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80話─復讐のゾルグ

「な、なんだこいつげぶぁ!」


「開けろ! 早く独房を開けぐぎゃあああ!!」


 床に開けた穴から地下にある独房エリアに降り立ったロージェは、閉じ込められていた囚人たちを一人ずつ撲殺していく。


 不運なことに、独房の監視に当たっていた看守たちは一人を残し地上の騒動の対応に回されていた。そのため、ロージェによって数人犠牲が出てしまう。


「さあ、次の房だ。今度は誰が」


「待て、ロージェ! これ以上はもう好き勝手させないぞ!」


「追ってきたか。フン、ならこの手で返り討ちにしてやるまで!」


『ナックルコマンド』


 手当たり次第に独房の壁を破壊し、暴れ回っていたロージェの元にキルトたちが現れる。ロージェは左腰に装備したデッキホルダーから、手の甲にコウモリの紋章が刻まれた篭手の絵が描かれたカードを取り出す。


「来い! この『バットナックル』で殴り殺してくれる!」


「ふん、返り討ちにしてやるもんね! みんな、狭いから気を付──!?」


「転送用魔法陣……? まずいわ、誰かがアタシたちを別の場所に飛ばそうとしてる! みんな逃げ」


 独房の中では狭すぎるため、廊下に出て戦おうとするキルトたち。だが、その時。ロージェを含め、全員の足下に紫色の魔法陣が現れた。


 その正体にいち早く気付き、ジャンプしながら警告を発するエヴァ。キルトたちもジャンプしようとするが、一足遅かった。


「やば……うわあああ!!」


「キルト! フィリール! アスカ! 変な白いの! ……間に合わなかったわね、誰よこんな時に!」


「安心しろ、私は転送から逃れたぞ。まずは貴様から始末してやる。その後で、残りの者らをゆっくり殺してやろう」


「あら、よかった。アタシだけ置いてかれてなくて。じゃ、鬱憤晴らしも兼ねて……キルトの代わりに、ぶっ殺してあげる」


『ナックルコマンド』


 一人転送から逃れたエヴァは、同じく魔法陣から逃れたロージェと対峙する。相手の武器に合わせ、エヴァも篭手を装備する。


 ミノスの大戦斧は大きくて取り回しが悪く、閉所での使用には難があるというのも一因だ。拳をぶつけ、音を鳴らし戦意を燃やす。


「来なさい、ヒーロー気取りのゴミジジイ。あんたみたいな老害、さっさと潰してあげる!」


「老害だと!? おのれ、言わせておけば! 若造なんぞに負けるほど、老いぼれてはおらぬわ!」


 そう叫んだ後、二人同時に走り出し拳を振るう。荒ぶる猛牛と、独善のコウモリ。果たして、勝つのはどちらか……。



◇─────────────────────◇



「もう、誰なのさ! いきなり街の外にほっぽり出すなんて!」


「キルト、急いで戻った方がええと思う。エヴァちゃんパイセンだけだと、下手したら負けるかもしれへんから」


「それはまずないと思うけど……ま、急いで戻るのはさんせ」


「待てよ、キルト。せっかくお前の宿敵が来てやったんだ、遊んでいけや」


 一方、ルマリーンの街の外……西にある草地に転送されたキルトたちは、すぐに街に戻ろうとする。だが、そこに……厄介な存在の声が響く。


 直後、街への帰還を阻むかのようにキルトたちの前方数メートルのところにポータルが開く。そこから、ティバとネヴァルが姿を現した。


『なんだ、また貴様らか。いい加減、我らの邪魔をするのはやめてもらいたいところだな』


「ククク、そう言うなよ。お詫びに、スペシャルゲストを呼んでるからな。おい、出てこい……ゾルグ」


「へえ、只今……よう、キルト。久しぶりだな。お前をぶっ殺すために、帰ってきたぜ」


「!? う、うそ……なんで、お前が!?」


 三度姿を現したティバとネヴァル。彼らを見飽きたルビィが退屈そうにしていると、ティバがもう一人の仲間を呼び出す。


 そうして現れたのは、キルトのかつての仲間……巨漢戦士ゾルグだった。とっくに死んだものと思っていたキルトは、驚愕し狼狽してしまう。


「嘘だ……お前は死んだはずじゃなかったの!?」


「死んじゃあいねえさ。理術研究院に売られて実験材料(オモチャ)にされてはいたがな。地獄の日々だったぞ、あれは。この苦しみと屈辱、てめぇにも味わわせてやる!」


『ふざけたことを口にするな、下郎。ちょうどいい、貴様がわざわざ出てきてくれたのだ。キルトを苦しめたことへの裁きを下してやる。楽には死ねぬ……覚悟しろ』


 キルトへの憎しみを募らせるゾルグに、ルビィがゾッとするような声で処刑宣告を行う。普段の彼女とは違う、あまりにも冷たい声にアスカの背中が凍り付く。


「おお、こわぁ……。ウチが言われる立場じゃなくて、ホンマよかったわ……」


「そうか? 私としてはとても興奮するのだがな。あの絶対零度の冷徹な罵声……実に素晴らしい」


「やれやれ、ウワサ通りの被虐趣味だねぇ、皇女サマは。ま、いいさ。君らが三人がかりだっていうなら、当然ボクたちもキルトくんに加勢させてもらうよ?」


 一方、いつも通りマイペースにドMるフィリール。そんな彼女を見て、サモンマスターロコモートは呆れ返り……そして、ティバたちに宣戦布告する。


「四対三で遊ぼうってか? いいぜ、ちょうどいいハンデだ。ゾルグ、アイツらに見せてやれ。サモンギア・第二世代機(セカンド)の最高傑作……ジーヴァギアと対になる、オーヴァギアの力を!」


