83話─ロコモートの正体
街へ帰り、監獄にて看守たちやドルトと合流したキルトたち。一部始終を伝えると、お礼の言葉を述べてくれた。
ドルトが手配してくれた宿に向かった一行。部屋に着いて早々、キルトたちは謎のサモンマスター……ロコモートを取り囲む。
なお、看守長から宿の主人公宛ての手紙を貰っており、今回はタダで泊まれることになった。
「はーい、というわけでこれから尋問会をはじめまーす」
「いえーい」
「いえーい」
「いえーい」
「いえーい」
「ちょ、ちょっと待ってくれるかな!? どうしてボクは椅子に縛られているんだい!?」
部屋に連れ込まれたロコモートは、フィリールの早業で椅子に縛り付けられた。もちろん、彼女の得意とする亀甲縛りで。
何故縛ったのかというと、単純にロコモートが信用出来なかったからだ。共闘したとはいえ、素性の知れない相手をそのままにはしておけない。
そこで、相手が敵か味方かハッキリするまでは身動きが取れないようにしておいているのだ。
「さて、それじゃあ一つずつ質問をしていくよ。正直に答えてね? じゃないと……」
「じゃないと?」
「脇腹をおもいっきりこちょこちょする! やめてって言ってもやめないし、気絶しても続けるよ?」
「感謝しなさいよ、キルトの前で拷問なんて出来ないから、こんだけソフトになってるんだから」
「ハハ、そうするよ……」
そんなこんなで、ロコモートへの尋問が始まった。まずは、キルトが代表して彼女に問いかける。オックス領で何をしていたのかを。
「オックス侯爵閣下から聞いたんだけど。君、あちこちで正義の味方を名乗って悪人退治とかやってるみたいだね。どうしてそんなことを?」
「そりゃあ決まっているさ。力を得たのなら、それを世のため人のために振るう。それがボクの目指す正義の味方だからね!」
「ふむ、わりとマトモな返答だな。では、次は我が質問させてもらおう。お前の正体を教えろ。どこの誰なのだ、貴様は」
「えっ! そそそそそ、それは……ほら、正義の味方は正体を晒さないものだろう? だからほら、ボクの素顔とかは知らなくていいんじゃないかなー、なんて」
キルトの質問にはちゃんと筋の通った答えを出したロコモートだが、ルビィの問いに明らかに動揺しはじめる。
よほど素顔を見られたくないのか、冷や汗をダラダラ流しながらそんなことをのたまう。が、それが通るほど甘い相手ではない。
「ほう、あくまでも素性を隠すと? そんなことをはいそうですかと認めるほど、我は甘くないぞ。エヴァ、やるぞ」
「はいはい、ガッテン承知! ほら、おとなしくしなさい! そのマスク脱がすからね!」
「わー! わー! お願い、それだけはやめてー!」
エヴァと二人がかりで、ロコモートの被っている銀色のマスクを脱がしにかかるルビィ。ガッチリ縛られているため、抵抗が出来ず……。
「オラッ! 素顔ごかいちょ……う?」
「うう、ふええ……だから、だからやめてって……言ったのに。うぇぇぇん……」
無理矢理マスクを引っ剥がし、ロコモートの素顔を晒す二人。現れたのは、そばかすがチャームポイントな素朴な顔だった。
ボリュームのある茶色の髪がふわっと降り、メカクレ状態になる。素顔を見られて恥ずかしいのか、ロコモートは泣き出してしまう。
「あーあ、泣かせてもうたで。嫌やなぁ、ものっそい悪いことした気分やわ」
「うう、ひっく……わたし、ブスだから……顔、見られたくなくて……。だから、自分でマスク縫って……憧れの……うう、うわぁぁぁん!!!」
「参ったな、ここまで大泣きすることになるとは……悪かった、このマスク返すから泣き止んでくれ」
「うぁぁぁぁん! びぇぇぇぇ!!」
「ダメだな、全然泣き止む気配がない……ん? どうした、キルト」
自分の顔がコンプレックスなのか、ロコモートは大泣きする。なんとか泣き止ませようとするなか、キルトが動く。
「あの、全然ブスだなんて思いませんよ、僕は。むしろ、素朴な可愛さがあると思いますよ」
「……え?」
「エヴァちゃん先輩、手鏡ある?」
「え、あるけど……はい。何に使うのよ?」
「いいからいいから。ほら、笑ってみようよ、ロコモートさん。泣き顔より、笑顔の方がもっと綺麗だからさ」
予想外の言葉をかけられ、ロコモートの涙が止まった。キルトとしては、本音を告げたつもりでいた。実際、本人が言うほど醜い容貌ではない。
そばかすこそあれど、顔立ちそのものは悪くない……どころか、ルビィたちとは別の方向性で整っている。悲観する必要はないと元気付け、泣き止んでもらおうという魂胆での発言だったが……?
