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ウ○コの力 -能力がクソだけど、なんだかんだでキャッキャもてはやされたり尊敬されたりして幸せに過ごす物語-  作者: フェフオウフコポォ


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12話 恋慕


「タツ様~♪」

「はい。」


 ……


「タツ様ぁ~♪」

「はい。」


 ……


「タツ様ぁ~ん♪」

「はい。」



 オアシスへ向かう道すがら、テッサの様子がとてもオカシイです。

 日が傾いて歩きやすくなった砂漠とはいえ、未だクソ熱いというのに、


 くっついては離れ。

 そしてまたくっついてを繰り返しています。


 いや。可愛いからいいんですが。

 『……ここ砂漠やで? テッサさん。』

 と思わないでもないです。はい。



--*--*--



 ブラス砦で、

「父と弟、そして母のかたきを君が討てばいい。

 ……同じ苦しみを与えてやってもいいし、刺しても、切っても、このまま見殺しでも、気の済むように好きにすればいい。」

 と、テッサに全てを託すと、テッサは瀕死のドウェインの周りの燃料に火をつけた。


 そして……二人でドウェインが確実に死ぬのを見届けた後、証拠隠滅も兼ね、ちらばっていた牛糞ケーキにも火をつけていくと、砦はまた燃え始める。


 テッサは積年の恨みを晴らした事に満足しきったのか声をかけても放心状態になっており、肩を貸しながらポーワンと女奴隷を解放しにいき、4人でドウェインの野営地へと向かった。


 野営地にてドウェインが不幸にも事故死(・・・)したことを話すと、ドウェインの従者や奴隷達は全員が喜びを前面に押し出し、ドウェイン用に用意された豪華な食材を使ってパーティが開かれる事になり、テッサの放心状態やオアシスへの移動も厳しい時間帯だった為、テッサと共にそのパーティに参加させてもらうことにした。


 従者や奴隷達は、これまで恐怖と力で押さえつけられていた感情がドウェインの死によって爆発したのか狂喜乱舞に近い様な賑やかさとなり、皆が酒を飲み、そして食らい、それはそれは賑やかなパーティになった。


 テッサの話を聞き、そして実際に少し話をしてドウェインの人となりはある程度理解していたが、ここまで死を喜ばれる人間はろくなもんじゃない。


 そう苦笑いをしながらもパーティを楽しんでいると、程なくパーティも終盤に入ったと思える程に酔い潰れた者や、眠りにつく者が出始めた。

 おおよそ飲みなれない量をあおったのだろう。

 だがそれを咎める者はいない。


 人を殺しておいてなんだが、温かい気持ちになりながらその光景を眺めていると、その頃から隣に座っていたテッサが私をじっと見つめてくるようになっていた。


 凝視に近い……というか、わざわざ見なくても『見られてる』と感じる程に力強く私を見ているテッサ。

 私はこれまでに無かったテッサの反応を珍しく思いつつ戸惑っていると、突然テッサが覆いかぶさるように襲ってきた。


 あ、うん。


 性的に。


 まぁ、あれです。ぼかそうにもぼかしようがないけど、ドウェインのテントで何と言いましょうか、夜通しといいましょうか、それはもう大変なことになりましてん。


 かなり長い時間テントを独占したような感じになったようにも思うけれど、テッサが眠りについた頃に、ちらっとテントの外に顔を出すと、ポーワンが

 『とてもとてもお楽しみでしたね。』

 的な顔してました。はい。


 恥ずかしさを隠しながら、ポーワンには『砦の機嫌云々で死ぬかもよ』と伝えていた事を思い出し『砦は今焼き払ったから砦も沈静化する』と、有無を言わさないように納得させ、そしてブラス砦の攻略、ゾンビ討伐の手柄は『先遣した私達手練れ達にある』という事を街に戻ってから領主なりに伝えるよう言付けると快く了承してくれた。


 どこか晴々とした雰囲気のポーワンに、少し気になったのでドウェインの従者や奴隷達は今後どうするのかと問うと、従者らはそれなりに学があるようで、また仕える人間を領主を頼って探すらしく、奴隷達は皆、従者達に従うとの事で無暗に鉱山に送られるような事はなさそうで少し安心した。


 その日はテッサと二人でテントを使わせてもらってぐっすりと眠り、翌日ドウェインの元従者たちと骨になったドウェインを確認しにいくと、骨となったドウェインの下に指輪と思わしき赤色の宝石が3個程落ちていた。

 私だけが気づいたようだったので、こっそりと頂き、骨となった主人を持った従者たちと別れ、オアシスへ向けて足を進め……ての、このテッサの有様である。



「……ねぇ。テッサ。」

「はいっ! なんでしょうタツ様!」


「昨日から様子がなんかおかしいけれど……その大丈夫ですか?」

「もちろん大丈夫ですっ!

 心も体もまるで羽が生えたかのように軽く、そして熱く燃え上がっていますっ!」


 うん。これはいけませんね。

 無駄にハイになっています。

『これがハイってヤツかァァアっ!』状態ですね。


 昨日もまるで獣みたいになってて少し怖かったし……


 ……まぁ積年の恨みの募った敵を討てたのだから当然かもしれないけれど、体力を無駄に消耗しないように気をつけないと……


「タツ様? タツ様!

 何が熱く燃え上がっているのか聞いてくださらないんですか?」


「ん? え、あ。 ……はい。

 何が燃えているんですか?」


「タツ様への思いですっ!

