89話─リベンジせよ、サモンマスターズ!
時は少しさかのぼる。ドルトと別れ、キルトたちは街の反対側にある平野に集結していた。この場所でゾルグを迎え撃つのだ。
すでに五人全員、サモンギアをアップデートしてある。前回の実質的な敗北のリベンジをするため、みなやる気をみなぎらせていた。
「いやー、便利だね。ポータルだっけ? あれを使えばどこにいても回収してもらえるんだもの。ボクにも教えてよ、そしたらいろいろ楽になるし」
「習得出来るかしらねー、あんたに。闇の眷属ならともかく、大地の民には難しいわよ? コツを掴むまでが大変だし」
「二人とも、そろそろ来るよ。ゾルグ……今度は絶対に倒してやる!」
緊張をほぐすため、ロコモートとエヴァが他愛もない話をしているところにキルトがそう告げる。左腕の痛みが教えてくれているのだ。
じきに、自分を捕捉したゾルグが現れると。今度こそ、決着をつけるために。
『あまり気負うな、キルト。こちらには数の利を活かせるだけの作戦がある。わざわざサポートカードを一新したのだ、必ず勝てるさ』
「ありがとう、お姉ちゃん。さあ、みんな! 戦いが始まる……構えて!」
「ええ! あんな奴ぶっ潰してやるわ!」
「ああ、任せてくれ。私とゾルグ、どちらの守りが上を行くか……雌雄を決させてもらう」
「ウチも全力やで! アシストはバッチリするさかいな、期待しとってや!」
「ふっふっふっ、腕が鳴るね。さあ、どこからでもかかってこい!」
キルトの声に、仲間たちが応える。そのすぐ後、キルトたちの数メートル前にポータルが開く。その中から、すでに変身を遂げたゾルグが現れる。
「ったく、戦争に行けって言われたと思ったら……今度はトンボ帰りしてキルトを始末しろだとよ。人使いが荒い奴の下につくと苦労するよなぁ。そうだろ? キルト」
「そうだね、ゾルグ。今もたまに思い出すよ、フェルシュにコキ使われてた日々のことをね」
「そうか、だがもう思い出に浸る必要はねえぜ。ここで死ぬんだからな、てめぇら全員! 今度は邪魔は入らねえ、皆殺しにしてやる!」
『ハンマーコマンド』
『フォートレスコマンド』
「来る! みんな、作戦通りに……散開!」
「ラジャー!」
巨大な鎚と兜を呼び出したゾルグは、威圧感たっぷりに足音を響かせながら歩いていく。それを見つつ、キルトは仲間たちに指示を出す。
キルトエヴァが真っ直ぐ前に走り、残るフィリール、アスカ、ロコモートは左右に移動する。包囲するつもりだと呼んだゾルグだったが……?
「いいぜ、来やがれ! まずはてめぇから叩き潰してや……なにっ!?」
「ざーんねん、こっちの狙いはね……あんたへの攻撃じゃないの! キルト、やるわよ!」
「うん! 食らえゾルグ! そのアーマーを使い物にならなくしてやる!」
『サポートコマンド』
先行するエヴァにハンマーを叩き付けようとするゾルグだったが、当たることはなかった。エヴァが跳躍し、彼を飛び越えて背後に回ったからだ。
それを合図に、キルトは四枚、エヴァは五枚全てのサポートカードを連続スロットインする。その結果、九体のカエル型モンスターが現れた。
「ゲコッ、ゲコッ」
「ゲェーコ、ゲェーコ」
「コアッコアッコアッ」
「な、なんだこのカエルどもは!? ん、待てよ? こいつらどっかで見たような……」
「今だ! アシッドフロッグ、一斉攻撃!」
「ゲコォー!」
現れたのは、茶と紫のまだら模様をしたカエルのモンスター、アシッドフロッグの群れ。以前、サモンマスターゴームとの戦いで決定打を作ったモンスターだ。
九体のアシッドフロッグは、キルトの指示を受けて一斉に強酸の液体を吐き出す。その全てがゾルグの身に着ける鎧にかかり、溶かしていく。
「ぐおああっ! そうだ、思い出した! 勇者時代に散々相手したクソモンスターじゃねえか! キルトてめぇ、なにしやがる!」
