81話─鉄壁の不沈艦! サモンマスターオーヴァ!
「死にな、キルト! グリズールナーグル!」
「そんな大振りな攻撃、当たるもんか!」
「あ~ら、それじゃあ鞭でひっぱたいてあげるワ!」
「そうはさせん! ギガスケルガーディアン!」
ルマリーンの街の外にて、キルト一行VSティバたちトリオの乱戦が始まった。ゾルグの放った一撃を避け、反撃を叩き込もうとするキルト。
そこにネヴァルが入り込み、鞭を振るってキルトに攻撃しようとする。そこへすかさずフィリールが割って入り、大盾で一撃を防いだ。
「ありがとうフィリールさん! 食らえゾルグ! ドラグネイルソード!」
「ハッ、そんな一撃でこの鎧が傷付くかよ! 頑丈さには……自信があるんだぜ!」
「うわあっ!」
盾を構えたまま突進し、ネヴァルをフェードアウトさせていくフィリール。彼女にお礼を言った後、ゾルグに斬りかかる。
が、非常に分厚い装甲で覆われた相手に傷を付けることが出来ず、逆にハンマーの一薙ぎで吹き飛ばされてしまった。
「キルト、大丈夫かいな!?」
「大丈夫、ただ飛ばされただけだから……およっと!」
「チッ、尻尾で捕まえてやろうと思ったが……よく避けたもんだな、え?」
「そう簡単には捕まらないよ! アスカちゃん、ロコモートさん、そっちは任せたよ!」
空中で体勢を整え、軟着陸するキルト。そんな彼の元に、忍び寄るモノが。ティバがこっそり尻尾を伸ばして、キルトの足を掴もうとしたのだ。
間一髪気付き、横っ飛びでかわす。直後、アスカがレイピアを構えティバ目掛けて突進していく。
「ガッテン! ほら、そこの虎男! あんたの相手はウチらやで、かかってきいや!」
「ハッ、吠えるなよ小娘。ションベン垂れながら命乞いしろ!」
「おっと、あまり下品な言葉遣いはしない方がいい。レディにモテないよ、そんな人はね! ヒロイックナックル!」
「ハッ、知ったことかよ! ランペイジクロー!」
現在の戦況は、フィリールVSネヴァル、アスカ&ロコモートVSティバ、そしてキルトVSゾルグといった風になっている。
数の利を活かし、キルト側が敵を連携出来ないよう分断しているのだ。とはいえ、それでも油断は禁物。いつ強引に合流するか分からないからだ。
「チッ、面倒くせぇなあ。オレ一人なら、遠慮なくテラーコマンドを使うんだが……味方がいると使いたくても使えねえ」
「なぁにブツブツ言っとるんや? こいつを食らいぃや!」
『トラップコマンド』
「っと、地雷式の罠か! そんなもん、このオレが踏むか」
「踏まないだろうね。でも、そっちに気を取られてたら……ボクの攻撃には注意が向かないよね! 食らいなよ、ヒロイックニーシュート!」
「ぐおっ!」
ティバが持つテラーコマンドは、フィリールのヘイトコマンドと違い効果を及ぼす対象を選べない。そのため、仲間を巻き込まないよう封印しなければならないのだ。
そんな彼に向かって、アスカがサモンカードを用いる。クモの巣に捕らえようとするも、素早く避けられてしまった。
が、アスカの動きを見ていたロコモートがすでに動いており、ティバの背後に回り込んでいた。隙が出来た相手の頭部に、飛び膝蹴りを叩き込む。
『いいぞ、二人とも! そのままノしてしまえ!』
「調子に乗るなよ、てめぇらは俺が叩き潰す! グリズールナーグル!」
「そんなノロい攻撃、当たらないよ! さっきは効かなかったけど、今度はどうかな!? そりゃっ!」
「関節狙いか? バカが、オーヴァアーマーの守りは全身完璧なんだよ!」
先ほどは胸を攻撃して無効化されたため、狙いを変えて左腕の関節部分を斬り付ける。が、比較的装甲の薄い関節部ですら弾かれてしまった。
こうなると、もはや頭部を狙うしかないがそうもいかない。体格の差がありすぎて、まずゾルグの頭を狙うだけで大変なのだ。
「関節もダメ、か! こうなったら、ちょっと無理してでも頭を」
「させねえよ、対策はバッチリだからな!」
『フォートレスコマンド』
ダメ元での関節狙いが失敗した以上、無理矢理にでも頭を攻撃して一撃必殺を決めるしかない。だが、そんなキルトをゾルグがあざ笑う。