「!? ジーヴァギア……バイオンが使ってる、アレの対になるサモンギア……!」


『なるほど、それは厄介そうだ。だが……キルトよ、あまり恐れるな。ジーヴァギアはバイオンが用いたからこそ、あれだけの強さを発揮した。ゾルグ程度の小物がオーヴァギアを使ったところで、豚に真珠といったところだな』


「言ってくれるじゃねえか、このクソ鎧め! だったから見せてやるよ、この俺……サモンマスターオーヴァの力をな!」


『サモン・エンゲージ』


 ルビィの言葉に激昂し、ゾルグは右腰に装着したデッキホルダーから契約(エンゲージ)のカードを取り出す。両腕を振り上げる、黒い毛皮を持つ熊のモンスター『ガルチュアルグリー』が描かれたカードを、ベルト型のサモンギアにスロットインする。


「ハハハハハ! どうだ、強そうだろ? 恐れ慄け、このサモンマスターオーヴァ様にな!」


「デカいな……元の体格からして大きかったが、あれだけ重厚な鎧を着込むとさらに大きく見えるぞ」


「頑丈そうやなぁ。ジーヴァが機動力重視な感じやったし、こっちは防御力特化ってとこかいな」


 変身を果たしたゾルグは、サモンマスタージーヴァの対になるような黒地に赤色のラインが走る重厚な鎧に身を包む。


 鎧そのものがかなり大きく、元から二メートル近い身長があったゾルグがさらに巨大になる。フィリールやアスカがそう話すなか、キルトはサモンカードを取り出す。


「みんな、やるよ。誰が相手だろうと、退くつもりはない。ゾルグ、お前が地獄から舞い戻ってきたというのなら……もう一度叩き落としてやる!」


『ソードコマンド』


「やってみろ、お前にやれるんならな! 隊長、副隊長、キルトをぶっ殺してやりましょうぜ!」


『ハンマーコマンド』


「言われるまでもねぇ。これで三度目の激突なんだ、こっちは。そろそろカタぁつけねえとな!」


『クローコマンド』


「そうよォ。いい加減キルトの首を持ち帰らないと、ボルジェイ様に叱られちゃうからねェ!」


『ウィップコマンド』


 キルトとゾルグ、ティバにネヴァルはそれぞれの武器を呼び出す。ゾルグが召喚したのは、熊の手を模した巨大な鎚。


 打面には鋭く尖った熊の爪が備えられており、単に叩き潰すだけでなく爪で抉り、引き裂くことが出来るようになっていた。


 まともに食らえば、ルビィが変化した鎧でもタダでは済まないだろう。


「フッ、キルトを死なせはしない。私は騎士……騎士の本懐は大切な仲間を守ること。このサモンマスタープライド、騎士の誇りにかけて! お前たちの思い通りにはさせない!」


『ランスコマンド』


「せや、うちはキルトに大きな大きな恩があるんや。それを返せるまでは、ウチもキルトも死なへん。かかってきぃや、もう人を殺す覚悟は出来とるさかいになぁ!」


 彼らに続いて、フィリールもサモンカードを用いて得物たる槍を呼び出す。一方、ロージェへの不意討ちですでに一枚カードを使っているアスカは、レイピア型のサモンギアを構えた。


「改めて名乗ろうか、ボクは正義の味方サモンマスターロコモート! このメソ=トルキアを脅かす悪の手先たちよ! ここで君たちを滅する! さあ、ショータイムだ!」


『ブレイブコマンド』


 最後に、サモンマスターロコモートが口上を述べながらサモンカードを取り出す。黄金のオーラに包まれた、ガッツポーズをしている黒塗りの人物が描かれたカードを右肘に装備した肘当て型のサモンギアに挿入する。


 すると、カードのイラストのように彼女の身体が黄金のオーラに包まれた。真っ直ぐティバたちを見つめて、不敵な笑みを浮かべる。


「さあ、ジャッジメント・タイムだ!」


 監獄の中と外、二つの舞台で戦いが始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] また狭い所で大乱闘かと思ったが(ʘᗩʘ’) 呼び出しで転送されるとは(↼_↼) 因縁の相手3人だけどザマァ残党兵に最新装備渡してるけど中身が何処まで持つやら(◡ω◡) そろそろバージョン…
[一言] >「老害だと!? おのれ、言わせておけば! 若造なんぞに負けるほど、老いぼれてはおらぬわ!」 老いぼれね……アイージャとリリンはお前よりははるかに年上だがなw 何ならこの二人オババぎゃああ…
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