289話─髑髏の魔城! サモンマスターエンティティ!
甲板に出たキルトたちは、イシュナルギへ降り立ったスケルトンたちを迎え撃つ。主砲はサモンマスターエンティティのものに劣らない、強力なバリアで守られている。
ゆえに、主砲を破壊するには船内に乗り込んでブリッジにあるバリアシステムを停止……あるいは破壊しなければならない。
が、そんなことをキルトたちがさせるわけもなく。双子が召喚したゲート型のスケルトンでブリッジへの扉を塞ぎ、殲滅を開始した。
「さあ、どんどんやっつけちゃうよ! みーんな消滅させてやる! ドラグネイルスラッシャー!」
「こんな大乱戦なんて久しぶりね、腕が鳴るわ! 食らいなさい、ミノスクラッシュ!」
次々と強襲してくるスケルトンの群れを、キルトやエヴァが打ち倒していく。その近くでは、フィリールが囮となって敵を引き寄せていた。
『ヘイトコマンド』
「さあ、私の元に集うがいい! そして思いっきりタコ殴りにしてくれ!」
「オオオオオ……!」
『♣2:CLASH』
「あいつやべえな……。まあ、おかげで隙だらけなスケルトンを潰せるけどよ」
「……まあ、なんだ。そういう性癖なんだ、そっとしておいてあげてほしい」
相も変わらず、ドM魂を全開にしてスケルトンの群れにボコボコにされるフィリール。耐久力の高さゆえに、どれだけ殴られても無傷だった。
レドニスは彼女への攻撃に夢中なスケルトンを背後から叩き潰しつつ、軽く引いていた。そんな彼に、ウォンが優しく声をかける。
もう手遅れだから優しく見守ってやってくれ、と。レドニスは静かに頷き、フィリールを生暖かい目で見ながら殲滅を続ける。
「クハハハ! いいぜ、どんどん身体があったまる……戦いってのはこうでなきゃなあ、ええ!?」
「わー、凄いよめーちゃん。あのおねーさんスケルトンをザクザクみじん切りにしてるー」
『おとーさんが見たらあんぐりしちゃうかもね! ちょっとこわーい』
そんななか、大乱闘をもっとも楽しんでいるのが案の定ヘルガであった。襲ってくるスケルトンたちをちぎっては投げ、短剣一本で撃滅している。
とんでもなくエキサイトしているヘルガを見て、スケルトン使いである父がいたら唖然とするだろうなあと考えるイゴールとメリッサ。
自分たちの劣勢を悟ったスケルトンたちは逃げ出そうとするが、そこにアスカが立ち塞がる。
『アルティメットコマンド』
「さあ、大掃除の時間やで! 悪いスケルトンはみーんな、ウチとミステリアグルが始末したるさかい覚悟しいや!」
「キシャー!」
召喚されたミステリアグルは、尻から糸を出して大きな蜘蛛の巣を作り出す。アスカはそこに生き残っているスケルトンたちを叩き込み、封じ込めた。
「よーし、これで全部やな。いくで、奥義……後家蜘蛛絞殺刑!」
「ギガァァ……ア……」
「やったねアスカちゃん! これでスケルトンは全滅だよ! 後は……」
『あの髑髏城を守る二枚のバリアを破壊すれば終わりだな』
蜘蛛の巣が締まり、スケルトンたちは粉微塵に粉砕されて消滅した。これで、ひとまずイシュナルギの防衛は成功した。
一息ついたキルトとルビィが敵の方を見ると、ちょうど二枚目のバリアが破壊されたところだった。このまま一気呵成に攻めようとした、その時。
『ナックルコマンド』
『コレイジョウ……サセヌ!』
「なんたありゃ、デッカい骨の……ゲンコツ? なあ、まさかとは思うけどよ……」
『……クタバレ!』
「わーっ! パンチが来たー!」
レーザーは避けられ、スケルトンでは相手にならない……ならばと、サモンマスターエンティティは骨でできたり巨大な両手を呼び出す。
堅く拳を握り、直接イシュナルギをブン殴って轟沈させるつもりなのだ。いくら何でも、ミニサイズの隕石に匹敵するものに殴られればタダでは済まない。
船体を守るバリアを貫かれ、そのまま致命的な損害を被りかねないのだ。ブリッジにいたミューは、艦内放送を使いキルトたちに呼びかける。
『皆様、これより相手の攻撃を回避します。外に放り出されないよう、ワイヤーベルトを装着してください』
「あっ、床からなんか出てきおったで! これを着ければええんやな、これでよし」
『全員装着出来ましたね? それでは……とんでもなく揺れますので、お気を付けください』
ミューのアナウンスが入った直後、キルトたちの足下の床が開き装置に巻かれたワイヤーベルトが姿を現した。急いでワイヤー先端のフックを装着し、安全態勢を整える。
どうやって全員が終わったのか確認したのかは分からないが、少ししてミューはそうアナウンスする。直後、船体が急旋回し飛んできた拳を避けた。
「うわわわわ!? よ、横に……ぐえっ!」
『キルト、大丈夫か!? 全く、ミューめ。仕方ないとはいえもっと安全運転を心がけぬか!』
「ふむ、今のはいい衝撃だった。ワンモアプリ」
