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298話─月蝕の堕天使

 ヘルガが退場し、キルト一人での戦い……とはならなかった。気を失っていたバイオンが、入れ替わる形で目を覚ましたのだ。


「I must have lost consciousness…… Sorry, kilt. I'll join in from here too.(気を失っていたか……。申し訳ない、キルト。ここからは私も加勢する)」


『まったく、寝ぼすけな奴だ。ヘルガは根性を見せて奴に一撃をくれてやったぞ。お前もそれくらいのやる気を出してもらわねば困る』


「まあまあ、そう言わないのお姉ちゃん。……さあ、行こう。今度はシャグニを倒す!」


 目覚めたバイオンと並び立ち、シャグニを睨むキルト。一方、堕天使はそんな二人を冷めた目で見つめていた。


「ムダだというのに。どうしてこうも、大地の民と闇の眷属は物わかりが悪いのか……。よかろう、ならお前たちの魂に直接教えてやる。あらゆる抵抗は無意味なのだとな!」


CONVERT(コンバート)LUNA(ルナ) ECLIPSE(イクリプス) MODEL(モデル)


 やれやれとかぶりを振った後、シャグニはその姿を変える。今度は逆に、全身を覆う鎧が黄金の輝きに染まった。


 胸元にあった太陽のマークは、三日月を示すシンボルに置き換わった。どこか狂気を醸し出している相手に、キルトは無意識に一歩後ずさる。


「なんだろう……さっきまでは直接的な殺意をぶつけてきてたけど、今回は違う……。ジメジメした嫌な気配を感じるよ」


「What a coincidence, I was thinking the same thing. Until now, and from now on...we must not let our guard down. If you show even the slightest chance, you will be killed at that moment(奇遇だな、私も同じことを思っていた。これまでも、これからも……油断は禁物だ。少しでも隙を見せれば、その瞬間に殺られる)」


「ふふふ、今度の我は少し違うぞ? さあ、見せてやろう。月蝕の堕天使(ルナイクリプスモデル)の力をな!」


『ソウルコマンド』


『クリエイトコマンド』


 ニヤリと笑った後、シャグニは魂を支配する能力を持った『霊魂のトパーズ』、そして創造を司る『創造のエメラルド』の力を発動する。


 直後、堕天使の両脇に一人ずつ緑色の影人間が出現する。影人間たちは、キルトとバイオンの姿へと変化してみせた。


「これは!?」


「ちょっとした余興だ、自分自身と殺し合うがよい。行け、ソウルシャドウよ!」


「If you think about what it does, it's a stupid magic trick. I thought for sure that I or kilt would be brainwashed and killed each other……but at that level, it wouldn't even be a sideshow!(何をするかと思えば、くだらぬ手品だ。てっきり、私かキルトを洗脳して殺し合わせるかと思っていたが……その程度では余興にもならぬ!)」


accel(アクセル) command(コマンド)


「バイオンの言う通りだ、今更自分の幻なんかに負けるもんか!」


『ブレスコマンド』


 影が襲ってくるなか、キルトとバイオンはサモンカードを使う。祝福された一撃と、超加速による連撃。それぞれの得意とする方法で、影を瞬殺する。


 その様子を見ていたシャグニは、余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。この程度は、彼自身も想定していたようだ。


「どうだ、瞬殺してやったぞ! さあ、次はお前の番だ!」


「ふむ、素晴らしい。だが……今のでお前たちの手札は学んだ。我の剛力と頑強さに打ち勝てるかな?」


ECLIPSE(イクリプス) AXE(アックス)


 シャグニはそう口にし、黄金に輝く両刃の大斧を召喚する。両の刃の中央には、一つずつ瞳のような不気味な模様があった。


 何かおぞましい力を秘めているかもしれない。警戒しつつ、キルトとバイオンは武器を構え堕天使目掛けて突撃していく。


「食らえ、ドラグネイルスラッシャー!」


『くたばるがいい、おぞましき堕天使よ!』


「ふむ、いい一撃だ。サモンカードで強化してあるな……だが、我の鎧は砕けぬ!」


「!? か、堅い! ブレスコマンドで強化してあるのに、刃が欠けるなんて……」


 必殺の一撃を叩き込むキルト。だが、いつかのサモンマスターゴーム戦のように、鎧に弾かれた刃が欠けてしまった。


 バイオンの方も似たような状況で、文字通り歯が立たない。シャグニの攻撃の速度自体は並程度だが……。


「次は我の番だ。ふうん!」


「うわっ!? ゆ、床にクレーターが!」


「I can't even get a hit with this. If you try to take it poorly, you'll just be crushed to death.(一撃も食らえないな、これは。下手に受け止めようとすれば、そのまま潰されて死ぬぞ)」


