私の気持ち
少々乱雑にドアを開けて医務室に入る。
「シスタ!」
「ヴィリアン様、心配なのは分かりますが、病人がいることもあるので静かにお願いします」
「あ、すみません」
「ヴィリアラ様、こっちです」
ニーファが案内したカーテンの中へと入る。
「シスタ、怪我は⁉︎」
「大丈夫ですよ。ご心配をおかけしてしまい申し訳ありません」
「シスタが謝る必要なんてないよ。どうしてシスタがこんな目に合わないといけないの……」
シスタは手首を負傷しており、冷えたタオルを包帯で固定されていた。
「幸い、挟まれた場所が手首だった為、骨折等の症状は見られないようです。手や指でしたら、挟まれた箇所全体が骨折していた可能性もあったとのことです」
「幸いなんかじゃないよ。シスタが怪我をさせられたんだよ。誰だよ、シスタを怪我させた奴。絶対に許せない」
「……蓋を閉めた人は先生に連れて行かれましたので、お姉様まで彼を責めようなんて思わないでくださいね。私は大丈夫ですから」
「シスタ、そんな事言わないで。大丈夫じゃないよ。大丈夫なら、こんなに手を腫らさないよ」
「一週間ほどは様子見の為、手首を負荷を掛ける行為は禁止との事です」
「ニーファさん!」
シスタは焦ったようにニーファを掴み、痛みが走ったのか苦悶の表情を浮かべた。
「……シスタ、私ってそんなに頼りない? 私には心配をかけられるほどの信用は無いの?」
「違います! 決してお姉様を頼りにしていない訳ではありません! ですが、お姉様は私のことになると頑張り過ぎてしまいますから。私はお姉様に無理をしてほしくないのです」
暗い顔をして、俯きながら言ったシスタの言葉を私は素直に受け取れなかった。それどころか、シスタが怪我をしてしまったという事実に精神が不安定になっていたこともあり、今まで塞いでいた我慢が零れていく。
「私が無理をしないとダメなんだよ。私が無理をしないで、誰がシスタを守れるの! ニーファ? ラウザ? 無理でしょう! ニーファは力が足りないし、ラウザは常にシスタの側にいられない! お父様とお母様もそう! だから私がずっと、ずっと頑張ってきた! シスタを守る事だけを思ってずっと頑張ってきた! そもそもこんな格好したくなかった! 剣も魔法も倒れるまでやりたくなかった! お父様とお母様に心配かけたくなかった! ニーファに迷惑かけたくなかった! ラウザを傷つけたくなかった! でも、全部シスタの為だと思って頑張ってきた! 自分を押し殺してきた! なのにどうしてシスタが私に頑張るなっていうの! どうして大丈夫って言うの! どうしてシスタが私を気遣うの! やめてよ。シスタが、シスタだけは私を壊さないで。私の意味を奪わないで。私を拒まないで……」
「ち、違うのお姉様! 私はただ、お姉様を悲しませたくないだけで──」
「何が違うの。私を悲しませたくないのなら、どうして我慢するの、隠そうとするの。どうしてよ。シスタは優しいから、私を心配させたくないのだろうけど、それって、私がシスタに我慢を強いているってことだよね」
「ちが──!」
「そうだよ! 私、シスタが暴力を振るわれていたって知らなかった! それってシスタが口止めをしていたからでしょ! そうだよね、ニーファ!」
ニーファは言いにくそうに、申し訳なさそうに顔を背けた。
「……はい」
「ニーファさん……」
「私はこの一週間、想定よりは比較的平和に過ごせたと思っていた。陰口とかは防げないにせよ、シスタもリシアも手は出されていなくて良かったと思っていた。でも、実際は違った。二人とも私の目の届かない所で手を出されているし、シスタに至っては大きな怪我をした。でもシスタは私に心配させない為に平気なふりをするし、口止めもしていた。それのどこが、我慢を強いていないってなるの。どうして私を頼ってくれないの。頼ってよ、頑張らせてよ、私に守らせてよ。じゃなきゃ、私は何のために生きてきたのか分からなくなる」
「……すみません」
「すみませんじゃ分からないよ。私、シスタのこと何も分からない」
「……すみません、本当にすみません。私ももう、どうすればいいのか分かりません」
シスタはそう言って、涙を流し始めた。
「じゃあ、もっと分からない私はどうすればいいの? 教えてよ」
「ヴィリアラ様、そのあたりで止めにしましょう。ヴィリアラ様もシスタ様も気が動転しておられるようですので」
キリがないと思ったのか、ニーファはやや強引に私達の間に入った。
「……そうかもしれない。ごめんシスタ、今日はもう戻るよ。話したこと、気にしなくていいから」
私はニーファに連れられるように部屋へと戻った。




