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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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49 死んだエルフたちは無念の思いをンマゾネスに託す

「え? でも、アダム()もジェフリー様と共に戦いたいのです」


「その気持ちは嬉しいが、今の体力では無理だ。今は休養しろ。体力が回復したら戦列に加わってもらう。頼りにしてるんだぜ。アダム。長老、アダムを休ませてくれ」


「ああ、入眠作用のある薬草粥を飲んでもらう。早く寝れば早く体力回復するからな」


「頼んだぜ。長老」


 ◇◇◇


「さて、こっからは真剣にやらにゃ。すまんがアミリアにンマゾネス、ジェフリー()から離れてくれ」


 ジェフリーのその指示にアミリアはすぐ離れた。

「ジェフリー兄さま。アダム君の情報は確かですね。北北西から禍々しい気を帯びた艦隊が近づいてきている気配がします」


「ああ、それはジェフリー()も感じていた。おい、ンマゾネス。もう離れてくれよ」


 ンマゾネスはその言葉にあわててジェフリーから離れる。

「すまない。ンマゾネス()ジェフリーとアミリア(二人)にように禍々しい気や艦隊を感じる力はないのだが、別の念をたくさん感じていたんだ」


「別の念?」


「ああ、何だか同じエルフ(仲間)ンマゾネス()に言ってきているようなのだ。無念の思いを晴らしてほしいと(かたき)を取ってほしいと」


 ◇◇◇


 アトリ諸島にいる全ての人間(ヒューマン)、エルフ、ドワーフが集められ、臨戦態勢に入った。


「敵は国軍でシップ一隻にガレオン五隻。こっちはガレオン四隻に商船(キャラック)二隻。戦えない数ではないが、こっちが不利だ。しかも相手は国軍だ。だから、艦の大砲を全部下ろして島に取り付ける。大砲外した艦は他の島に逃がせ。艦同士の撃ち合いだとこっちが沈められるが、島は沈まない。危険だがこれで勝負するしかない」

 

 ジェフリーの言葉にみなは頷き、大砲の島への設置は急ピッチで進められる。もっとも先日海賊に島が襲撃された経験から既に島の防備もある程度整っては来ていた。海岸には石垣が構築され、既にいくつかは据え置きの大砲がある。


(しかし、それでも)

 ジェフリーは考える。

(敵はプロの軍人。こっちは海賊と一般人だ。きついのは変わらん。それに)。

(また、敵が魔族(デーモン)の精神的支配を受けているとなると魔法力を付加した武器でないで戦えないということになる。こっちは魔法が使えるのはジェフリー()とアミリア、後はアダムが戦列復帰したとしても三人。島を囲むように攻めてこられると厳しい。でもその事態も想定しとかないとな)。


 だが状況はジェフリーの予想とは違った形で展開した。


 ◇◇◇


「来たっ!」


 レオニーを随行させ、ヒューゴーが指揮するイース王国第一艦隊は肉眼で視認できる距離までアトリ諸島に接近した。


(でも変だぞ。シップ一隻にガレオン五隻は事前情報とおりだが、もう一隻いる気配がする。しかも、その艦からは禍々しい気配がしない)。

 ジェフリーは監視塔の上にいる監視兵に念話で声をかける。

「シップ一隻にガレオン五隻の他にもう一隻艦が来てるか?」


「来てます」

 監視兵からすぐ返答が来る。

「ラ・レアルが一隻来てます。イース国旗を掲げています。敵旗艦のシップに接舷しようとしています」


(どういうことだ?)

 ジェフリーには知る由もなかったが、海軍大臣クレア公爵が急遽出した『攻撃中止。即時帰港』の命令書を持ったラ・レアルがついに追いついたのだ。


 旗艦シップへの接舷に成功し、命令書を司令官ヒューゴーに渡さんとしたラ・レアルの乗員だが、彼らには凄惨な運命が待っていた。


 レオニーの精神的支配を受けたシップの乗員は沈黙したままラ・レアルの乗員たちに斬りかかったのである。それもシップに移ってきた者ばかりではなく、ラ・レアルに残った者たちにまで。


 ラ・レアルの乗員たちは対応のしようがなかった。同じイース王国海軍の軍人からいきなり無言の攻撃を受けるなどということを予測出来るわけがない。


 多くの者が何が起こったか分からないまま殺されていった。それでも同じイース王国海軍軍人ではあるが、シップの乗員は、瞳に狂気を帯びていて、まともな状態でないことが分かってくる。


 そこへジェフリーの念話が飛ぶ。

「聞こえるか? 『姿なき海賊団』頭目ジェフリーだ。シップの乗員は魔族(デーモン)の精神的支配を受けている。会話は出来ないし、普通の武器では倒せない。艦を捨てて、海に飛び込めっ! 泳いでアトリ諸島(こっち)に逃げてこいっ!」


 念話を聞いた者たちは次々海に飛び込むが、間に合わなかった者たちは更に殺された。


 やがて、殺されるか逃げ出すかで乗員が全ていなくなったラ・レアルだが、不思議とイース王国第一艦隊はそれを接収しようとはせず、放置したままアトリ諸島への接近を再開した。


 ジェフリーにとって、それは不可解なことだった。また、てっきり散開し、島を包囲しにかかると予想した艦隊が一団になったまま、アトリ諸島(こちら)の港に直進してくるのも理解に苦しむ。


(いや今は相手の意図を考えている場合ではない。相手がこちらの最大射程に入ってきたら砲撃だ。それまでにジェフリー()とアミリアで出来るだけ砲弾に魔法力を付加しておかなくては)



次回第50話「死んだ仲間の思いを背負いンマゾネス突撃 従うはアミリア」

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