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幼女の異世界転移録  作者:
強者激突編
39/64

幼女はクランに参加する➂

なかなか執筆が進まず申し訳ありません。

頑張ってペースを上げられるように努力します。

「ユリスはいいわよね。人気者で……」


 現在クラン一同は、港町ラクスを出て南下していた。

 今は踏み慣らされた道が伸びる草原を進んでおり、これより南はゴツゴツとした岩場に出るらしい。突然変異で巨大化した魔物は、その岩場の方へと向かったとの報告であった。


「あはは……ナナちゃんだって戦闘が始まれば嫌でも目立って注目されますよ」


 ちょっと拗ねているナナに、困りながらユリスはそう答える。

 道を進む中、二人は列の後方に付いていた。前を歩くのは隊長や近距離戦闘を得意とする冒険者、十三名。その後ろを魔法や弓などの遠距離攻撃が得意な冒険者、五名がついて行く。ナナとユリスはさらにその後ろであり、いわゆる最後尾だった。

 特に隊列などは決まっていないが、いつ戦闘が始まってもすぐ対応できるように得意な位置を固定したまま進んでいた。


「もうさ、こんなクラン抜けて私達だけで魔物を討伐した方がいいんじゃない? みんな私の事、ただの子供だと思ったままだしさ~」


 ナナが面白くなさそうにぼやいていた。

 そんな時、先頭を歩いていたスキンヘッドの隊長がナナの所まで下がってきた。


「おい、ロック!」

「ナナですけど!?」


 数字を一つ減らされたような呼び方に、速攻でツッコミを入れる。


「俺は人の顔と名前を覚えるのが苦手なんだ! 気にするな!」

「気にするわよ!! ここじゃ私ってかなり浮いてると思うけど!? それでも覚えられないって隊長としてどうなの!?」

「そんな事はどうでもいい!!」

「えぇ~……」


 サングラスをかけた迫力のある顔にプラスして、大きな声で強引に黙らせようとする隊長であった。


「もうすぐで突然変異の魔物が入り込んだ岩場へと到着する。お前達はこのまま後方で待機だ」

「ええ~! 私を前衛で戦わせてよ~」


 ナナが口を尖らせる。しかし隊長は大きく首を振った。


「ダメだ! お前の実力が分かるまでは危険な前線に出す訳にはいかない! まぁ剣美が代わりを頼んだという事もあるから頃合いを見て手ごろな魔物と戦わせ、それで判断する。それまでは後方でサポートをしていろ」

「融通が利かないと思いきや、意外と部下想い!?」

「わかったな! これは隊長命令だ! 破ったら罰則だからな!!」

「やっぱり強引でたちが悪い!?」


 むぅ、と口をへの字に曲げるナナを無視して、隊長はユリスに視線を移動させた。


「次にお前だ、エロス!」

「ユリスですけど!? セクハラですか!?」


 流石のユリスもマッハで間違いを指摘していた。


「そんな事はどうでもいい!」

「えぇ~……」


 相変わらずの強引さにユリスも戸惑いを隠せない。


「お前は回復魔法が使える。よって後方でいつでも仲間の傷を癒せるようにしておけ。前衛で負傷した者はすぐに後方へ避難させる」

「つまり私とナナちゃんは二人揃って後方待機ですか……」


 隊長は頷き、ユリスはナナを前衛に置いてくれない事に困り顔をしていた。

 そんな時だ。


「それで? そろそろどこで待つか決めたら?」


 そうナナが言った。


「ん? なんの話だ?」


 隊長が聞き返す。

 するとナナは周りをグルリと見渡しながら言った。


「小動物どころか、小さな虫もいないわよね? みんなびっくりして隠れているのよ」


 隊長もナナの視線を追うように周りを見る。

 確かに、ここ最近は暖かくなり羽虫も出てきているというのに、この草原では一匹も見ない。


「びっくりしてと言うのは、俺達が来た事に対してか?」

「はぁ? まさか本当に気が付いてないの? 魔物よ! 多分私達が向かおうとしている南から大量の魔物が押し寄せてくるわ。早くどこかに陣取って隊列を整えた方がいい」


 そうナナが言った瞬間に、ユリスも、隊長も、その近くにいたメンバーも表情を強張らせた。


「虫がいないのは偶然だろう。それだけで魔物が攻めてくるかがわかるものか」


 しかし、ナナはビシッと真下を指差した。


「地面、揺れてる」


 隊長はさらに首を傾げた。彼には今、地面が揺れているなんて事は言われても気付かなかったのだ。


「おい、全員止まれ!」


 しかしナナの真剣な表情を見て、隊長はクラン全体の足並みを止める。

 そしてそのまましゃがみ込んで、地面に指をそっと置いた。

 人の指先というのは細かい神経が多く集中していて割と敏感である。その指先に感覚を集中して、隊長は地面に伝わる揺れを感知しようとしていた。

 そしてそのまま十数秒の間、沈黙が続いた。


「確かに揺れている……この微細な揺れを歩きながら感じ取るとは、お前……」


 ナナに対して隊長は、不思議なものを見るような目で見つめていた。


「いや、そんな事はどうでもいい! おいお前ら!! もうすぐここに魔物の群れがやってくる! 今俺達がここで殲滅させないと、北にある港町ラクスに流れ込んでいく事になる! なんとしてもここで殲滅させるぞ!!」


 隊長の指揮でクランメンバー全員が一斉に自分の武器を抜き、身構える。

 前衛がゆっくりと前進して、地面が少し盛り上がっている丘の上に陣取った。その10メートルほど右方向で、さらに地面が切り立って高くなっている小規模な高台の上に後方支援組が移動する。


「いいか、取りあえずお前達は見学だ。数を減らしてからお前の実力を計れそうな魔物と戦わせてやる。それまでは後衛の手伝いをしていろ!」


 隊長はナナにそう言い残し、前衛の方へと向かって行く。

 そのさらに前方100メートルほど先には、徐々に土煙を上げて迫り来る魔物の影が浮かび上がってくるのであった。

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