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278話─薄氷の先に

「生意気な……その余裕がワテを相手にどこまで保つか見せてもらいますえ! バーニングルビー!」


「アスカ、来る! オレのことは構うな、思いっきり動いて避けろ!」


「はいな、お任せやで!」


 本気を出したメルフィンはルビーに秘められた炎の力を解き放ち、火炎の身体を持つ竜を作り出す。竜を差し向け、アスカたちを呑み込むつもりだ。


 流石に炎相手では狙撃中継衛星も役に立たず、ひとまずは逃げに徹することに。バックパックを吹かし、アスカは空を逃げ回る。


「おー、離れてるのに熱気を感じるわ。触れたらウチがよく遊んでた狩りゲーみたいに『ウルトラ上手に焼けました~』されてまうな」


「なんだ、アスカも元いた大地で狩りをたしなんでいたのか? 意外だな、得物は弓か?」


「いや、現実の話やのうてゲーム……なんて言うとる場合ちゃうな、まずはあの火炎竜をなんとかせなあかんで!」


【シュートコマンド】


 ドルトと会話しつつ、大砲を召喚するアスカ。いつかの時のように大砲の空撃ちで方向転換しつつ、炎の竜の追走から逃れようとする。


 その間にドルトは矢に魔力を込め、竜を一撃で滅するだけのパワーを蓄えていた。頃合いを見計らって一撃を……と考えていたが、そう上手くはいかない。


「ホホホ、そのほうらが何を考えているのか手に取るように分かりますえ。バブルサファイア! ふふ、そう簡単に……おっと! 危ない危ない、ワテもイシュナルギの砲撃を食らったら死にますさかいなあ」