 私はこれまで生きてきて初めての感覚です!

 身も心も、全てタツ様の物になりたくて仕方ないんですっ!


 好きです! 愛してます!

 私を貴方の物にしてください!」


 思わず歩みを止め、テッサを見る。

 テッサはこれまでに見たことの無いような目の奥にしっかりと光を宿したような目でしっかりと私を見ている。


「……え?

 …………マジデ?」

「私は本気ですっ!

 タツ様以外の物になるくらいなら、貴方の前で死んで見せますっ!


 ……正直に申し上げて初めてお会いした時に、タツ様が私に『惚れた』と言ってくださった時は、心は動いておりませんでした……でも、今はあの時の言葉を思い出すだけで、心が打ち震えます。

 ……あぁ、私はなんという幸運なのでしょう。愛しております! タツ様! タツ様ぁ!」


 抱きついてくるテッサ。

 そして初めての相思相愛という関係に、私の心も熱くなるのを感じ、口を開く。


「……私もテッサの事が好きです!」

「あぁぁっ! タツ様~♪」


 と、砂に押し倒され唇を貪られるのだった。



 …………


 ……


 獣や。


 獣がおる。




--*--*--




 アイーダは心配で胸が張り裂けそうだった。


 魔法使いと話をすると言ったタツに強く命じられてオアシスに移動したはいいが……心は休まらない。

 タツに無事に生きて帰ってきてほしいと思っているからだ。


 『死んでほしくない』


 その気持ちからタツに逃げようと提案したが、タツは残ると言い、デニスに私を避難させるように頼んでくれた。

 その行動は、私の無事を思っての配慮で嬉しかった。

 ……でも一緒に来てくれたのならもっと嬉しかった。


 テッサも復讐の為に残ると言っていたが……テッサは例え死んだとしても、復讐の為に散るのであれば悔いはないだろう。


 でも私はまだ生きていたい。

 可能ならばタツと共に。


 タツは、私が生き延びる最後のチャンス。

 そして私を幸せにしてくれる人。最後の希望だと思う。


 また普通の女に接するように『好きだ』と耳元で愛を囁いて欲しい。

 普通の女のように過ごす幸せを知ってしまった私が、奴隷女として生きていくのは……もう……辛すぎる。


 手を合わせ、タツの無事を祈っていると各衛星都市から派遣された手練れ達の話声が聞こえてくる。


「あ~あ……タダ働きになっちまったな。」

「タツとかいう小僧……無駄死にだろう。」

「まぁ、俺達は命があっただけめっけもんだ。」


 ……私自身、魔法使いの男の接待で相手をしたこともある。

 が、彼らの横柄さと凶暴さを知っていれば、タツとの未来を想像する事が苦しくなる。


 もしかすると、今、火の魔法使いに苦しめられているかもしれない。

 そう考えるだけで胸の痛みを感じる。


 その胸の痛みの中に、テッサの復讐の為にそんな恐ろしい魔法使いの相手をすることを決めたという事実も顔を出し、


 『もしかして、私よりもテッサを好きなのでは?』


 という思いが生まれる。

 その思いは痛みを呼び始め、頭を振って打ち消す。


 自分より若く美しい女、テッサ。


 ……でも、テッサはタツの事を好きじゃない。


 私の方がタツを好きな事は、これまでの生活からタツに十分に伝わっているはず。


 だから大丈夫。


 タツは私の事が好き。


 テッサの復讐を手伝うのは『少しの情』と『手柄を横取りされない』為。

 その二つの理由があって手柄の方が大きな理由。


 テッサの事はついで。


 ……だから大丈夫。


 小さく息を吐き、再度タツの無事を願う。


 ……ふと、タツから聞いていたゾンビ討伐の報酬を思い出す。


 『金貨100枚』

 『私とテッサの所有』

 それに

 『2年の休み』


 もしタツが無事に帰ってきて、魔法使いに手柄を渡さずに自分の物にできたとしても……果たしてペラエスの領主が報酬をきちんと払うだろうか……


 領主の奴隷として過ごしていた間に、領主に近しい者の愚痴などに聞き耳をたて手にした情報から考えると、ペラエス領主の評価は『強欲』。


 だから、まず『金貨100枚』がそのまま貰える可能性は限りなく低い。

 『私達奴隷2人』は……もっと若い奴隷が献上されているし、領主にはもう飽きられているから問題はないだろうけれど……

 『2年の休み』も、きっとすぐに別の依頼を言いつけられる……そうすると、またこんな思いをしなくちゃいけないかもしれない……


 もし、タツが帰ってきたら、テッサに見つからないように領主の事をタツに伝えよう。


 だってテッサはタツの事を好きじゃないから平気で裏切って、あの私を殺そうとしたクソ補佐官にチクるに違いないんだから。


 そう。

 テッサは任務に忠実なただの首輪。


 私はタツの恋人。


 私だけがタツの恋人なのっ!



 …………


 ……



 ……そう思っていた時期が、私にもありました。




「タツ様ぁ~ん♪

 愛してますぅ~」


「おいおいテッサ~。

 恥ずかしいじゃないか、仕方ないなぁ。むふっ、ムフフ♪」


「…………なっ!?」



 オアシスにベタベタしながら帰ってきた二人を見て、開いた口が塞がりません。

 テッサの変わり身も変わり身だけど、ニヤニヤと嬉しそうな気持ちを隠さないような顔もどうなの?


 ねぇ。どうなのかしら? タツ?


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