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279話─磁力コンビを打ち破れ!

 モルド、キッシュ、メルフィン。立て続けにタナトスの刺客たちが敗北していくなかで、エヴァと双子は残る敵二人と戦っていた。


 イシュナルギからの砲撃をフィリールとプリミシアが身を呈して防いでいる間に、敵を始末する。そんな作戦を立てているのだ。


「むう……キッシュとメルフィンの生命反応が消えたな。やられたか、あいつらは」


「フン、いつまでもシモンズ隊長の仇討ちにこだわってるから足を掬われ……ぬっ!」


「へえ、受け止めたの。アンタなかなかパワーがあるじゃない」


 エヴァの放った斬撃を、相手をしている男が受け止めてみせた。男は、鈍い銀色の光沢を持つ鎧を着ている。


 右肩には、青色のNの文字がプリントされた肩当てが備えられている。左の頬にある大きな傷痕が、歴戦の猛者であることを示していた。


「あんたに褒められるたあ光栄だな、大魔公エヴァンジェリン。ま、あんたからすりゃオレたちみたいな木っ端なんぞ……おっと」


「ごちゃごちゃうるさいわね、でもまあよく分かってるじゃない。生憎、アンタみたいな奴の名前なんて知らないしどうでもいいの! 食らいなさい、エクスビートスピーク!」


 空中戦をするため、リジェネレイトしたエヴァはギター型の斧を掻き鳴らす。破壊音波が放たれ、敵対者へと突き進んでいく。が……。


「ムダだぜ、そんなもんはこのトラスト様……いや『サモンマスターマグナノース』にゃあ効かねえ!」


「! 直撃を食らって無傷……なるほど、自信満々に豪語するだけはあるわね」


 男……トラストは一切避ける素振りを見せず、破壊音波の直撃を食らってみせた。両腕を広げて無傷であることをアピールし、ニヤリと笑う。


 エヴァが警戒心を強めるなか、トラストの相方と戦っている双子の方にも変化が訪れようとしていた。相棒と同じ銀の鎧を身に着けた男が動く。


「なかなかやりますね、ですがこの私……ニブリスこと『サモンマスターマグナサース』には勝てません。ぬうん!」


「わっ!? 斧が勝手に吸い寄せられる~!」


 スキンヘッドの男、ニブリスの鎧の左肩に取り付けられた赤色のSの文字が描かれた肩当てが光を放つ。すると、強い磁力が発生した。


 イゴールの持っている斧が磁力に反応し、相手の方へ引き寄せられてしまったのだ。ニブリスは飛んできた槍をキャッチし、魔力を流し込み破壊する。


「これでもう丸腰ですねえ、では死になさい!」


『ハンマーコマンド』


「むー、そういうイジワルするならこっちにも考えがあるんだぞ! めーちゃん、こーたいだよ!」


『はーい、任せて!』


 球状の鎚頭を持つ赤色のハンマーを召喚し、ニブリスはイゴールに遅いかかる。相方がエヴァを妨害している間に、一人仕留めるつもりだ。


 が、そうはさせまいと双子も反撃に出る。シームレスに表出している魂を切り替え、サモンマスターダークサイドに変身した。


『スピアコマンド』


「はーい、金属がダメなら骨で魔槍ぐらきしおす・れぷりかを作っちゃうもんね! てやっ!」


「な……ぐっ! なるほど、子どもだからと侮ると痛い目を見るわけですね。腹立たしい」


 相手の突撃に合わせ、槍を突き出しカウンターを叩き込むメリッサ。直前で身を捻り、ニブリスはギリギリで突きを避けた。


 だが、不意を突かれたことで完全な回避には至らず左の脇腹を切り裂かれた。舌打ちをしつつ、相棒の元へと退避していく。


「おうおう、戦いながらチラチラ見てたぜ。あんながきんちょに出し抜かれるたあ、ちっとばかし修行が足りねえんじゃねえのか?」


「そのようですね、まったく。Ω-13の一人として恥ずかしい限り。ゆえにここからは……」


「ハッ、()()()()をやるってか? いいぜ、やってやろうや」


 二人で集まり、何かを話すニブリスとトラスト。一方、エヴァも双子の元へ向かい合流する。ここからは二対二のタッグマッチだ。


「見てたわよ、よくまああんな器用な真似が出来るわね。感心したわ」


「ふっふーん! もっと褒めてもいーよ!」


『褒めて褒めて!』


「はいはい、凄いわよ二人とも。……にしても、あっちのフサフサの方。まだサモンカードを使ってないのよね……警戒しておかないと」


