試験会場
授業実習が終わり、教養実習の場へと移動を行う。アドラの言う通り、不正を懸念してか着替えの場所は指定されており、中に入っても審査員が目を光らせていた。
そして、ニーファは物凄く気まずそうに入ってきた。審査員含め男しかいないから仕方ないとは思うが、我慢してほしい。
受験部屋の中にさらに個室が数室用意されており、部屋に一組入り、その中で着替え、化粧、髪型を行う。準備にかなりの時間を割いている為、間に合わないなんてことはまずないだろう。そもそも、あまりに長々使っていると審査員に声をかけられる。
「では、私はシスタ様の手伝いに向かいますね」
「うん。ちなみに、リシアの方はどう?」
「大丈夫ですよ。一人で着られましたし、ストールも貸し出しておきましたので、多少不恰好でも誤魔化しが効きます」
「そっか。ありがとう」
「いえ。それでは、シスタ様の元に向かわせてもらいます」
「よろしくね」
「はい、失礼します」
ニーファが去ったので、私は一足先に試験会場に赴く。これはあくまで推測だが、会場に入った瞬間から試験は始まる。主催が来るまでの様子も審査員達は目を見張らせているだろう。
だから、もし高い点数が欲しいのなら、審査員達に長く見てもらえるよう、早めの入りが必須となるだろう。
「よおヴィル!」
うん、こいつはダメだな。
「ごきげんよう、バトラ殿」
そう声をかけると、ネイトがわざとらしく体を摩った。
「な、なんだヴィル、気持ち悪いな。熱でもあるんじゃねえのか? それとも俺が風邪を引いたのか? これは熱が俺に見せている悪夢か?」
なんて失礼な奴なんだろう。一体私をなんだと思っている。とりあえず、不服だが遠回しに意図は伝えるか。このまま勘違いされているのも些か気分が悪い。
「面白い冗談ですね。たとえ主催がおらずともここは既に社交の場、普段とは一味違う自分を見せるのは当然のことでしょう。そう思いませんか、バトラ殿」
ネイトはああ、と声を漏らし、ほんのりと笑顔を浮かべた。馬鹿でも流石に気づいたようだ。
「そうだな。ところでロジャー卿、いつもの髪留めはどうした?」
こいつは社交の場でも敬語は使えないんだな。
「このような場において、髪留めは不適切と判断した為外しております」
おかげで、今日のお風呂は長引きそうだよ。ワックス取るの大変なんだから。
「そうなのか。今日のロジャー卿も良いと思うぞ」
「ありがとうございます」
あー疲れる。こいつにこんな言葉を使わないといけないなんて。早く終われ教養実習。
「ロジャーにバトラ、君達も既に来ていたのか」
また厄介な奴が来た……⁉︎
「で、殿下が微笑んでいるところなんて初めて見ました」
いくら社交の場では笑顔を保たねばいかないとはいえ、これはちょっと、違和感半端ない。
「何か問題でも?」
「い、いえ。その、あまりにも新鮮なもので」
笑うな、笑うな私。いや、笑顔を絶やしはしないよ。けど、これ以上絶対崩すな!
「お前、笑えたんだな。笑い方なんて知らないかと……」
「相変わらずの口だな、バトラ。僕の顔がそんなに変か?」
「ああ。違和感がすげー」
「それは失礼ではないか、バトラ。僕だって場に適した対応くらいできる」
さてと、こいつらと一緒にいて点数下げられても困るし、とっとと逃げよう。