デッキホルダーから熊の頭部を模した黒い兜が描かれたカードを取り出し、スロットインする。すると、ゾルグの頭を兜が覆った。
「これでもう、頭は剥き出しじゃなくなった。残念だったな、弱点は消えたぜ」
「こっちだって、手が無くなったわけじゃない!」
『ブレスコマンド』
『そうだ、諦めるなキルト! こちらにはサポートカードもあるのだ、必ず勝機はあるぞ!』
「ねえよ、てめえらには! 一片だって勝機はありゃしねえ! このオーヴァギアは無敵なんだからな! グリズールナーグル!」
「遅い、もう見切ったよ! 食らえ、ドラグスラッシャー!」
剣を強化し、相手の攻撃を避けた後果敢に斬り込んでいくキルト。強度と切れ味を増した一撃なら、鎧を斬れるかもしれない。
そんな望みを抱いて放った一撃は、無慈悲な結果に終わる。竜の炎で強化した攻撃すら、ゾルグの纏う鎧には通じなかったのだ。
「そ、そんな……」
「もう終わりか? なら、次は俺だ! グリズールインパクト!」
『まずい、避けろキルト!』
攻撃が通じなかったショックで、キルトは回避行動が遅れてしまう。気が付けば、すぐ真上に敵の振るう巨鎚が迫っている。
サモンカードを使う暇もなく、死を覚悟し目を瞑るキルト。だが、一向に痛みが襲ってこない。恐る恐る目を開けてみると……。
「よお、苦戦してるな。ククク、オレを除け者にして楽しいバトルをやってるからバチが当たったな。クク、ここが新しい祭りの会場かぁ」
「ヘ、ヘルガさん!? 助けに……来てくれたってことでいいのかな?」
「な、なんだてめぇは!? いきなり現れ……うあああっ!?」
「うるせぇな、あまりオレをイライラさせるな。今はキルトと話してんだよ、割り込むんじゃねえ」
マーキング・テレポーテーションを用い、ヘルガが乱入してきた。キルトとゾルグの間に割って入り、短剣でハンマーを受け止めている。
驚くゾルグを軽く吹き飛ばし、ヘルガは不機嫌さを隠そうともせず威嚇の声を出す。キルトの方へ向き直り、あるものを見つけた。
「なんだ、頬が切れてるぜ。血が滲んでるじゃねえかよ、え? もったいねぇな……ペロッ」
「ひゃああっ!? ななななな、なにするのさいきなり!?」
『貴様……また懲りずにキルトに手を出しおって! ……いや、今はそれを気にしている場合ではないか。手を貸せ、雌犬。あのデカブツを始末するぞ』
「ククク、キルトが苦戦するような奴だ……さぞかし、オレのイライラの解消に役立つだろうよ。なあ、そうだろ? デカブツさんよ」
戦いの最中、攻撃がかすったようでキルトの頬が切れて血がにじんでいた。ソレを舐め取り、ニヤリと笑うヘルガ。
懲りない彼女に憤慨するルビィだが、今は戦力が一人でも欲しい状況。偉そうに共闘するよう指示を出して、その気にさせる。
「チッ、隊長たちは他の連中の相手で忙しいか……まあいい、一人だろうが二人だろうが関係ねぇ。纏めてぶっ殺してやるよ!」
「ククク、吠えるじゃねえか。なら、殺してみろよ。このオレ……サモンマスターノーバディはしぶといぜ」
ヘルガを加え、キルトはもう一度ゾルグに挑む。鉄壁の守りを誇るサモンマスターオーヴァを倒すため……闘志を燃やしながら。
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「死ねぃ! ヴィジラントナックル!」
「そっちこそ死ね! ミノスマグナム!」
一方、監獄内ではエヴァとロージェが激しい肉弾戦を繰り広げていた。ダブルクロスカウンターが炸裂し、両者共に吹き飛ぶ。
「うぐっ! やるわね、このジジイ。調子に乗ってるつもりはなかったけど……本気出さないとね、こっちも」
「ぐぬぬ……遠慮なく老人を殴り飛ばすとは何という奴だ! 貴様に老体を労る心はないのか!」
「はあ? 面白いジョークね、なんで敵のあんたを労ってやらないといけないわけ? ……そろそろ看守たちも来るし、いい加減ケリ着けるとしますか!」
激しい戦いは、いまだ決着する気配が見えない。最後に勝つのは、果たしてどちらの陣営なのか。答えはまだ、誰も知らない。




