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71話─白亜の戦士! サモンマスタージーヴァ!

「まずは相手の観察をするよ、お姉ちゃん。どんな手札があるのか見極めたないとね」


『うむ、そうだな。相手はエヴァも認める強者……慎重に慎重を重ねなければ』


『ソードコマンド』


「Hmm, then the first mover must win(ふむ、では先手必勝といこうか)」


Sword(ソード) Command(コマンド)


 そう口にし、バイオンはデッキホルダーから大きな刀身を持つサーベルの絵が描かれたサモンカードを取り出し、スロットインする。


 すると、彼のすぐ前に風が渦巻き剣の形へと変わっていく。バイオンが左手を突っ込んで引き抜くと、真っ白な刃を持つサーベルが現れた。


「Be the rust of this 『Zash Slade』, boy!(この『ザッシュスレイド』の錆となるがいい、少年!)」


「来い! 負けないぞ!」


「The goodness of power is first-class. Let's see how far that enthusiasm will last!(威勢の良さは一人前だな。その意気込み、どこまで続くか試させてもらおうか!)」


 エヴァたちが見守るなか、バイオンがキルト目掛けて走っていく。柄の先端に取り付けられた、馬の尻尾のような茶色い房飾りが揺れる。


 二人の距離が縮まっていき、あるラインをバイオンが踏み越えた刹那。同時に剣を振るい、相手の胴目掛けて攻撃を叩き込む。


「ていっ!」


「Hmm, good shot. To think that I, who set it up, would be let down(ほう、いい一撃だ。仕掛けた私が下がらされるとは)」


「このまま攻めさせてもらうよ! ドラグスラッシャー!」


 子どもとは思えない一撃の重さに感心するバイオンに、さらに攻撃を仕掛けていくキルト。息もつかせぬ連続攻撃で、どんどん後退させていく。


「おお、やるやんキルト! これなら、あのバイオンとかいうんも……エヴァちゃんパイセン? どないしたんや、んな難しい顔して」


「……今のバイオンは、全然本気を出してないわ。キルトの力量を探っているのよ、どこまでやれるのか把握するために。この戦い……そう簡単に決着はつかないわ」


「ああ、私も同じことを思っていた。あの男、やろうと思えばいつでもキルトの攻撃をカウンターし、強引に追撃をねじ込めるはず。それをしないのは……そういうことだろうな」


 サモンマスターになって日が浅いアスカが楽観視しているのに対し、エヴァとフィリールは険しい表情で戦いを見学していた。


 特に、同じ大魔公であるエヴァはバイオンの実力をよく知っていた。平時から強いのに、今の彼にはサモンギアがある。


 まさに鬼に金棒、その実力は彼女でさえ予測不可能な領域に突入していた。


(まずいね……相手の守りが堅くて、なかなか切り崩せない。今はまだスタミナがあるから、何を仕掛けてきても大丈夫だけど……ペース配分には気を配らないとね)


(Hmm... This boy is quite capable. He attacks, but he doesn't go any further than necessary. good decisio(ふむ……この少年、かなり出来る。攻め込んでは来るが、必要以上に深追いはしない。いい判断だ))


 バイオンと斬り結びながら、相手の戦力を洞察するキルト。先手を取ってきながら、バイオンの剣筋は守りを重視したものになっている。


 攻めてはいるが、予想以上に切り崩すのが困難だった。とはいえ、焦って深く攻めれば隙が生まれるし、スタミナも早く減る。


 反撃を警戒して慎重に攻めるキルトを見て、バイオンも心の中でそう呟く。早く守りを崩そうと焦らず、堅実に立ち回るキルトに感心していた。


『キルト、今のところ五分と五分だが……そろそろ仕掛けてきそうだ。今のうちに魔力を渡しておこう』


(ありがとう、お姉ちゃん。相手は大魔公、油断しないで行こう!)


(Alright, I learned a certain amount of strength from this sword fight. Next, let's have them show us their immediate response!(よし、ある程度の力量はこの斬り合いで分かった。次は、咄嗟の対応力を見せてもらうとしよう!))


