54話─アノカソード・スパーク!
「そおら食らえ! エレクトリックウィップ!」
「踊る電撃のイリュージョン! その身でとくと味わえ!」
パルジャとカンディは、腕に纏った電撃を鞭のように伸ばしウォンへと叩き付ける。まともに食らえば、電流によって黒焦げになるだろう。
だが、ウォンは華麗な棍捌きで電撃の鞭を弾き、一切身体に触れさせない。もっとも、直撃したところで肌に当たらねば無意味だが。
「どうした? そんな単調な攻撃、目を瞑っていても避けられるぞ。俺を殺すんじゃなかったのか?」
「チッ、調子コいてんじゃねえぞ! なら、コンビネーションプレイを見せてやる!」
「右から左から、上から前から! あらゆる方向からあんたを打ち据えてやるよ!」
ウォンに挑発され、パルジャとカンディは鞭を振るう速度を上げる。さらにフェイントを織り交ぜ、緩急つけた変幻自在の攻撃を放つ。
「ふむ。少しは歯ごたえが出てきたな。噛み終えた干し肉から新鮮な干物くらいにはなったか」
「分かりにくい例えしやがって! ふざけてんじゃねえぞコラァ!」
「そんなくだらない話してると、おててがお留守になるよ! ほら、殺ったぁ!」
数の差から、次第に鞭を捌くのが困難になっていく。そして、ついにカンディの放った一撃がウォンに直撃した。
瞬間、腕部から凄まじい電流が放たれウォンを包み込む。これで確実に絶命したと、カンディは確信して勝ち誇るが……。
「ふむ、少しは効いたな。なかなか痺れたぞ、今の一撃は」
「えー!? うっそ、なんで生きてんの!?」
「ありえねえ、高圧電流を食らって死なねえわけがねぇのに!」
「ふっ、このサモンマスター玄武の鎧を舐めてもらっては困る。物理的に堅いだけではない、対電撃耐性も備えているに決まっているだろう?」
なんと、電撃を叩き込まれてもウォンは普通に生きていた。多少はダメージを受けたようだが、戦闘に差し支えるほどではないようだ。
驚くカンディたちに向かって、鎧を指で叩きながらウォンは得意気に語る。並大抵の攻撃では、鉄壁の守りを崩すことは不可能なのだ。
「そうかい、なら」
「おっと、ここからは俺のターンだ。レイ家流棒術、如意連閃!」
これ以上攻めるのは許さないと、ウォンが反撃に出る。棍を振るい、パルジャとカンディを押し返していく。
唯一露出している顔面への被弾さえ気を付ければ、持ち前の防御力を頼みにガンガン攻めていける。ここからはウォンのターンだ。
「このっ、やってくれやがるな! だが、数はこっちの方が上だ! いずれ逆転してやる!」
「させると思うか? ファンシェンウー、片方を足止めしろ!」
『フシュア!』
パルジャとのアイコンタクトで、こっそりウォンの背後に回り込むカンディ。不意討ちをかまそうとするも、ウォンの背中から生えた二頭の蛇に阻まれる。
「ちょ、ズルッ! 本契約モンスター使うなんて卑怯じゃない!」
「卑怯? 二人がかりのお前たちと対等になっただけだ、どこが卑怯だと言うんだ?」
カンディの非難など意に介さず、ウォンはパルジャに棍を突き込む。まずは一人を集中攻撃して倒し、一対一に持ち込もうとするが……。
「チッ、ならこうしてやる! カンディ、やるぞ!」
「オッケー!」
『ピックコマンド』
そうはさせまいと、二人は同時にサモンカードをスロットインする。鋭く尖った黒い杭の絵が描かれたカードの力で、新たな武装が現れた。
それぞれのサモンギアを装備していない方の腕に、手甲と一体化した長い杭が装備される。ウォンの持つ棍と、互角のリーチを持つ品だ。
「このプラスドリルドライバと!」
「マイナスドリルドライバで!」
「串刺しにしてやる!」
「やれやれ、シンクロ芸もここまで来ると感心させられるな。実のきょうだいというわけでもないだろうに、よくそこまで声を合わせられるものだ」
