287話―出航! 次元の狭間へ!
運命の日の朝、キルトたちは支度を整え覇導船イシュナルギのもとに集結する。戦いに向かうのは、ガーディアンズ・オブ・サモナーズの正規メンバー。
それに加え、ヘルガ。ルヴォイ一世とアルセナも参加の意を表明したが、キルトによって断られた。二人にはゼギンデーザを導く仕事があるから、と。
そのため、せめて見送りにとルヴォイ一世やシュルムたちが集まっていた。二人のサモンマスターは、キルトに自分たちのカードを渡す。
「キルト、朕たちは共に行けないが……代わりにこれを託そう。我々の想いは、このカードと共にある」
「ワタシたちは祈っています、全員が生きて帰ってこられますようにと」
「二人とも、ありがとう。約束します、僕たちは一人も欠けずに帰ってきます!」
ルヴォイ一世とアルセナにそう答えた後、キルトは集まった家族の方へ向き直る。シュルムにメレジア、エルミア。
三人を見つめ、キルトは口にする。行ってきます、と。そして、必ず勝って無事に帰ると。
「行っておいで、キルト。私たちは信じてる、必ず君が帰ってくるとね」
「大丈夫、君は私たちの自慢の息子だからね。たとえ血が繋がっていなくても、家族の愛は変わらない! だから、きっと大丈夫さ」
「ええ、お父様とお母様の言う通りですわ。キルト、帰ってきたら家族みんなでお祝いしましょう? 約束ですわよ」
「……うん。絶対に帰ってくるよ。だから、美味しいご馳走をたくさん用意しておいてね!」
「キルトはともかく、我は大食らいだからな。中途半端な量ではすぐなくなるぞ!」
「もう、お姉ちゃんったら!」
ルビィの小ボケで和やかな空気になった後、改めてキルトたちはイシュナルギに乗り込む。コントロールルームに向かい、クイナが持ってきたデータカードをキカイに差し込む。
「これでよし、と。目標値点、次元の狭間……ポイント4993-12-66! さあ、出航だー!」
「おー!」
コントロールシステムに座標データがインプットされ、タナトスの潜む居城の場所が判明する。自動操縦システムを起動させ、キルトはイシュナルギを浮かび上がらせる。
シュルムたちが見守るなか、イシュナルギは空にゲートを開きそこへ突っ込んでいく。次元の狭間に入り込み、タナトスの元へ向かう。
「さあ、待ってるといいよタナトス。今日という日をお前の命日にしてやる!」
コントロールルームにある窓から次元の狭間の景色を眺めながら、キルトはそう呟いた。
◇─────────────────────◇
「我らが創造主よ、今日は喜ばしき報告があります。開発を進めていた、フィニスの代わりとなる兵器……サモンマスターアポリオンの装具が完成しました」
『……ほう。フィニスそのものではなく、代わりとなる装具か。聞かせよ、我が満足いくモノであるのかを』
その頃、タナトスは自身の主……【狭間の苗蛆】の元へやって来ていた。三百年前、主君より課せられし使命を果たすために。
自身のすぐ横に置いてある、右半身が金に、左半身が銀でカラーリングされた鎧を差し出す。鎧の胸元には、サモンカードを挿入するスロットが付いていた。
「ここにありますは、私が開発し改良を重ねた鎧タイプのサモンギアでございます。我が叡智を惜しみなくつぎ込み、七つのアブソリュート・ジェムの力を操れるように仕上げました」
『素晴らしい! 我やウォーカーの一族は、かの宝石の力を扱えぬ。だが……その鎧を次代のフィニスとなる相応しき者に与えれば』
「フィニス本人と遜色なき活動が可能となります、我が主よ。本契約モンスターも、とびきり強力なものを二体用意してございます。お気に召しましたならば、お受け取りください」
『我の想像以上の働き、見事であるぞ。このサモンギアは我が預かろう。相応しき者が現れた時、使わせるとしよう』
タナトスの説明を受け、白き蛆は八つの瞳を輝かせる。念動力で鎧を引き寄せ、黒い糸で作られた繭の中に大事に仕舞った。
