凄く大人っぽくなりましたね」
「私はあまりこういう場に出る機会がありませんので、せっかくならとニーファさんが提案して下さったのです」
「今のシスタ様もとても素敵です」
「ありがとうございます。リシアちゃんもドレス凄く似合っていますよ。すごく輝いて見えます。ごめんなさい、あまり良い言葉が思いつかなくて。よく分からないですよね」
「そんな、ありがとうございます」
普段は前髪を下ろしているリシアだが、今日はピンで留めている為、表情がいつも以上に見えやすい。だから、シスタはリシアの普段以上の破壊力を持ち合わせた美少女スマイルに対して輝いていると言ったのだろう。たぶん、私が感じたのもそれだろうな。あと、心なしか演出的なのも感じた。
「リシア、危ない」
私がリシアを引き寄せた直後、飲み物が先程リシアが立っていた床に落ちた。
「あら、ごめんあそばせ」
「いえ、こちらこそ不注意で申し訳ありません。お怪我はございませんか、レディ」
外面スマイルを見せるとあら不思議、高飛車お嬢様も息を呑んでしまうようだ。
「ええ、問題ありませんわ。それでは失礼しますわね」
令嬢がいなくなると、シスタが小さな声で話しかけてきた。
「お兄様、さっきの」
「うん、わざとだろうね。ごめんねリシア、急に引っ張って。大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」
今ので髪が乱れてしまったのだろうか、リシアは前髪を弄る仕草を見せた。
「なら良かった。さっきみたいにリシアのこと陥れようとする人がいるから気をつけてね」
「はい」
リシアは主人公なだけあって、胸も恵まれているが顔も恵まれている。シスタが妹系童顔美少女だとしたら、リシアは正統派ヒロイン美少女だ。だから、割とモブ男子達もリシアの事を目で追ったりしている。今回だってそう。リシアが入ってきた瞬間、男共は自然と視線がリシアに流れていた。胸を潰しても尚それほどの魅力を持っているのだ。
ただ、貴族って変にプライドが高いから、絶対に可愛いだなんて口に出したりしない。けど、女ってのはそういうのに敏感だから、さっきのも、そして今までのも含め、リシアが平民だからってのもあるだろうが、リシアが密かにモテていることに対して嫉妬したのだろう。いやはや、女って怖い。私も女だけど。




