好きな人?
この気まずい空気をどうにかしようと思ったのか、ネイトは不自然にテンションを上げてきた。
「つ、次行こうな、次! ヴィルは年上と年下どっち派だ⁉︎」
「年下」
「即答かよ」
「年上も良いですよ! ヴィリー様!」
「年下ならともかく年上がこれだよ。絶対に年下」
「酷い!」
「はい、次。さっさと終わらせて」
「お! 乗り気になってきたか!」
「いや、このままじゃ午後の実習始まるし。ソルシー、一応ここの教師でしょ? ここで飲食する許可出してよ」
「今日は非番なので教師じゃないです。諦めて下さい」
拗ねてるよこの人。私の首に抱きついて大の大人が本気で落ち込んでる。
「まあいいけど。はい、あとは何聞きたいの?」
「たしかに一つ一つ聞いてたら時間なくなるな。なら、聞きたいことだけ聞くか。ヴィルは好きな奴とかいんの?」
「シスタとラウザ。あとニーファも好きだよ」
「ヴィリー様私は〜」
「はいはい好き好き。もちろんリシアも好きだよ」
「あ、ありがとうございます」
「僕は⁉︎」
「好感度マイナスだって言ったじゃん。何言ってんの」
「むー」
「そんな顔しても無駄」
よし、これで終了。っと思ったが、どうやらネイトは納得しなかったらしい。
「ちっげーよ! 俺が聞きたいのは恋愛の意味だ!」
「それはいないって分かるでしょ」
「今まで一度もか?」
「一度も」
「少しでも良いなと思った奴いねーのか? 侍女にも居ねーのか?」
「そんな目で見てないし」
「勃ったことぐらいあるだろ?」
「ない」
そもそも生えてないし。てか女子の前でそんな話するな!
「お前、恋愛に関しては他人に興味を持たない王子の方がマシなレベルだぞ」
「なぜ僕を引き合いに出す」
「うわっ! いたのかよ」
王子はいつの間にか私達の後ろの席に座って、さも興味ありませんよと言いたげに本を開いていた。
「何でいるの」
「君が人に興味を持てと言ったのだろう」
王子はそう言って私を見る。
「いや、だからってなんでよりによってこんな話なの」
「恋愛話というのはそれなりに人が分かる話の一つだ。君らの人となりを見るには丁度良い」
「なら王子も参加しろ! 俺らだけは不公平だ!」
「なぜ──」
「恋バナに理由なんて存在しねえ! ただ俺らの話を勝手に聞いていた分王子も参加しろ!」
「いや、大半は私の話なんだけど。……よくよく考えたら恋バナで私だけって不公平だな。リシアとかいないの? 好きな人」
とりあえずストーリー的にはどこまで進んでるかの指標になるし。
「僕はボスが好き!」
「聞いてない」
「私もヴィリー様好きですよ〜」
「知ってる? 教師と生徒の恋愛は禁止されてるんだよ」
「でも師匠と弟子の恋愛は物語では王道ですよ」
「現実とは関係ない。てか今はリシアの番! それで、リシアはいるの? 好きじゃなくて気になってる人でもいいよ」
「え、あ、えっと、その」
リシアって割と顔に出るよね。顔真っ赤になってるから答えなくても分かるよ。
「いるかいないかと言われますと、います……」
「そうなんだ。どんな人?」
「え⁉︎ あ、そうですね、一言で言いますと優しい人ですね」
「優しい人か〜。とりあえずお前らはないな」
「俺は優しいだろ⁉︎」
「僕だってこんなに可愛くて優しいのにその言い方は酷いよボス」
「少なくとも僕は君らのようにすぐ感情的にならないから優しいといえるだろう」
こいつら優しいの意味知ってるのかな? 知らないだろうな、哀れ哀れ。
「その人って学園にいる人ですか?」
「そうですね」
学園にいる人で優しい……。可能性としては生徒達がありえるな。以前シスタとリシアを庇ったことあったし。
「ヴィリー様ですよね、リシアさんが気になっている人って」
「へっ⁉︎ え、あの、その、えっと」
「ソルシー、リシアに失礼だよ。そんな風に断定して言われたら、リシアだって違うって言いにくいでしょう。特に本人の前では。ごめんねリシア」
「あ、えっと、いえ……」
うん? なんか元気なくなってる。……あ! 私がリシアに好かれるのが嫌っていう風にも取れちゃうか。いや、取れるか? うーん、でも自分基準で相手のことを考えちゃ駄目だし、一応そっちの線でフォローしておこう。
「でも、リシアに好かれる人は幸せだね。リシア凄く良い子だもん、ちょっと羨ましいな」
よし、完璧なフォロー。これで誰にも文句は言わすまい! いやー、我ながら惚れ惚れしちゃうよ。




