65話─変えられた運命
結論から言えば、キルトたちの任務は至極順調に進んだ。まずはキルトが敵の空中戦艦に侵入し、敵のいる場所を目指して進む。
次いでエヴァがポータルを開き、敵に攻撃されていたキルトを助けに行く。そうして敵を殲滅した後、ついにキング・ガンドラの元にたどり着いた。
フィリール、アスカも加わり死闘を繰り広げる。長い戦いの末、ついに……。
「これで終わりだ! 食らえ、バーニングジャッジメント!」
「ぐっ……がぁぁぁぁ!! バカな、このわしが……チェスナイツの王が、敗れ……ぐはあっ!」
キルトとルビィの奥義によって、キング・ガンドラは倒された。彼の死によって、歴史は良い方向へと変わる。
「ふー、終わった終わった。さ、戦艦破壊してモンスター見繕って、契約して未来に帰ろっと」
「あれ? ご先祖様に会わなくていいの? こっちに来る前はあんなに楽しみにしてたのに」
ガンドラを撃破し、変身を解除したキルトたち。大きく伸びをする彼に、エヴァが問う。
「んー、考えたんだけどね。この時代のご先祖様たちに会っちゃうと、未来が変に拗れちゃう可能性があるから……僕が生まれてこない、なんてことになったら困るし」
「確かにな。キルトがいなかったら、我はもうとっくに寿命でくたばっておる。キルトに会えずに死ぬなんてまっぴらだ!」
「それもそうだ。私も真に仕えるべき主に出会えず、騎士道を見出すことが出来ぬ人生を送っていただろう。そんなのは耐えられん」
「せやなぁ、ウチかて無理矢理地球から召喚されてきたんやもん。キルトに会えへんかったらあの【ピー】野郎どもに飼い殺しにされとるで」
やるべきことは終わった。空中戦艦の甲板にて、キルトたちは駄弁っていた。キルトの手には、ブランクカードに封印されたキング・ガンドラのカードが握られている。
「アスカちゃんとの戦いで消費したサポートカードも、一枚だけとはいえ補充出来たしねー。さ、そろそろ戦艦をぶっ壊そっか!」
「そうね、こんなもん浮かばせてても使い道ないし。さーて、もう一働きするわよ!」
「おー!」
休憩を終え、もう一度変身したキルトたちは空中戦艦の動力部へ向かう。戦艦を機能させているコアを破壊し、海へと落とした。
ポータルを使って墜落していく戦艦から脱出したキルトたちは、そのままリオやコーネリアスの元へと戻り報告を行う。
「……という感じで、ガンドラをこう……えいやっ! てやっつけて戦艦も落としてきました!」
「うむ、ようやってくれた。感謝するぞよ、おかげでフィルは救われたぞい」
「そうか、ならよかった。我も頑張った甲斐があるというものだ」
「ちょっと、自分だけの手柄にしないでくれる? みんなでやったんでしょーが」
「人聞きの悪いことを。我とキルトの手柄だ。ふふん」
リオたちの見ている前で、またしても火花を散らすルビィとエヴァ。そんな彼女らを見て、リオはけらけら笑っていた。
「ふふふ、二人とも僕のお嫁さんとアゼルくんのお嫁さんみたいなやり取りしてるね」
「アイージャとリリンか……あやつらも中々に水と油な関係じゃからのう。この前も、どっちの夫が素晴らしいかで国一つ滅びそうな大喧嘩をしておったな。懲りぬ奴らよ」
「……よーわからんけど、そっちもなんか大変なんやな」
「んー? でも楽しいよ。毎日がお祭りみたいでさ」
「その祭りの尻拭いをする方の身にもならんか! このド阿呆!」
そんなやり取りをした後、ようやくキルトたちは未来に帰……らない。せっかく過去に来たのだからと、サポートカードの補充に行くことにしたのだ。
ただ、好きなところに行けるわけではない。余計な混乱を招かぬよう、カルゥ=オルセナや暗域等一部の世界への出入りは禁じられたのだ。
「この時間軸の段階で、すでに理術研究院はボルジェイが院長に就いておる。おぬしら、絶対に暗域に行くでないぞ。よいな?」
「うへ……あいつ、もう院長やってるんだ……じゃあ、タナトスもいるのかな?」
「ん? なんじゃその人物は。確か、部下の報告じゃとボルジェイの側近はゾーリンという男のはずじゃが」
「え?」
コーネリアスの言葉に、キルトは目を丸くする。てっきり、この時点でもうタナトスがボルジェイの右腕として辣腕を振るっているとばかり思っていたのだ。
「じゃあ……いつ、どこでボルジェイの右腕になったんだろう。タナトスは」
「さあな。そんなことはどうでもいいだろう。それより、早く出掛けようではないか。過去の世界を、いろいろと見て回りたい」
「そうだな、私たちの時代と何が違うのかを比較しに行くだけでも面白そうだ。早速行こうじゃないか」
「そうだね、じゃあどこに行こうかな……」
「えっとね、君たちが行っていいのは……」
ルビィとフィリールに急かされ、キルトはどこに行こうか考える。そんな彼に、リオが滞在許可が出ているいくつかの大地を教えた。
タナトスの謎などすっかり忘れ、キルトはわくわくしながら過去の世界の散策に向かう。未来では、ボルジェイが次なる作戦を進めているとも知らずに。
