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282話─ミューの審判

「なかなかしぶといな、だがいつまで避け続けられるかな? いくら自動人形(オートマトン)とはいえ、スタミナは無限じゃないだろう!」


「そうですね、確かにわたくしも普通の方々のように疲労します。まあ、その時が来るまでにお前を排除しますがね」


 甲板に降り注ぐ隕石、そしてハリファーの放つ火炎弾を避けながらミューはそう口にする。キルトとアリエルに造られた彼女のスタミナは、無限に近しい。


 それでもいずれ限界は来るが、そんなのは遠い先のこと。まだまだ余裕たっぷりではあるが、だからこそ油断は禁物。何故なら……。


「どこまでも減らず口を利くじゃないか。フン、いいだろう。なら沈黙させてやる。こいつを使ってな!」


 鎖骨の辺りまで伸びた、顔の右半分を覆う前髪をふぁさっとなびかせつつハリファーはダイナライズキーを取り出す。


 これこそが、ミューがもっもと警戒していた敵の隠し球。キルトにインプットされ、彼女はダイナライズの力を強く警戒していた。


「来ますか……流石にこの状況での妨害は無理ですね。まあ、勝てばいいだけのことですが」


「やってみろ。出来るものならな!」


『ダイナライズ:アニマクロス』


『ディセプティス・ラース……オン・エア』


 腕時計にキーを差し込み、ゆっくりと回すハリファー。カチリと音が鳴った後、一気に姿が変わる。鎧の色が純白に変わり、さらに温度が上がる。


 凄まじい高熱を発しているようで、陽炎が発生していた。あまりの暑さに、ミューの耐熱性能を以てしても耐えきれず顔をしかめてしまう。


「なんという暑さ……内部機構が当てられて熱暴走しそうですね、これは」


「ふうううううう……。さあ、見せてやろう。灼熱の地獄をな! ドロドロに溶けて死ぬがいい!」


『プロミネンスコマンド』


 テンションが上がったハリファーは交差する炎の帯が描かれたカードを取り出し、サモンギアに読み込ませる。すると、炎の鞭が現れた。


 バズーカを捨て、二刀流ならぬ二鞭流の構えを取ったハリファーは走り出す。隕石と合わせ、自らの手でミューを滅するつもりだ。


「死ぬがいい! プロミネンスウィップ!」


「温度測定……なるほど、二百度を超えていますね。溶けはしませんが……ここは避けておきましょう」


 ミューのボディは、六千度までの高熱に耐えることが出来る。よって、たかが三桁程度の温度など屁でもない。ぬるま湯のようなものだ。


 が、それはそれとしてせっかく綺麗に造ってもらったボディをわざわざ破損させるのは嫌なのだ。そのため、一旦回避に集中する。


 相手の攻撃パターンをフェイントも含め完璧に解析し、あらゆる攻撃を回避出来るようにプログラムを構築しはじめた。


「かなりの身のこなし……サモンマスター鏖魔(オーマ)には劣りますが、それでもハイレベルですね」


「当然、俺は精鋭部隊Ω-13の一人だからな。こんな芸当も出来るのさ! バーニングバインド!」


「! これは……!」


 ある程度攻防を経たところで、ハリファーが新たな動きを見せる。炎の鞭を途中から枝分かれさせ、ミューの両手首に巻き付けたのだ。


 じわじわと腕を焼かれつつ、動きに制限をかけられる事態となった。完全に動きを封じられれば、隕石の餌食になってしまうだろう。


「さあどうする? その余裕も、そろそろ……なにっ!?」


「多少驚きましたが、この場合の最適解を導き出すのは簡単なことですね。こうやってお前と密着してしまえば……隕石は落とせませんね?」


「貴様……! こんな手を使うとは!」


 普通なら、鞭を振りほどいて離脱するだろう。しかし、ミューは全く違う行動に出た。あえて鞭を掴み、そのままハリファーに接近する。


 相手と密着することで直接攻撃を封じ、さらに隕石による一方的な蹂躙をも防ぐ一石二鳥の策。キルトに造られた人工頭脳は、ピカ一の冴えを見せていた。


「考えたな……確かに、この状況ではメテオを落とせない。俺が巻き添えになるからな……だが! お前も反撃出来まい!」


「いいえ? 可能ですよ、わたくしは。カードの読み込みは、完全オートメーション化されていますので。では、そろそろ終わりにしましょうか」


『アルティメットコマンド』