 褒められてはしゃぐ双子を横目に、エヴァは敵コンビ……特に先ほどまで対決していたトラストに対して強い警戒心を抱く。


 防御系のカードも使わず、素の耐久力だけで自身の攻撃を無効化してきたのだ。それに加え、カードを一枚も使っていないとあれば警戒するに超したことはない。


「いい? 二人とも。さっきは上手いこと反撃出来たけど、あんまり調子コいてるとその内痛い目に合うわよ。だから気を引き締めてかかるわよ。分かった?」


「はーい!」


『はーい!』


「ホントに分かってるのかしらね……まあいいわ。行くわよ、あいつらを挟み撃ちにするわ!」


「りょーかい!」


『かい!』


 エヴァはイゴールとメリッサを諫めつつ、二手に別れて敵コンビを攻撃する。危なくなったら即離脱、相手の実力が読めないうちは深追いはしない。


「音波が効かないってんなら直接ぶった斬ってあげるわ! ソウルビートスラッシュ!」


「やっぱりそう来ると思ったぜ。ニブリス、パワー全開だ! オレたちの力を見せ付けてやろうぜ!」


「ええ、もちろんですとも!」


『マグネットコマンド・プラス』


『マグネットコマンド・マイナス』


 まずは様子見と、エヴァがトラストに攻撃する。それを待っていたとばかりに、ニブリスと共にサモンカードを使うトラスト。


 トラストは青色のN、ニブリスは赤色のSが描かれたカードを取り出した。それを、それぞれの肩当てにかざし読み込ませる。


 すると、強力な磁場が発生しエヴァとメリッサが引き寄せられる。エヴァは斧が、メリッサは鎧が磁力に反応したのだ。


「ちょ!? この位置はまずい!」


「二人仲良くぶつかって死にな! マグネットコンビネーション!」


 協力して磁力を操り、エヴァたちを同士討ちさせようと狙っているようだ。お互いの身に着ける金属に引き寄せられていく。


 このままぶつかれば、特に軽装なエヴァは甚大なダメージを受けることになる。万事休すかと思われた、その時。


「ひゃー! だめー、止まれなーい!」


「大丈夫よ、こんなこともあろうかと……マグネキャンセラー!」


 磁力に引かれ、悲鳴を上げるメリッサ。トラストたちが高みの見物を決め込むなか、エヴァが魔法を炸裂させた。


 すると、二人を支配していた磁力が消え自由に動けるようになる。急停止したエヴァはきびすを返し、トラストに一太刀浴びせる。


「てりゃあああ!!」


「ごはっ! バカな、あり得ねえ! オレたちの磁力をそう簡単に攻略出来るわけが……」


「ハッ、残念だったわね。アタシが仕えてる王にはねぇ、ラインハルトっていう物凄い磁力使いがいるわけよ。彼から学んでるのよ、磁力消去の魔法をね!」


「うごっ!」


 まさかの事態に唖然としてしまい、回避動作を取れず直撃を食らうトラスト。たいした傷は負わなかったが、吹き飛ばされ動揺する。


 ニブリスにも一撃を食らわせつつ、エヴァはしてやったりと言わんばかりに笑う。彼女が仕える王、コリンには十二星騎士と呼ばれる仲間がいる。


 そのうちの一人、ラインハルトと呼ばれる人物が磁力の使い手なのだ。彼との鍛錬で、エヴァは磁力を打ち消す魔法を授けられた。


 もっとも、その魔法があってすらほとんど全ての試合で敗北を喫していたが。エヴァが弱いのではなく、ラインハルトが強すぎるのだ。


「やったー! エヴァちゃんかっこいー!」


『いえー!』


「クソッタレ、やってくれたな! ならダイナライズしてぶっ殺してやる!」


「一度ならず二度までも……この屈辱は必ず晴らさせてもらいますよ!」


「フン、やれるもんならやってみなさいよ。アンタらなんてね、余裕で返り討ちにしてやれるんだから!」


 双子に喜ばれ、エヴァはギターを掻き鳴らす。メーターに魔力を溜めつつ、敵に対抗するための策を頭の中で思い描く。


 二対二のコンビネーションバトルは、後半戦に突入しようとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] エヴァ相手にマグネット戦法は悪手でしかなかったか(ʘᗩʘ’) 今頃、本家本元ラインハルトは角砂糖山盛りコーヒー飲んでるかな?(゜o゜;
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