新たな武器を装備したパルジャたちは勢いを盛り返し、ウォンへ猛攻を叩き込む。が、それでも頑丈な鎧の守りを崩せない。
電撃を纏わせた杭による連続攻撃を放つも、棍でいなされ、双頭の蛇に邪魔され、鎧に阻まれ。難攻不落とは、まさにこのことだ。
「おい、カンディ。どうやらオレたちは……おっと! 認識を改めなきゃならないようだぜ」
「そうね、パルジャ。こいつは……ハッ! 一筋縄じゃいかないね!」
「ようやく理解したか? まだ道半ばではあるが、俺はお前たちよりも強いと! レイ家流棒術、地裂共震撃!」
ここに来て、ようやくパルジャたちは認めた。ウォンは自分たちよりも強い、と。そんな彼らに、ウォンが反撃を放つ。
彼ら自身ではなく、大地に棍を勢いよく打ち付けて放射状に広がる八つの亀裂を作り出す。避けた地面の中から衝撃波が放たれ、敵を襲う。
「ぐおっ!」
「きゃあっ!」
「まだ終わらないぞ! 次はこうだ!」
『ナックルコマンド』
「受けてみろ! レイ家流気功術、留鐘打ち!」
カンディが吹き飛び、連携が分断された。その隙を突いて、ウォンは棍を背中の蛇に渡し新たなサモンカードを使う。
蛇の頭を模した手甲を両手に装着し、体勢を立て直している最中のパルジャに飛びかかる。右腕を引き、掌底を叩き込む構えを取る。
「来やがれ、オレのエレキマトリクスアーマーに触れてタダで済むと思うな!」
「フッ、たかが電撃を放つだけの鎧など恐れる理由はない。幼少の頃から、電撃など飽きるほど浴びてきたからな!」
「ほざけ! ドリルドライバー!」
パルジャは腕を突き出し、杭による攻撃を放つ。ウォンはしゃがんで避け、そのまま掌底を叩き込む。分厚い鎧を着ている敵には、決定打になり得ないかと思われた。が……。
「フンッ!」
「はっ、そんなもん痛くも──う、かはっ!?」
「パルジャ!」
「いいことを教えてやる。代々のレイ家当主が編纂した四十八の武技が記された武芸書には……甲冑を身に付けた相手の心臓を、数秒間止める打法があるのだ」
ウォンは、ただ掌底を叩き込んだだけではない。手に『気』と呼ばれる力を纏わせ、鎧を飛び越して心臓を直接打ったのだ。
「パルジャ! 大丈夫!?」
「クッ、ソが……! これ以上やらせねえ、パワーアップしてから仕留めるぞカンディ!」
「オーケー、行くよ!」
『ブーストコマンド』
たった一発の攻撃で死にかけることになったパルジャから、余裕が完全に消えた。電撃を纏う歯車の絵が描かれたカードをスロットインし、電力を回復する。
「来るか……敵の切り札が。ファンシェンウー、危ないから鎧の中に戻れ!」
『フシャア!』
「ムダたぜ、そんなことをしても。オレたちのアルティメットコマンドで!」
「そのインチキ鎧ごと消し炭にしてやるよ! 覚悟しな!」
『アルティメットコマンド』
電撃を放つ手の絵が描かれたカードをスロットインしながら、パルジャとカンディは前後からウォンを挟むように立つ。
サモンギアを装着した方の腕を伸ばし、複数の電流の鎖を放ってウォンを捕らえる。
「ぐっ、これは……!」
「ハハッ、流石のお前もこうなっちゃ焦らずにいられねぇか? ま、今更焦ってもムダだがな! 来い、トラッシュイール!」
「ババリビビィ!」
「さあ、行くよ! こいつで終わりにしてやるわ!」
「もはや逃げ道無し、か。ならば耐えきるだけだ!」
前後から電撃の鎖で拘束され、動きを封じられるウォン。二体のトラッシュイールが現れ、尾の先端をそれぞれの相棒の背中に突き刺す。
「食らえ! ギガボルテクス……」
「ジ・エンド!」
パルジャとカンディが叫ぶと、凄まじい勢いで雷がほとばしる。全身が明るい緑色に発光するほどのスパークに包まれたウォンの命運は、果たして……。