 ハリファーの動きを封じるため、鞭ごと相手の手首を掴んでいたミューはデッキホルダーを稼働させる。カードを自動で読み込み、奥義を発動した。


 ボディの内部からモーター音を響かせながら、ハリファーを掴んだまま天高く跳躍する。このままではまずいと判断し、ハリファーは一か八か隕石を落とす。


「そうはさせるか! 俺はまだやり残した研究がたくさんある、こんなところで死ねやしないんだ!」


「ぐっ! 悪あがきを……!」


「ハッ、その悪あがきのおかげで脱出出来たぞ。俺の奥義を食らえ!」


 自爆のリスクを乗り越え、ミューの背中に隕石を直撃させたハリファー。怯んだ隙を突いて奥義を発動しようとするが……。


「させませんよ。マスターにお造りいただいたボディに傷を付けたこと……決して許しはしません!」


「ごふっ!?」


 隕石の直撃で背中に傷が付いたことに怒ったミューが、素早くアッパーを繰り出す。ハリファーの奥義発動を阻止しつつ、相手の顔面を掴む。


「わたくしの全ては、愛しき創造主……キルト・メルシオン様のもの。お前のような卑しい者が汚してよいものではありません!」


「うぐおおおお!!! ま、万力みたいなパワーしやがって……!」


 ハリファーを締め付けながら、ミューは相手を掴んでいる方の腕を変形させる。腕を伸ばし、格納されていたパーツを展開していく。


 そして、人一人がちょうどスッポリ入る棺桶のような形状へと変化させた。これでもう、ハリファーは反撃出来ない。


「クソッ、まずい……ここから出ないと!」


「ムダですよ、生きてそこから出るすべは一つとしてありません。わたくしという棺桶に抱かれ、死の世界へと旅立ちなさい!」


「させるか! メテオレイン!」


「今更遅いですね! 奥義、フルメタルメイデン・ハンマー!」


 ミューは棺桶と化した腕ごと身体を下に向け、下半身から魔力を噴射して勢いよく落下していく。そして、甲板へと叩き付けられる。


 着地と同時に凄まじい揺れが発生し、さらに棺桶の内部に鋭い刃がいくつも生える。その全てが、内部に閉じ込められたハリファーを貫き、命を奪った。


「ぐ、ガハッ……」


「……生命反応の消失を確認。ミッションコンプリート……これより、マスターと合流します」


 敵対者の死を確認した後、ミューは変形させていた腕を元に戻す。ハリファーの死体の襟を掴み、無造作に甲板から外へ放り投げる。


 これで用は済んだと、船内に向かおうとするが……。


「なんだ、もう終わってやがるのか。祭りの匂いを嗅ぎ付けて来てみりゃあ……フン、いるのは鉄臭え女だけか」


「あら、貴女は……ああ、マスターのストーカーをしている【ピー】女ですか。もう貴女の出番はないので帰っていただいて結構です。そこから飛び降りるのが最短ルートですよ。死への、ですが」


 そこへ、祭り……もとい戦いの匂いを嗅ぎ付けたヘルガがマーキング魔法を使いテレポートしてきた。そんな彼女に、ミューは凄まじい塩対応をする。


 生まれてすぐにメモリーデータを参照した結果、主であるキルトへマーキングをしたことを知ったため、激しくヘルガを嫌っているのだ。


「ほお……? テメェ、誰に向かってそんな口利いてやがる? ちょうどいい、オレと遊べよ。だいぶイライラしたからな、お前で発散してやる。それとも怖いか? オレが。え? 頭から【ピー】まで鉄臭えスクラップさんよ」


「は? 随分と舐めたことをおっしゃられますねこの【掲載禁止ワード】は。かしこまりました、ではお相手してあげましょう。……毛の一本も残さず消し去ってあげますよ、この【NGワード】!」


 売り言葉に買い言葉、一気に険悪を飛び越えバチクソに殺意を向け合うミューとヘルガ。キルトとの合流そっちのけで、ヘルガと大喧嘩を繰り広げる。


 たっぷり十数分、制圧を終えたキルトが戻ってくるまでの間……二人は延々戦い続けるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、喧嘩はアカンでしょうよ……
[一言] 創造主への敬愛は半端無いのはよくわかったけど(ーдー) お前さんを作るのにはアリエルと協同で作っただけにキルトが父親でアリエルが母親なんじゃ?(゜ロ゜)
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