『他の五星も、大半がフィニス本人の復活ではなく後継として相応しき者を見出す計画にシフトした。が……お前のようなやり方をする者はおらぬ。これは盲点であった』
「お褒めに与り光栄にございます。ところで、他の五星の進捗状況をお聞きしても?」
「『よかろう。真っ先に手柄を立てたのだ、望みを叶えようぞ』
蛆の推し進める、フィニス再臨計画。ウォーカーの一族の最高幹部たる渡りの六魔星の中で、タナトスが真っ先に成果を挙げた。
残る五人は、未だそれぞれが推し進めるフィニス再臨の策を行っている最中なのだという。タナトスの問いに、蛆は一人ずつ状況を教える。
『まずは一人目、【輪廻星】のネイシアだが……かの者はテラ=アゾスタルに住まう者を転生させ、その中から次代のフィニスとなるに相応しい者を探している』
「そのことは把握しています。彼女が蓄積したノウハウを頼りに、私も天王寺アスカと泰道亮一をこちらへと転移させましたので」
『あやつはお前と違い、失策を重ねすぎた。配下たる転生・転移者をほぼ全員失い、我の存在までをも敵対者に悟られ……不甲斐ないものよ。ゆえに、先日最後通牒を突き付けた』
タナトスと違い、他の幹部はかなり苦労しているようだ。その中でも、とくに不甲斐ないと不況を買う者がいるらしい。
『まあよい。二人目、【闘争星】のエゴ。奴は大地を丸々一つ掌握し、己が王朝を創り上げた。次代のフィニスとなる存在を、果てしなき闘争の中で生み出すために』
「それはまた、気の遠くなるような話です。全く、彼は何十……いや、何百年かけるつもりなのやら」
『焦る必要はない。時は我らにとって無限に等しいほどに存在しているのだから』
「ええ、それは……。主よ、どうやら我が宿敵が私の拠点に近付いてきている様子。迎撃のため、これにて失礼させていただきます」
話の途中、タナトスは自身の城へと近付いてくるキルトたちの気配を察した。謁見を終え、一礼してから玉座の間を去る。
「……来るがいい、キルト。完成したアポリオンギアが一つだけだと思うな。お前との決着をつけるために用意してあるぞ。予備をもう一つな。フフフフ」
自身の拠点へと帰る道すがら、タナトスはそう呟き笑う。その頃、キルトたちはというと……。
「主砲発射! 敵が船に乗り込んで来る前に全滅させちゃえ!」
「やれやれ、薄々そうだろうなとは思ってたけど。やっぱり妨害に来たわね、ウォーカーの一族が。面倒ったらありゃしないわ」
どこからやって来たのか、そこかしこから湧き出てくるウォーカーの一族の戦士たちに襲われていた。何もない空間に次々と黄金の門が現れ、そこから敵が飛び出してくる。
ミューがコントロールパネルを操作し、イシュナルギの主砲を起動させ迎撃を行う。敵だった時の圧倒的な火力により、戦士たちは次々と返り討ちにされていく。
「侵入者め、死……うぎあっ!」
「クソ、なんなんだあの飛行戦艦は! あんな奇天烈な威力の攻撃、防げるわけがねえ!」
「だがあのお方の命令には背けないぞ! 俺たちはこの次元の狭間を守る義務があるんだからよ! 一か八かだ、突撃しろ!」
彼らは蛆の命令によって、次元の狭間をパトロールしているらしい。蛆の命令に逆らうことは出来ないようで、次々にムダな突撃をしてくる。
「また死ににきおったで、やっこさんたち。太平洋戦争の授業で見た、特攻兵の映像思い出して気分悪うなるわ」
「見たくないなら、客室に行っててもいいんだぞ? 幸い、私たちが操作する必要はないわけだからな。見張りを残して後は引っ込んでてもいいだろう」
「では、わたくしがここに残ります。緊急事態が起きた時にお呼びしますので、皆様は英気を養ってください」
イシュナルギに突撃しては、レーザーで返り討ちにされていくウォーカーの戦士を見てアスカが嫌悪感をあらわにする。
そんな彼女へのフィリールやミューの提案により、一行は船内にある客室にて休むことに。次元の狭間を進み、タナトスの拠点にたどり着くまで……あと少しだ。