「あ、ありがとうございましゅ……ます。あ、あの、ほんとにわたし……醜くないですか?」
「そんなことないよ? ほら、笑って笑って。うん、いい笑顔! そっちの方がとっても素敵だよ」
「!!?!!???!?!! す、素敵だなんて……わたしの、すがお……ぷしゅう」
「あれっ!? き、気絶しちゃ……ふみゅ!? ちょ、にゃにすりゅのさエヴァちゃん先輩!」
「キールートー! アタシ以外の女に色目使うなんてー! 許さないわよ、お仕置きしてやるー!」
「ちょ、今はそんな状況じゃな」
「我も参加させてもらおう、エヴァ。我という伴侶がありながら、全く……!」
キルトに褒められるとは思っていなかったロコモートは、別ベクトルで恥ずかしさが限界突破してしまったようだ。
顔をトマトのように真っ赤にし、湯気を出しながら気絶してしまった。赤の他人が褒められたのが面白くないエヴァとルビィは、キルトの頬をつまみお仕置きを行う。
「むむ、どうせなら私にもお仕置きしてくれ! さあ、カモン!」
「こんな時にMるんやない! このドアホ!」
「おっふ❤」
案の定、フィリールの発作が始まりすかさずアスカがツッコミを入れる。部屋の中でしばらくわちゃわちゃした後、ロコモートを起こす。
「うーん……ハッ! ここはどこ、わたしはだれ?」
「褒められたのが恥ずかしすぎて記憶が混濁しておるな。ほれ、さっさと思い出せ」
「あいたっ! あ、そ、そうでした……あのあの、わたし、その……ふひっ」
「ゆっくりでいい、落ち着いて話してくれ。まず、君は一体誰なのだ?」
若干混乱しているロコモートにデコピンをかまし、正気に戻すルビィ。アスカにシバかれて元に戻ったフィリールに問われ、メカクレ少女は答える。
「わ、わたしは……プリミシア・センプルトンといいます……」
「ん? センプルトン……まさか、『あの』センプルトンなのか?」
「あれ、知ってるのフィリールさん」
「ああ、センプルトン家は商業ギルドを束ねる豪商の一族として有名だからね。私も何度か世話になってるのだが……まさか、ご息女殿がサモンマスターになっていたとは」
サモンマスターロコモート改め、プリミシアはフィリールの言葉に縮み上がってしまう。素の性格は、かなり臆病で人見知りなようだ。
予想外の正体に、キルトたちはしげしげとプリミシアを眺める。それが恥ずかしいのか、イヤイヤするように首を横に振った。
「み、見ないでください……恥ずかしいです……」
「だそうだ。キルトは見るの禁止だ、こやつの目が途端に艶っぽくなるからな」
「え、なん……ちょ、なんで抱っこするのさお姉ちゃん!」
「ひゃうう……」
キルトに熱っぽい視線を送っていたことに気づかれたプリミシアは、下を向いてだんまりしてしまう。だが、まだ彼女には聞かなければならないことがたくさんある。
「じゃあ、次の質問ね。あんた、どういう経緯でサモンマスターになったわけ?」
「そ、それは……あの、実はですね……」
エヴァに尋ねられ、プリミシアは答える。いかにしてタナトスと出会い、サモンマスターになったのかを。




