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57話─トラア湖防衛戦

「さて、着いたわね。ここがトラア湖……ふーん、かなり大きいわねぇ」


「ああ、いい場所だろう? ちょっとした観光スポットにもなっていてね、春から秋にかけてピクニックに来る人たちが多くいるんだよ」


「へぇ、いいこと聞いた。落ち着いたらキルトを連れてデートしにこよっと」


 キルトたちのクレイ捜索、ティバの復活と並行してエヴァとフィリールはトラア湖を訪れていた。途中、騎士団と合流しポータルを使って移動したのだ。


 敵がいつ、どのような規模で襲ってくるか分からない以上、帝国騎士団がいてくれた方がいいとフィリールが判断したのである。


 もっとも、サモンマスターが二人もいれば十分だとエヴァは軽く見ていたが。


「皇女様、見回りは我々が行います。敵が襲撃してきたら軍楽ラッパでお知らせしますので、それまでおくつろぎください」


「ありがとう、でも……そんな時間はないみたい。見なさい、早速敵のお出ましよ」


 理術研究院の勢力がいつ襲ってきてもいいよう、騎士たちが見回りを始め……ようとした矢先、湖の上空に大きな亀裂が現れた。


 空の裂け目から、大量のワイバーンとそれに跨がる竜騎兵たちが降りてくる。帝国騎士団は慌てることなく、迎撃準備を整える。


「弓兵部隊、構え! 魔術師部隊、援護! 射撃、てー!」


「ハッ! そうれっ!」


「いくぞ! 加護魔法、飛翔の祈り!」


 弓を持った騎士たちが、素早く三列に並び狙いを定める。魔術師たちの魔法によって飛距離と威力が強化された弓を、一斉に放つ。


「ぐっ!」


「がはっ!」


「慌てるな、魔法盾を展開して矢を防げ!」


 闇の眷属の軍勢は、先制攻撃を受けバカにならない被害を被る。約一割を失うも、即座に立て直し地上へ急降下していく。


 ワイバーンのブレスを使い、空から攻撃を仕掛けるつもりだったが……そんなことを、エヴァとフィリールが許すはずもない。


「さて、暴れるわよ。あんたの実力、アタシにも見せてよねフィリール」


「ああ、勿論。『姫獅子』の名に恥じぬ戦いをご覧に入れよう」


『サモン・エンゲージ』


 エヴァたちはサモンカードを使い、変身を行う。これから始まるのは、一進一退の攻防ではない。二人のサモンマスターによる、一方的な蹂躙だ。


「さあ、やるわよブルちゃん! まずは……ワイバーンを一頭、パクるところから始めるわ!」


『ぶもおおお!』


『アックスコマンド』


「私たちも行くぞ、インペラトルホーン。お前の羽根を使わせてくれ、空を飛べれば互角に戦える」


『……ヨキニハカラエ』


「!? し、喋るのかお前……分かった、ありがたく使わせてもらうよ」


『ランスコマンド』


 それぞれの武器を呼び出した後、エヴァは力を込めて跳躍し、フィリールは本契約モンスターの力を貸りて空を飛ぶ。


 結界を張って攻撃を防いでいる騎士団に気を取られていた竜騎兵の一人に、エヴァが襲いかかる。突然の襲撃に驚いている間に、首が落ちた。


「はぁーい、ワイバーンちゃん。ちょーっと乗らせてね、後で野生に帰してあげるから。この死体邪魔! おりゃっ!」


「ギュギッ、ガカァッ!?」


「どうどう、いいこいいこ。さあ、飛びなさいワイバーンちゃん! 他のクソ兵士どもをぶっ殺すわよ!」


「ギュ、ギュウゥ……」


 主を殺され、困惑するワイバーン。が、生物の本能でエヴァに逆らってはならないと悟り、彼女に従うことを選ぶ。


 敵から奪ったワイバーンを駆り、エヴァは空を飛び回る。果敢に接敵し、ミノスの大戦斧で首を切り飛ばしていく。


「ひいっ! 『暴虐の知将』エヴァンジェリン公だ! お、お前行けよ!」


「い、嫌だ! アレには勝てねえ、俺は逃げ」


「逃がすわけないでしょ? 皆殺しにしてやるから覚悟しなさい! ミノスクラッシュ!」


「うぎゃあっ!」


 エヴァが大暴れしているなか、フィリールも勇猛果敢に敵と戦う。黄金の槍『グロリアスホーン』を振るい、竜騎兵たちを貫いていく。


「食らえ! ストライククラッカー!」


「チッ、そんなもん盾で……なにっ!? 攻撃を防げな……ぐあっ!」


「クソッ、よくも仲間を……ごふぁっ!」


「ふむ、サモンカード製の武器は通常の武具を容易く破壊出来るようだな。これなら、敵の制圧も簡単……いや、それどころか文字通り鎧袖一触に出来るぞ」


 キルトがサモンギアを作るのにあたって、コンセプトに設定したのは『神や魔戒王とも互角に戦える』ということだった。


 その意思が反映された結果、ごく一部の例外を除く非サモンカード製の武具への特効効果を持つに至ったのだ。故に、サモンマスターと互角に戦えるのは同じサモンマスターだけ。


