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64話─過去の世界へ!

 遙か時をさかのぼり、三百年前の時代へと旅する準備が整った。現在、キルトたちはアルソブラ城の地下にある巨大な空間にいた。


 あちこちに馬車が停められている空間の奥に、巨大な青色のワープホールが開いている。この門を通り、過去へと向かうのだ。


「さて、最終確認をしておこう。おぬしたちには、これから三百年前の『カルゥ=オルセナ』という大地に行ってもらう。そこで、こやつ……キング・ガンドラを倒してもらいたい」


「ふんふん。そいつを倒せば、ご先祖様を救えるんだね?」


「そうじゃ。こやつは空中戦艦を使い、おぬしの祖先……フィルを仕留めようとしておる。それを阻止するのが、おぬしらの役目じゃ」


 ワープホールの前で、コーネリアスから依頼の内容を聞くキルトたち。彼から手渡された写真を見て、ターゲットの容姿を覚える。


 真っ赤な鎧とマントを身に着け、王冠を被った偉そうなヒゲ面の男……キング・ガンドラ。彼を倒すのが、キルトたちの仕事だ。


「そやつはとある魔戒王の配下でな、全身を改造した生きる兵器庫とも言える存在。くれぐれも油断するでないぞ」


「フッ、我らの手にかかれば何者であろうと敵ではない。大船に乗ったつもりでいるがいい」


「ふむ、そうか。では、期待しておこうかの。……ああ、そうじゃ。お節介じゃろうが、ほんの少しだけ力をやろうかの。ほれっ」


 自信満々なルビィに、コーネリアスはちょっとした魔法をかける。一回こっきりだが、強力な炎を放てるようにしたのだ。


「おぬしに『チェストフレイム』の魔法を授けた。ここぞという時に使うがよい」


「ではありがたく受け取っておこ……いたつ!」


「あんたね、もっと感謝しなさい! コーネリアス様から魔法を授けてもらえるなんて、滅多にないことなんだから!」


「うるさい奴め、人の脛を蹴るな! まったく……」


「まあまあ、落ち着いてよ二人とも。ね?」


「そうだ、蹴るのなら私にするがいい。いつだってウェルカ」


「っさいわ! このドM! 話がややこしくなるから黙っとれーや!」


「おっふ❤」


 ルビィとエヴァがケンカをはじめ、キルトが仲裁をし、フィリールが話をややこしくして、アスカが制裁を下す。


 ある意味美しい連携に、コーネリアスは思わず吹き出してしまう。まるで自分の仲間たちを見ているようだと、そんな微笑ましさも覚えたようだ。


「ほっほっ、賑やかじゃのうおぬしらは。キルトといったか、こういう仲間は大切にせねばならんぞ。一緒にバカをやれる者は、一生の宝じゃ」


「は、はあ……」


「さ、そろそろ出発の時じゃ。過去のわしには、すでに話を通してある。今回の依頼を達成出来るよう、サポートすると確約してくれた」


「じゃあ、いろいろ問題はありませんね。では、行って参りますコーネリアス様」


「うむ、任せたぞよ!」


 多少本題から脱線したものの、いよいよ過去へ向かって旅立つ時が来た。キルトたちは深呼吸をした後、ワープホールへ飛び込む。


「いっくぞおおおおお!!」


「おわーーーつ!! めっちゃ揺れ……アカン、吐きそ……」


「ちょっと、こっちに来ながらそんなこと言わないでくれる!? 吐くんだったらフィリールの方に行ってよ!」


「ふむ……たまにはそういうのもアリだな」


「本当にブレないな貴様は!?」


 ワープホールに飛び込んだ一行は、時の渦を逆流して過去へと向かう。三百年前の世界に向かう道中であっても、緊張感のカケラもないやりとりは健在だ。


 そんな仲間たちを見ながら、キルトは苦笑する。ちょっとだけ、コーネリアスの言ったことが分かったような気がしたのだ。


(……さあ、過去の世界でも頑張るぞ。ご先祖様を助けて、歴史の改変を防ぐんだ!)