「何って、そりゃその鎧の強度を落とすためだよ。このためだけに、ほぼ全部サポートモンスターを入れ替えることになったんだからね? 遠慮なく溶かされてよ!」
「クソが、ふざけやがって! こんな酸如きで鎧がごふぉっ!?」
「あら、ホントね。あれだけ浴びたってのに、まだ鎧としての機能を保ってるわ。ま、一応衝撃は通るようになったみたいだし? これでまともに戦えるわね」
アシッドフロッグたちの攻撃を受け、鎧の強度を下げられるゾルグ。一見、見た目は変わっていないが……よく見ると、鎧が一回り小さくなっていた。
外装部分を溶かされたことで、比較的脆い内部が露出したのだ。その証拠に、全力ではないエヴァの一撃を食らってグラついている。
「フン、舐めるなよ。こういうこともあろうかと、ちゃんと対策用のカードを用意してあるんだぜ!」
ハンマーを振るい、消えていくアシッドフロッグたちを腹いせに叩き潰すゾルグ。攻撃に巻き込まれないよう距離を取るキルトたちに、そう得意気に告げた。
腰から下げたデッキに手を伸ばし、輝く鎧の絵が描かれた『リペアコマンド』のカードを取り出す。スロットに挿入し、鎧を修理しようとするが……。
「おっと、させへんでー。ほいっとな!」
『トラップコマンド』
「ぐおっ!? なんだこの糸は! クソッ、ほどけねぇ!」
「残念だったね、ゾルグ。こっちはこの数日、ずっとお前を倒すために作戦を練ってきたんだ。この程度は予想済みだよ!」
「ああっ! てめぇ、たった一枚しかないリペアコマンドを!」
カードをスロットインしようとした瞬間、離れて様子を窺っていたアスカが即座に動く。トラップコマンドを発動し、糸でゾルグを絡め取る。
身動きが出来なくなったゾルグからカードをひったくり、キルトはこれまでの鬱憤を晴らすようにビリビリに破いて捨ててみせた。
自分からカードの枚数をうっかりバラしてしまったこともあり、ゾルグは一転窮地に立たされることに。糸を引きちぎり、短距離テレポートで一旦距離を離す。
「ふざけやがって、でもなぁ! 俺にはまだ武器があるんだ! 二刀流ならぬ二鎚流で叩き潰してやる!」
『ハンマーコマンド』
「死ね、キルト!」
「うわっと、危ない危ない! 二鎚流ね……でも、たった一人で僕たち全員を倒せるかな! みんな、総攻撃だ!」
『ソードコマンド』
「オッケー! いよいよね、たっぷりリベンジさせてもらうわよ!」
『アックスコマンド』
まずはキルトとエヴァが武器を呼び出し、二鎚流になったゾルグに挑みかかる。作戦の第一段階……鎧の強度低下と第二段階……修復手段の封殺は完了した。
残る第三段階、目標は一つ。全員の連携でゾルグを疲弊させ、頃合いを見計らい総攻撃を仕掛けて息の根を止めるのだ。
「舐めるんじゃねえぞ! グリズールナーグル!」
「うあっ! やっぱり、武器が増えると避けきるのは難しいか……!」
「今だ! 死ね、キルト!」
「そうはさせない。お前の攻撃は全て、私が防いでやる!」
『ランスコマンド』
『ウォールコマンド』
「ウチらもやるで、ロコモート! あいつに引導渡したるんや!」
「よし、行くよ!」
『ブレイブコマンド』
攻撃を食らい、吹き飛ばされるキルト。ゾルグが追撃を叩き込もうとするも、そこにすかさずフィリールが割って入った。
分厚い盾で鎚による攻撃を防ぎ、そのまま膠着状態になる。そこに、アスカとロコモートも突撃していく。
「チィッ、多勢に無勢ってやつか。とことん人を舐めくさりやがって!」
「対策を完璧にしてあるんだもの、もうお前の好きにはさせない! このまま一気に攻め崩す! 覚悟しろゾルグ!」
鉄壁の守りを弱体化させられ、修復の手段も封じられた。数の差でも勝てないゾルグに、勝ちの目はほとんどない。
キルトたちの逆襲は、まだ終わらない。彼らにはまだ、切り札があるのだから。