 もっとも、神側の最高戦力たる『ベルドールの七魔神』や『ネクロ旅団』、上位七人の魔戒王であればその限りではないが。


「クソッ、なんなんだこいつらは! ボルジェイの奴め、俺たちをたばかったな!」


「湖を汚染するだけの楽な仕事だって聞いてたのに、こんな奴らがいるなんて聞いて……ぎゃああ!」


「ピーピーうっさいのよ! とっとと全員くたばりなさい!」


「全くだ。この湖は、我が国が誇る景勝地。貴様らのような者どもに汚させはしない!」


 当初、百騎はいた竜騎兵たちが十分もかからずに五分の一にまで減っていた。地上にいる騎士団の者たちは、エヴァたちの強さに舌を巻く。


 彼女たちがいるおかげで、今現在騎士団の死者どころか負傷者すら一人も出ていない。もし騎士団だけだったら、かなりの被害が出ていただろう。


「凄い……あの日演習場で見た時以上に、サモンマスターの強さを痛感させられるな。まさか、たった二人であれほどの数を一方的に殲滅するとは」


「……これは、絶対敵に回せないぞ。一度でも敵になったら、俺たちが蹂躙されることになっちまう」


「やめろよ、想像するだけで全身に鳥肌が立つだろうよ……」


 時折落ちてくる流れ弾を防ぎつつ、騎士たちはそんな会話を行う。一方、上空ではもう決着がつきつつあった。


「残り四騎……ここで一気に終わらせる! インペラトルホーンよ、敵将を討つぞ!」


『ウム、ヨキニハカラエ』


『アルティメットコマンド』


 フィリールはひときわ大きなワイバーンを駆る闇の眷属に狙いを定め、デッキから引き抜いたサモンカードをスロットインする。


 挿入したのは、羽根を広げ突進していくインペラトルホーンが描かれたカード。高らかに音声が鳴り響くなか、フィリールの鎧から黄金の甲虫が分離した。


「く、来るな! こっちに来るんじゃねえ!」


「ムダだ、どんな鉄壁の守りも! この一撃を防ぐことは出来ない! 食らうがいい! ヘルクレスクレイドル!」


 フィリールの背後に現れたインペラトルホーンは、彼女に向かって突き進む。身体を捻り、水平に倒れたフィリールは相棒の上下の角の間に挟まれる。


 手にした槍を消し、両腕を真っ直ぐ前に伸ばすと……黄金の光が指先から放たれ、一人と一匹を包む。フィリールの身体と角が融合し、巨大な槍と化した。


「ひ、ひいぃ! お前ら、俺を守れ! 守りに来るんだぁぁぁ!!」


「無理無理。あんたの部下、みぃーんなこのエヴァちゃんがぶっ殺してやったから。もうあんただけよ、生き残ってるの」


 襲撃者たちを束ねていた大将は、ワイバーンを駆り必死に逃げる。だが、フィリールとインペラトルホーンの方が速度が上だ。


 どんどん距離が縮まり、ついに追いついた。黄金の槍が敵将を貫き、そのまま突き進む。断末魔の声をあげることも出来ず、木っ端微塵になった。


「ギュ、ギュイィィ!!」


「よっと。ワイバーンは逃げたか……ま、いいさ。モンスターに罪はない、野生に帰るならそれでいい」


「おつかれー。あんた、なかなかイイ技持ってるじゃない。ド派手にブチ抜くの、見ててスカッとしたわ」


「フフ、凄いだろう? これがインペラトルホーンの……むっ!」


 竜騎兵の群れを全滅させ、気を緩める二人。が、そこに第二陣が現れる。空の裂け目から飛び出てくる敵を見て、エヴァは舌なめずりをした。


「へえ、まだ()()()の。いいわね、そうこなくっちゃ面白くないわ」


「早急に敵を全滅させて、亀裂を閉じなければな。地上の騎士団が、湖に死体が落ちないよう魔法で回収してくれているが……これ以上負担はかけられん」


「仕方ないわね、んじゃ競争しましょ。どっちがより多くクソ雑魚どもを狩れるかをね」


「……いいだろう。今の私がどこまでやれるかを確かめるいい機会だ。……始めよう」


 突撃してくる竜騎兵たちに向かって、エヴァとフィリールは突き進む。トラア湖を守る戦いは、まだ終わらない。

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― 新着の感想 ―
[一言] エヴァもキルトの妻を名乗るだけに仕事で出張でも忠実にこなしてるけど(ʘᗩʘ’) 帰ったらどれだけ暴れる事か(٥↼_↼)早くてキルトが出迎えた時か、遅くても何時も通りに入浴中に乱入して露見す…
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