表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/46

裏切りパーティの墜落(3)『指名手配』

 


 アーク王が娘の大事を聞いて隣国に訪れたころ。

 ホプキンスとババは、かつてエイルを裏切った路地裏に身を隠していた。


 するとそこへ、顔を隠したミザリーも走って現れる。


「どうだった、本当に手配されていたのか?」


「どうもこうもないわよ! これ見てみなさいよ!」


 そう言ってミザリーは三枚の手配書を地面にばらまく。


 二人が拾い上げると、そこには自分たちの精巧な似顔絵と、つかまえた者に手渡される賞金が記されていた。


「クソッ! なんで俺たちが指名手配されてんだ!?」


「私たち、何もしてないわよねぇ!?」


 疑問をホプキンスにぶつける二人。

 だが彼も、なぜ手配されているかなど見当もつかない。


 理由が明記されていないため、彼等も聞くしかないのだが、自分たちが犯罪者として追われている理由など聞けるはずもない。


 仕方なく三人は、顔をよせ合って知恵をしぼる。

 そして弾き出した結論は、一つしかなかった。


「俺たちが最近やったことといえば」


「……ああ。クエストだろうね」


 視線をあげてホプキンスが告げる。


 顔も知らぬ謎の御曹司から頼まれた、モンスター百体を金貨三千枚で買い取るという、今になって考えれば怪しすぎるクエスト内容。


 思い当たる原因はこれしかなく、三人は肝を冷やす。

 そして彼等の考えは、やがてどう罪を逃れるかに至る。


「お、お金を返せばいいんじゃない?」


「すでに契約してしまっているし、向こうは俺たちの情報を握っている」


「だったら素直に自首すればいいんじゃねーか? 俺たちは手伝わされただけって」


「けっきょく罪には変わらない。それに」


 ぼそりと返したホプキンスは、額に汗を伝わせる。


「あれだけの資金力のある依頼者だ。金を返そうが自首しようが、不信感を抱かれたら最後、俺たちに未来はないだろうね」


「そんな……」


 彼の冷静かつ残酷な一言に、ミザリーは膝から崩れ落ちる。


 罪を逃れる目も逃げる目も同時に潰された。

 彼等にとって残された選択肢は、ただ一つだった。


「御曹司とやらに、永遠に従って生きていくしかないようだ」


 諦めるようにホプキンスが言った時だった。


 かつてエイルとマシェリが追われていた時のように、路地の道を白づくめの人々が塞ぎ、三人の逃げ場を奪う。


 警戒したホプキンスたちは、三人で背中あわせになる。

 自分たちの武器に手を伸ばしながら警戒する三人。


 だがそれを制するように、白装束しろしょうぞくの集団から、御曹司の使者が現れる。


「賢明な判断をしたようだな、君たち」


「テメェは!」


 現れた使者に拳をむけようとするババ。

 それをホプキンスは制し、彼へ歩み寄っていく。


「迎えに来たということは、多少は罪の意識があるようだね」


「まさかこちらも、ここまで計画を踏みにじられるとは思っていなくてな」


 使者を不敵に挑発するホプキンスだが、相手は全く動じない。

 すると使者は、うしろに控える白服の一人に指示をだす。


 すると彼等は大きなズタ袋を三人に投げ、それをふまえて使者が口を開く。


「契約金だ。一人につき金貨三千枚」


「さ、三千枚!?」


 言い渡された金額におどらされ、手を伸ばすミザリー。

 だがホプキンスは、彼女を視線で牽制する。


「千枚だろうが三千枚だろうが、自由に使える金でないなら意味はない」


「ハッ!? そ、そうね」


 ホプキンスの言葉にミザリーは我にかえり、鋭い視線で使者たちを見つめる。


 すると使者は、彼の言葉に枯れた声で高笑いした。

 そうしてニンマリと歪めた笑みで語りだす。


「日の当たる世界だけが本当の社会ではない。我々のような『結社』が身をせる裏側の世界に来れば、多少物価は高いが自由もある」


「裏側?」


「ああ。キミ達には我々の商売相手として、こちら側の世界に来るか提案しに来たのだよ」


 身振りを加えながら、使者は三人を誘惑する。


 言わば渡された金貨は、助かる代わりに地獄へと繋がる蜘蛛の糸である。


 ふとホプキンスは、路地裏から表の通りを見る。

 日の当たる通りでは、一般市民が平和な生活を送っている。


 犯罪の片棒をかつぎ、指名手配されてしまった彼らには、とても歩くことができない光の強い世界。


 ホプキンスは光景を見終え、未練を断つように金へ手を伸ばす。

 だがそのとき、使者が試すように口を開く。


「貴様にとって、モンスターや魔族とはいったい何だ?」


 問いかけに一瞬だけ手を止めるホプキンス。

 彼はすこし考えた後、使者の顔を見て答える。


「なんとも思っちゃいない。ただモンスターは倒せば金になる、いい食い扶持ぶちだ」



「……及第点だ。受け取りたまえ」


 冷ややかに告げられる言葉と共に、三人はズタ袋を取る。

 すると白装束の人々は、ホプキンスたちのまわりに集まった。


 もの言わぬ彼らの雰囲気に、ミザリーは少しおびえる。


 それでも仲間となった彼らに、使者は少し信頼をおいた様子で語る。


「主人は四日後に時間が空く。それまでは我々の用意した場所でのんびり過ごすと良い」


「その時には、キミたちの目的は教えてくれるかい?」


「それは主人のお気持ち次第だ。行くぞ」


 使者の言葉と共に、白装束の集団はパンッ! と一斉に手を叩く。


 その瞬間、彼らはホプキンスたちと共に姿を消し、三枚の手配書だけが路地裏に残った。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


この作品を「面白い!」「もっと続きを読みたい!」と少しでも感じましたら、

広告下の☆☆☆☆☆評価、ブックマークをしていただけますと幸いです。


執筆の励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