 二人の攻防は十分に渡って続くも、ハッキリとどちらが優勢、劣勢なのが決まらない。それだけ、互いの力量が高いのだ。


 ある程度キルトの技量を観察し終えたバイオンが、いよいよ動く。短く息を吸った後、素早くキルトの背後に回り込む。


『キルト、後ろだ!』


「うん! せやっ!」


「prevent it now or do it. I was going to cut off my head, but…… Then how about this!(今のを防ぐか、やるではないか。首を落とすつもりだったのだが……では、これならどうだ!)」


 ルビィの声かけもあり、死角からの攻撃をいなして距離を取るキルト。ならばと、バイオンは次の手を使う。


 再び高速移動し、一瞬にして姿を消してしまう。僅かな殺気を頼りに、キルトは全神経を集中させて相手の移動先を探す。そして……。


「見切った、上だ! アッパードドラグスラッシャー!」


「Gugh! Don't do it…… To surpass an assault from above. Great, this is why I can't stop fighting!(ぐうっ!やるな……頭上からの強襲をも凌ぐとは。素晴らしい、これだから戦いはやめられない!)」


 急降下攻撃を見切られ、反撃を食らうバイオン。頑強な鎧のおかげで傷自体は浅く、致命傷とはほど遠い怪我だ。


 追撃を転がって避け、距離を取って立ち上がるバイオン。久しく現れなかった強者との戦いに、自然と口角が吊り上がる。


「I respect your strength. So, it's time for us to use our new powers. Can you dodge this blow?(君の強さに敬意を表する。というわけで、そろそろこちらも新たな力を使わせてもらおう。この一撃、避けられるかな?)」


Accel(アクセル) Command(コマンド)


 キルトの力を認め、ついにバイオンが二枚目のサモンカードを使う。取り出したのは、残像を残して走っていく黒塗りの人物が描かれたカードだ。


『キルト、気を付け……!? なんだ、奴の姿が消えたぞ!』


「ど、どこに消え」


「Welcome to the accelerating world. Let me test how long you guys can endure! Clock up smash!(ようこそ、加速する世界へ。貴公らがどこまで耐えられるか、試させてもらおう! クロックアップスマッシュ!)」


「うあっ!」


 バイオンの胸に、水色に光る時計の文字盤が現れる。針が高速で回転し始めるのを見て、ルビィが警告を発した直後。


 キルトやフィリールはおろか、エヴァですら目で追えないほどの猛スピードでバイオンが動き出す。とつてもない数の斬撃を浴びること、十秒。


「10 seconds. It's time for this(キッカリ十秒。これにてタイムアップだ)」


「がふっ!」


「ぐあっ!」


「キルト! ルビィ!」


「大丈夫か!? くっ、何という恐ろしい攻撃……何をしているのか、まるで見えなかったぞ」


「あ、あのフィリールはんがドMる余裕をなくしてはる……こらえらいこっちゃで」


 たった十秒の間に数百回にも及ぶ斬撃を食らい、キルトは変身解除に追い込まれる。全身傷だらけで倒れ伏すキルトとルビィの元に、エヴァが駆け寄る。


 いつもなら、自分がやられるのを想像して被虐の快楽に悶えるフィリールだが、今回ばかりはそんなことをしている余裕がないようだ。


「う、げほっ……大丈夫、急所には当たってないし、傷自体も浅いから……」


「だが、こうして変身解除に至るダメージを食らうとは……。油断はしなかったが、あやつ……我とキルトより、強い……」


「Oh, you guys were strong. Even if it was only a single blow to me who accelerated…… I hit it with an attack(いや、貴公らも強かった。加速した私に、たった一撃とはいえ……攻撃を当てたのだから)」


 加速を終え、動きを止めて振り返るバイオン。彼の胸には、小さな傷が付いていた。超高速攻撃を食らいながら、キルトが放った攻撃が偶然当たったのだ。


「It was a fruitful battle. I pray that the next time we meet, we will be able to fight against you who have become even stronger. Farewel(実りの多い戦いだった。次に会う時、もっと強くなった貴公らと戦えることを祈る。では、さらばだ)」


「あ、待ちなさ……行っちゃった。まあいいわ、今はキルトたちの治療が先よ。フィリール、アスカ、運ぶのを手伝って」


「ああ、分かった」


「りょーかい!」


 決闘に勝利したバイオンは、そう言い残しポータルの中へ姿を消した。エヴァたちはキルトとルビィを担ぎ、街に戻っていく。


 エヴァの背中に負ぶわれたキルトは、悔しさに打ち震えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] グランザームの一族は伊達ではないか(ʘᗩʘ’) ウォンの奴も武闘家だったけどこの御仁はまさに武神クラスか(٥↼_↼) 今まではクズやゲス、因縁の外道が相手だったけどここまで武徳を持ち合わせ…
[一言] むむ、やられたとはな……だが見事だ!! >いつもなら、自分がやられるのを想像して被虐の快楽に悶えるフィリールだが、今回ばかりはそんなことをしている余裕がないようだ。 ないんかいw 流石に…
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