 後ろの方から響いてくる汚い音と悲鳴から意識を逸らしつつ、キルトは心の中で強く決意する。時の渦を飛んでいると、前方から強い光が降り注いできた。


 あまりの眩しさに、一行は目を閉じてしまう。しばらくして、光が消えた。恐る恐るまぶたを開けると……。


「お、来た来た! コリンくん、成功したっぽいよ!」


「やれやれ、とりあえずは一安心というところかの。これ、そのほうら。意識はハッキリしとるかえ? 心身に異変はないか?」


 アルソブラ城の地下と思われる、広い空間にいた。コーネリアスがいるのは変わらないが、別の人物が一人追加されている。


 青いふわふわした髪と、ピコピコ動く猫耳が特徴的な褐色の肌を持つ少年だ。年の頃は、コーネリアスより少し上くらいだろうか。


 非常に重そうな青色の鎧を身に着け、右腕には金色、左腕には銀色のガントレットを装備している。


「はい、僕……は大丈夫です。アスカちゃんたちは……うわ、悲惨……」


「大丈夫、僕に任せて。本当はこういうことに使っちゃダメなんだけど、みんなには内緒だよ?」


 コーネリアスに問われ、後ろを向くキルト。そこには、吐瀉物にまみれたあられもない姿の仲間たちがいた。


 そんな彼女らを見て、猫耳の少年がそう口にする。指を鳴らすと、少年の前に赤色の宝石が現れた。キルトが不思議そうに見ていると、少年は左手を握る。


「……『時間のルビー』よ、時を巻き戻せ!」


「え、わっ!?」


 赤い宝石が輝き、キルトたちを包み込む。すると、アスカたちの身体がみるみる綺麗になっていく。何が起きたのか分からず、唖然とするキルトたち。


 一方、コーネリアスは何をしたのか分かっているようで、仲間の行いに呆れていた。


「……たかが吐瀉物の処理程度で()()()()()()()とは。わしは知らんぞ、後で神どもにバレても」


「だいじょぶだいじょぶ、これくらいバレないって。あ、そういえばまだ自己紹介してなかったね。僕はリオ! 知ってるかどうか分かんないけど、ベルドールの魔神を束ねる首領だよ。よろしくね!」


「よろしくお願いします、リオさん。理術研究院にいた頃から、名前は度々聞いていました」


「うん、よろしく。キルトくんだったかな、未来のコリンくんから話は聞いてるよ。よかったら、僕と手合わせ」


「阿呆、時間が無いと言っておるじゃろが! 事が終わってからにせい、このバトルジャンキーめ!」


 未来のコーネリアスから、あらかじめキルトのことを聞いていたリオは自己紹介もそこそこにそんなことを言い出す。


 遠い未来の技術から生まれた戦士、サモンマスターと戦いたくて仕方ないらしい。そんなリオの頭にチョップを叩き込み、コーネリアスが諫める。


「ちぇー、分かったよ。……こほん。話はもう聞いてるよね? 今、君のご先祖……フィルくんが危ないんだ」


「ああ、それは聞いている。具体的に、どう危ないのだ?」


「フィルくんの宿敵……ヴァルツァイト・ボーグって悪い魔戒王に卑劣な不意討ちを食らっちゃってね。瀕死の重傷で、今緊急手術してるんだ」


「なるほど……まさに生きるか死ぬかの瀬戸際ってわけね」


 ルビィに尋ねられ、リオはフィルの現状を伝える。それを聞いて、エヴァが納得したように頷いた。


「さらに悪いことに、フィルの仲間はみなヴァルツァイトの手下……チェスナイツの相手をしていて分散しておる。おまけに、一人分手が足りん」


「なるほどな、そこで私たちに白羽の矢が立ったというわけだ」


「そうそう。しかも、よりによって残ってる相手が悪くてさ。僕たちじゃ絶対勝てないんだよね、戦い方を記録されちゃってるから」


「そのことは聞いたよ。だから、僕たち未来の存在が必要なんだよね?」


「うん! 君たちに押し付けちゃうのは悪いなって思うんだけど、フィルくんを助けてあげて。もしガンドラを倒せたら、お礼するからさ」


 キルトとしては、礼などされずとも先祖を助ける気満々だった。フィルがここで死ねば、自分が生まれなくなってしまう。


 そうなれば、ルビィたちの運命も変わり悲しい世界に変わってしまうのだ。それだけは、絶対に避けなければならない。


「そんな、お礼だなんて。僕たちが絶対にやり遂げてみせるから、二人はここで待ってて!」


「うむ、よく言うた! それでこそ未来のわしが選んだ戦士じゃ!」


「カルゥ=オルセナに行くためのゲートはもう開いてあるよ。ただ、相手は空中戦艦にいるから……いきなり全員で向かっても、撃墜されちゃうかもね」


「なら、まずは我とキルトの二人で戦艦に乗り込もう。どのみち、自力で飛べるのが我とフィリールくらいしかおらんからな」


「そうね、キルトが乗り込んでくれればアタシがポータルを開けて追い付けるし」


 話し合いの末、作戦は決まった。いよいよ、ご先祖様を救うためのミッションが始まる。サモンマスターたちの力が、過去の世界で振るわれるのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何かあっさり過去に飛んじゃってるけど絨毯もボートも無しでワームホールに入るから酔うんだよ(ʘᗩʘ’) これで早くもゲロインの仲間入りをするヒロイン達であった(◡ω◡)
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