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「Oh, so this is the power of Summon Gear. Even though it's a simulation, it's powerful(ほう、これがサモンギアの力か。シミュレーションとはいえ、強力さが伝わってくるな)」
「ええ、そうでしょうそうでしょう。ですが、実戦で用いればさらなる力を引き出すことが可能なのですよ。それこそ、シミュレーションでの結果以上の戦果を出せると自信を持って言えます」
その頃、ボルジェイはバイオンに向けてサモンギアのプレゼンテーションを行っていた。仮想空間を用いた模擬戦闘を行い、アピールをする。
バイオンの手に握られているのは、白と金の二色による斜めの縞模様デザインが施されたデッキホルダーだ。中央には、馬の横顔のエンブレムが彫られている。
「Did you say JivaGia, with this much power, it's no longer a pipe dream for me to sit in the Demon King's seat. Great, I would love to buy it. buy at asking pric(ジーヴァギアと言ったか、これだけの力があれば私が魔戒王の席に着くのも夢物語ではなくなる。素晴らしい、是非買い取らせてもらいたい。言い値で買おう)」
興奮しながら、バイオンはそう口にする。腰に巻かれた白地に金の装飾を持つベルト……ジーヴァギアを撫でながら。
サモンギアの力に魅了され、食い気味にまくしたてる。心の中でニヤリと笑いながら、ボルジェイは大きく頷いた。
「いえいえ、今回はバイオン公に無償でお譲りしたいと考えております。その代わり、我がサモンギアの力を宣伝していただければ……と」
「Are you trying to make me a billboard? All right, that much is cheap(私を広告塔にしようというわけか。いいだろう、それくらいはお安いご用だ)」
「ありがたきお言葉、感謝致します。厚かましいことではありますが、もう一つご依頼したいことが御座いまして……」
ゴマをすりながら、ボルジェイは本題を切り出す。ジーヴァギアを使い、キルトとその仲間たちを抹殺してほしいとバイオンに依頼したのだ。
「So those people are also Summon Masters who use Summon Gear? It's fine, there's enough opponent to test this power, let's fight. But……(その者たちも、サモンギアを使うサモンマスターというわけか。いいだろう、この力を試すのに不足なき相手だ、戦うとしよう。しかし……)」
「しかし、なんでしょう」
「You can make this many things, shouldn't you make your own military exploits? "I'm sure you know what's being said behind your back(これだけのモノを作れるのだ、お前自身で武功を立てるべきではないのか? 陰でどんなことを言われているか、お前自身よく分かっていよう)」
バイオンの言葉に、ボルジェイは黙り込んでしまう。コーネリアスを筆頭とする魔戒王たちから、どんな陰口を叩かれているか。
痛いほどよく知っていた。『他者を蹴落とすしか能の無い腰抜け』、『武勲無しの臆病者』、『非直系一のクズ』……そう呼ばれていると。
「Well, this is how I am getting new weapons. Say no more. But you should be aware soon. The fact that the world of dark relatives is meritocrac(ま、こうして新たな兵器を融通してもらっているのだ。これ以上は言わぬ。だが、お前もそろそろ自覚した方がいい。闇の眷属の世界は、実力主義だということを)」
そう言い残し、デッキホルダーとサモンギアを持ってバイオンは帰っていった。一人残ったボルジェイは、顔を歪め壁に拳を叩き付ける。
「クソめが! 戦うしか能のないゴミの分際で、優れた頭脳を持つ俺をコケにしやがって! ……まあいい、いずれ証明されるさ。真に正しいのは俺の方だとな」
そう呟き、ボルジェイはシミュレーションルームを去る。新たなサモンマスターの誕生を、キルトたちはまだ知らない。
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