『自分で言った通り、パワーと耐久力は凄まじいものだな。だが、動きは前の姿よりも鈍くなった! キルト、そこを突ければ勝機はある!』


「いいや、ないさ。万に一つも! お前たちに勝ち目などはな!」


 たった一発の被弾も許されない、緊張感に満ちた戦い。僅かにでもかすれば、その瞬間手足の一、二本は持って行かれる。


 そのプレッシャーがのしかかるなか、キルトとバイオンは必死に攻撃を重ねる。だが、相手の鎧は頑強で思うように傷を付けられない。


「どうしよう、このままじゃこっちのスタミナが尽きる。そしたら、あの大斧にやられて終わりだ!」


「Don't give up, kilt! As long as our fighting spirit runs out, we will definitely be able to defeat him!(諦めるな、キルト! 必ず奴を倒すことが出来る、我らの闘志が尽きぬ限り!)」


 心が折れそうなキルトに、バイオンはそう喝を入れる。そして、渾身の一撃を叩き込み……剣が砕け散るのと引き換えに、相手の鎧に亀裂を入れることに成功した。


「I did it! As long as there's a crack, it's my special move.(やったぞ! 亀裂さえ入れれば、我が奥義で)」


「ダメだぞ? 今喜んでは。喜ぶのは我の息の根を止めてからだ。でないと……こうなるのだ!」


「Argh!(ぐはっ!)」


「バイオン!」


 死力を尽くした一撃を放ち、動きが鈍ってしまったバイオン。そこに、慈悲の無い一撃が叩き込まれる。玉座の間の壁に叩き付けられ、血の花を咲かせながら崩れ落ちた。


「可哀想に、あれでは即死だな。だが案ずるな、すぐにお前も後を追わせてやる」


「お前……よくも! 絶対にお前だけは許さない!」


『奴はキルトの良きライバルだった。バイオンの仇、討たせてもらう!』


 動かなくなったバイオンをせせら笑いながら、そうのたまうシャグニ。その態度が、キルトとルビィの怒りを爆発させた。


 ボロボロになった剣を振るい、果敢に堕天使を攻め立てる。狙うは、バイオンが亀裂を入れた鎧の胸元。その一点を、ひたすらに攻撃していく。


「そんなボロボロの武器で、我が鎧を砕けるとでも思っているのか? 愚かな、そのようなことは出来ぬ! ルナティックオーバーラッシュ!」


『チッ、腹立たしいが確かに奴の言う通りだ。奴を仕留めるには、奥義を放つしかないが……』


「とてもじゃないけど……そんな隙がないよ! ちょっとでも気を抜いたらやられちゃう!」


 斧を振るい、強引にキルトの攻撃を終わらせるシャグニ。今度は逆に彼が攻め立て、キルトの息の根を止めんと迫る。


 回避に専念しなければ、秒で死ぬ。ゆえに、キルトは奥義を放てずにいた。だが、この状況が続けばスタミナ切れでやはり死ぬ。


 万事休すか、と思われたその時だった。死んだと思われたバイオンが立ち上がり、最後の力を振り絞ってシャグニを後ろから羽交い締めにした。


「貴様、まだ息があったのか!」


「Oh, yes. I haven't died yet, like the great Granzam! I will never fall until I have won!(ああ、そうとも。私はまだ死なない、偉大なるグランザームのように! 勝利を得るまでは決して倒れない!)」


『キルト、チャンスだ! バイオンが奴を抑え込んでいる間に奥義を!』


「でも、そしたらバイオンまで巻き込んじゃうよ!」


 大魔公としての意地が為せるのか。今にも命の炎が燃え尽きそうだというのに、バイオンは遙かにパワーが上のシャグニを完全に抑え込んでいた。


 今なら、ルビィの言う通り奥義を使える。だが、バイオンにはもう逃げるだけの体力はない。まず間違いなく、巻き添えになり死ぬだろう。


「Don't get lost! If I can save the world with just my life, I'll be happy! Besides…… I'm sure he'll be in your circle? Someone who has the power to resurrect the dead. So don't be confused! Defeat Shagni with me!(迷うな! 私の命一つ、世界を救えるなら喜んでくれてやる! それに……貴公の仲間にはいるだろう? 死者蘇生の力を持つ者が。だから戸惑うことはない! 私ごとシャグニを倒せ!)」


「バイオン……。分かった。君の決意、ムダにはしない!」


『アルティメットコマンド』


 バイオンの想いを汲み、キルトは奥義を発動する。ルビィに抱かれ、天井近くまで飛翔し……直後、炎の竜となって急降下していく。


「食らえ! バーニングジャッジメント!」


「おのれ……離せ、この死に損ないめ!」


「Yes, that's fine. If I am to be buried by a nobleman... it will be an honorable end.(そうだ、それでいい。貴公に葬られるのなら……誉れ高き最期となろう)」


「てやああああああ!!!」


 バイオンの命を賭けた献身に、キルトは無意識に涙を流す。大声で叫びながら、奥義をシャグニに炸裂させた。爆炎が玉座の間を包み、やがて消える。


 訪れた静寂のなか、立っていたのは……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 駄目だ・・・倒せてないフラグだ!バイオンを盾にしただろこれ!?
[一言] 遅刻代の仕事をして見せたかバイオン(ʘᗩʘ’) お前の活躍は草葉の陰(霊園)でグランザームが見てる筈だよ(´-﹏-`;) そして死んでもそのグランザームの孫が何とかしてくれるから(⌐■-■…
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