「代わりに俺にド突かれとけアホウ!」
「おっふ❤」
衝撃でキルトたちの身体が横に吹っ飛び、装着したワイヤーベルトに引っ張られてダウンする羽目に。あいかわらずドMるフィリールに、レドニスが怒りの飛び膝蹴りをかます。
「ミュー、主砲がクールタイムに入った。しばらくは攻撃出来ないぞ」
「ふむ、であれば……マスターとミス・フィリールを招集しましょう。ポチッと」
「うぷ、吐きそ……あれ!? ブリッジに戻った!?」
「むう、いい感じに揺れを楽しんでいたのだが……」
主砲の角度と狙撃中継衛星の配置を変え、飛んでくるゲンコツを破壊しようとするミューたち。が、しばらくして肝心の主砲がクールタイムに入ってしまう。
無理矢理砲撃を続ければ、砲身が焼け付き……最悪溶融することもあり得る。ゆえに一旦レーザーを止め、代わりにキルトとフィリールが転移魔法でブリッジに転送された。
「お手数おかけして申し訳ありません、マスター。あの骨の拳を防ぐため、お力をお借りしたいのです」
「ははあ、読めたよ。フィリールさんのウォールコマンドを、僕のブレスコマンドで強化してアレを防ぐんだね?」
「はい、流石マスター……聡明であらせられます。そちらの被虐癖に喘ぐしか取り柄のない、黄金に輝く豚も見習ってほしいものですね、全く」
「ドギツい罵倒……キくぅ❤」
『こんな局面でもこやつはまるで変わらんな……』
キルトたち三人のやり取りを見て、ドルトとサウルは笑い転げる。が、いつまでもそんなことをして遊んでいる余裕はない。
ブリッジの左右にあるスロットの前にそれぞれキルトとフィリールが立ち、新たにサモンカードを読み込ませ守りを固める。
『ウォールコマンド』
『ブレスコマンド』
「さあ、来たよデッカい盾が! これであのゲンコツも……よし、バッチリ防げてる!」
「ククク、ならオレがちょいと手助けしてやるよ。このサポートカードを使いな。ほらよ」
『サポートコマンド』
巨大なタワーシールドが虚空に出現し、竜の炎によって強化される。飛んできた拳を受け止め、そのまま跳ね返すことに成功した。
そのことを喜んでいると、マーキングによるテレポートでヘルガがキルトの背後に現れる。空いているスロットに自身のサポートカードを押し込み、盾を分裂させる。
「わっ、ビックリした! いきなり後ろに出てこないでよ、ヘルガさん!」
「ククク、お前の驚く顔はソソる……おっと」
「今すぐマスターから離れなさい、この【ピー】。さもなくば尾てい骨ごと尻尾を引き抜きますよ」
『うむ、やれやれ! この節操のない駄犬に仕置きをしてしまえ!』
『わわわ、今はそんなことやってる暇ないよ~!』
主に気安く触れるヘルガに回し蹴りを放ちつつ、威嚇するミュー。蹴りを避けたヘルガがニヤつくなか、敵が新たな動きを見せる。
『コザカシイ……コレデシネ!』
『アルティメットコマンド』
「むっ、奥義を撃つつもりだね! でもそんなことさせないよ、対処するのが面倒だからね!」
【REGENERATE】
【Re:NIFLHEIMR MODEL】
「こいつを食らえ!」
【フリーズコマンド】
打つ手が無くなりつつあるサモンマスターエンティティが、奥義によって逆転しようとしている。それに気付いたキルトは、素早くリジェネレイトした。
普段は卑劣に感じてほぼやらないが、最後の決戦を控えた今は別。情け容赦なくサモンマスターエンティティを凍結させ、奥義の発動を封じた。
「おっ、やったな! そのままトドメを刺しちまおうぜキルトさん!」
「うん、行くよお姉ちゃん! 魔力を貸して、あいつを倒す!」
『任せろキルト。我はいつだってお前のために全力を出す!』
【アルティメットコマンド】
相手の動きを封じ、トドメを刺す。ルビィの魔力を込めた奥義のカードをスロットに差し込むと、イシュナルギの上空に巨大な氷の塊が現れた。
「おおっ!? なんやなんや、キルトとフィリールはんが消えたと思うたら氷が出てきおったで!」
「なるほど、キルトの仕業だな。多分、これを敵にぶつけて勝負を決めるつもりだろう」
「よーし、一気にやっちまえー!」
甲板にいる仲間たちが見守るなか、キルトは魔力を操作して氷の塊をサモンマスターエンティティへ突撃させる。
凍てつく流れ星が、巨悪の潜む髑髏の城へと落下していく。その悪事に、最後の裁きを下さんと。そして今、三枚目のバリアを破壊し奥義が炸裂した。
「食らえ! コキュートススターシュート!」
『ウ、グ……オオオアアァ!!』
「敵の沈黙を確認。ただちに乗り込みます、ブースター全開!」
ヘルガと取っ組み合っていたミューは、機能停止したサモンマスターエンティティに向けてイシュナルギを高速で向かわせる。
最終決戦の前奏曲が終わり、ついに始まる。敵の拠点を舞台にした、最後の戦いが。




