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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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44 三番目のライバルが最強か

「はい?」

 ジェフリーは抱きつかれ、茫然自失のまま反射的に聞き返した。だが、ンマゾネスは全く動じない。

ジェフリー(おまえ)ンマゾネス()の婿にしたのだっ!」


 茫然としたのはジェフリーだけではない。ノアもンジャメナも、そして、アミリアもだった。


 ◇◇◇


 それでも一番早く立ち直ったのはやはりアミリアだった。

「えーと、ンマゾネスさん。結婚は両者の合意をもってするものです。しかし、ジェフリー兄さんは頷いていません。よってこの『結婚』は無効です」


「そうか。でも、ンマゾネス()ジェフリー(こいつ)のことが大好きだぞ」


アミリア()だってジェフリー兄さまのことが大好きなんですっ! ンマゾネス(あなた)よりずっと前から」


「そうか。でも、ンマゾネス()ジェフリー(こいつ)のことが大好きだぞ」


アミリア()だってジェフリー兄さまのことが大好きで結婚したいんですっ!」


「そうか。でも、ンマゾネス()ジェフリー(こいつ)のことが大好きで結婚したいのだっ! と言うか、するのだっ!」


 とりつく島もないとはまさにこういうことを言うのだろう。


(手強い)。

 アミリアは思った。今までのライバルであるエリザやフラーヴィアも手強かったが、はるかにその上を行く。


 だが、負けてはいられない。

アミリア()はジェフリー兄さまのことが大好きで結婚しますっ!」


 アミリアは宣言した。しかし……


「そうか。でも、ンマゾネス()ジェフリー(こいつ)のことが大好きなので結婚するっ!」


 ンマゾネスも宣言した。


 ノアはンジャメナに問うた。

「なあ、ンジャメナ。ンジャメナ(おまえ)ンマゾネス(姉さん)、ああいう方なの?」


「ああ、言っただろ。ンマゾネス(姉さん)には常識というものが一切通用しないんだよ」


 今度はンジャメナがノアに問うた。

「なあ、ノア。私たち、後何回こういうジェフリー(お頭)の異様なモテっぷりに巻き込まれるんだろうね?」


ノア()ジェフリー(お頭)とは大概長い付き合いだが、こればっかりはさっぱり分かんねえよ」


 ◇◇◇


 その女エルフは一際大きな悲鳴を上げると動かなくなった。


 茨の鞭でその女エルフを打ち続けていた男は下卑た笑いを浮かべると、動かなくなった女エルフを放置したまま、その地下室を出た。


 扉を開けた先では老執事らしき男が不安げな顔で男を待ち構えていた。

「坊ちゃま。まさかと思いますが女エルフは?」


 男はぶっきらぼうに言い返す。

「執事か。ああ死んだ。後始末しておけ。そして、また新しいのを仕入れてこいっ! 今度はもっといたぶり甲斐のある奴を買ってこい。金はあるんだろ?」


「そんな殺生な」

 老執事は泣きそうな顔になった。

「先進七ヶ国間で奴隷貿易を禁ずる紳士協定が締結されてどれだけ経つと思ってるんです? もう闇市場でも売ってませんよ」


「うるさいな。老執事(おまえ)は俺の命令を聞いていればいいんだよ。グダグダ言うなっ!」


 不機嫌そうにその場を立ち去らんとした男を遮ったのは十五歳くらいの少年だった。

「兄さんっ! まだエルフをなぶり殺すのを止めていなかったんですかっ! 執事ももう奴隷は買えないと言っているし、今度こそ止めてくださいっ!」


「うるさいぞ。次男坊の分際で次期公爵の俺に生意気言うなっ! 売るエルフがないなんて話はな、奴隷商人が売値を上げるために言ってるだけなんだよっ! 『金に糸目は付けない』って一言言ってやりゃあなっ! いくらでもエルフ(売り物)は出てくるんだよっ!」


「本当にもう奴隷は売ってないんですよお」

 泣き顔のまま老執事が追いかけてくる。

「こないだも海賊が奴隷貿易の拠点港だったガシェウ港の奴隷商人の組織を叩き潰してしまったそうで、次の入荷があるかどうかも分からないそうなんですう」


執事(おまえ)、頭大丈夫?」

 男は嘲るように言う。

「何で海賊が奴隷商人を潰すような得にもならないことをするわけ? 馬鹿言ってんじゃないよっ!」


「兄さんっ!」

 弟たる少年がまたも声を張り上げる。

「本当に海賊が奴隷商人を潰したのなら、それは功臣でしょう。イース王国(我が国)の海軍に編入すべき人材です。そして、兄さん。イース王国(我が国)のエリザ女王陛下が先進国元首の中でも一番奴隷貿易を嫌っていることはよくご存じでしょう。こんなことを続けていたらクレア公爵家(我が家)は取り潰しの憂き目に遭いますぞ」


エリザ女王(あの女)クレア公爵家(我が家)を取り潰すことなど出来るものかっ!」

 男も負けじと声を張り上げる。

「我が父は現役の公爵である上、イース王国(我が国)の海軍大臣でもあるのだぞっ! そんな家を潰せるわけがないだろうっ!」


「父が海軍大臣だからこそ、我ら兄弟は襟を正し、奴隷貿易なぞに関与してはならないのではないのですか?」


「俺はそう思わぬな。海軍大臣たる父上は国軍を使い、奴隷商人を潰すなどというふざけたことをする海賊をこそ討伐すべきなのだ」


「馬鹿な。国軍は父上の私物ではありませんぞ。そのような勝手が通るはずがないっ!」


「もういいっ! 執事っ! 新しい女エルフを買ってこいっ! 十日以内にだっ! いいかっ、これは『命令』だっ! そして、(ウォーレン)っ! 貴様とはもう会話したくないっ! とっとと夜会で婚約者を見つけて、クレア公爵家(この家)を出て行けっ!」






 

次回第45話「レオニーは異常性欲侯爵令息を誘惑する」

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― 新着の感想 ―
[一言] 海軍大臣がかなりの強硬姿勢ですね (;^_^A
[一言] 話が通じない人が多いなあww
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