 サファイアの力を解放したメルフィンが、大量の泡を作り出したのだ。進路を妨害し、火炎竜が追い付けるようにしたのである。


 ついでに泡を操作してさらに妨害……しようとしたところで、遙か遠くにいるイシュナルギがレーザーを放った。それを避けた結果、追撃は未遂に終わる。


 そしてそれは、アスカたちにとっての福音となる。追加の妨害が来なかったおかげで、ドルトが魔力をチャージし終えたのだ。


「こんな泡程度でオレたちの邪魔を出来ると思うな! 食らえ、パワーレイズアロー!」


 相手の妨害をものともせず、魔力を込めた矢を放って炎の竜を一撃で霧散させるドルト。直後に飛んできたイシュナルギのレーザーを避けつつ、アスカは得意げに笑う。


「へっ、どや! そんなチンケな竜なんて怖くないねん! 追加で食らいや、ギガントショット!」


「少し優位に立ったからって、調子に乗ると痛い目に合いますえ! ストーントパーズ!」


 ついでとばかりに、アスカもメルフィンへ攻撃を行う。が、こちらは相手が呼び出した岩石の盾によって防がれてしまった。


そう簡単には相手を倒せない。が、モタモタしているとメルフィンの攻撃やイシュナルギのレーザーの直撃をもらってしまいかねない。


 焦りが致命的なミスを生む前に、ケリを着ける必要がある。ドルトもアスカも、そう考えていた。


「アスカ、あの盾ごと奴を砕いて一気にケリを着けよう。長々とやってるとあの船にやられる」


「せやな、この状態だとウチはこの大砲をぶっ放すのが精一杯やな。ドルトはん、トドメの一撃を頼めまっか?」


「任せろ、オレとレールタイバーが奴を仕留める」


 サーフボードのようにドルトを背中に乗せている状態では、アスカがアルティメットコマンドを使うことが出来ない。


 そのため、メルフィンを仕留められるか……その成否はドルトに託されることとなった。そんな彼らの様子を見て、メルフィンは機敏に変化を悟る。


「ホホホ、なんや雰囲気が変わりましたなあ。ほんなら、こちらも……ウィンドエメラルド!」


「! ドルトはん、あいつ突風を起こしてきおった! ウチのバランスを崩して攻撃させんつもりや!」


「問題ない、この程度の揺らぎで矢を外すほど……オレの腕は鈍くない」


『アルティメットコマンド』


【アドベント・アステロアグル】


 レールタイバーの出現に合わせ、アスカは相棒を召喚して足場を増やす。が、リジェネレイトでパワーアップしているとはいえ負担が大きいようだ。


「キュキュイ……オモ……」


「カキッ!? キィキキキイ!」


「自分は重くないそうだ。やれやれ、賑やかなもんだな。ま、気を取り直して……行くぞレールタイバー! 奥義……レールエンド・アロー!」


「キキキキィ!」


 レールタイバーと強力し、レールガンの如き必殺の一矢を放つドルト。突風や泡の妨害も意に介さず、メルフィン目掛けて突き進んでいく。


 そして、メルフィンを守る岩石の盾へと到達する。盾を砕かれ片腕をもがれるも、直撃をギリギリ避けたメルフィンは尾を広げた九尾のキツネが描かれたカードを取り出す。


『アルティメットコマンド』


「くうっ、ここでワテは負けられまへんのや! シモンズ隊長の……」


「!? アスカ、デンジャー! デンジャー!」


「へ? おわっ!? こらアカン、ドルトはんにレールタイバー、緊急離脱するで!」


 メルフィンが奥義を発動しようとするなか、彼女の遙か後方にあるイシュナルギを見たアステロアグルが警告を発してきた。


 オート操縦なのが仇となり、射線上にメルフィンがいるにも関わらずレーザーを放ってきたのだ。慌ててアスカが離脱した直後、レーザーが到達する。


「ホホホ、こらちょうどええ。あれを利用させてもらいますわ。エンビ、反撃しますえ!」


「コン!」


「奥義……ソラナキノ業火!」


 キツネ型のモンスター『エンビ』を召喚したメルフィンは、相棒と合体し炎で出来た巨大な炎のキツネとなった。


 迫り来るレーザーと共に、アスカたちを仕留めんと迫る。もはやここまでか、と落胆するアスカだが……。


「アカン、このままじゃ……」


「忘れたのか? アスカ。オレたちにはキルトが授けてくれたアブゾーブカードがあるだろう。それを使えば、この窮地を必ず脱せるはずだ。諦めるな!」


「……せやな、どんなカードかは実戦よお楽しみっちゅーことで確かめておらへんけど。諦めるんはその後でも遅うない!」


「ああ、同時に行くぞ。せー……」


「のや!」


『❤8:REFLECT(リフレクト)


 ドルトとアスカは、同時にアブソーブカードを取り出した。直後に発動したのは、なんと二人とも同じ効果であった。


 防御手段に乏しい二人のため、キルトが同じ反射効果のカードをセレクトしたらしい。結果として、今回はそれが有利に働いた。


 二人分のカードの力で、イシュナルギのレーザーを跳ね返すことに成功したのだ。反射されたレーザーは、メルフィンへと向かい……。


「!? そ、そんなバカな! こんなアクシデントがあるわけ……あああああ!!」


「いや、危なかったわ……。最後まで諦めへんかったからこその勝利やな。あいつ、チリ一つ残さず消滅してもうたなぁ……」


「薄氷を踏み割りかねなかったが、な。ラッキーを拾ったとはいえ、勝ちは勝ちだ。アリエルたちと合流して、キルトの援護に行こう」


 跳ね返されたレーザーに呑まれ、メルフィンは呆気ない最期を遂げた。とはいえ、運が悪ければ反射出来ず自分たちがやられていたかもしれない。


 そう思ったアスカたちは気を引き締め、すでに戦いを終えたであろう仲間たちと合流してからイシュナルギへ向かうことを決めたのだった。



◇─────────────────────◇



「次だ、この実験が成功すれば……私の悲願がついに叶う。さあ、頼むぞ」


『リアリティコマンド』


 その頃、タナトスの行っている実験は最終段階に突入していた。サモンカードでアブソリュート・ジェムの力を再現する試みは、ついに最後の一つ。


 現実を改変する力を持つ『境界のオニキス』を除いて全て成功していた。果たして、最後の実験の結果は……。


『リアリティコマンド』


「む……! リンゴがダイヤモンドの塊に変化したな。内部まて組織が変性していれば実験は成功だが……」


 ベルト型のサモンギアにカードをスロットインし、その効果を発動するタナトス。効果対象となるリンゴがダイヤモンドに変化したのを確認し、続いて内部も変化しているかを調べる。


 特殊な装置を用い、ダイヤモンドを割ることなく内部の状態を調査する。その結果、リアリティコマンドの効果が完全に発揮されていることが判明した。


「フ……ハハハハ! 素晴らしい、ついに! これで七つ全てのアブソリュート・ジェムの力を再現することに成功したぞ! ようやく完成する……フィニスの代わりとなる存在。究極の戦士『サモンマスターアポリオン』がな!」


 結果に満足したタナトスは、狂ったように大笑いする。そんな彼の背後には、金と銀の輝きを放つ二人の天使が静かに佇んでいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 年末も新年も音沙汰ないから心配だから書かせて貰うが大丈夫か?(ʘᗩʘ’) あけましておめでとうございますと言いたいが津波騒ぎで正月特番すら見れんし生きてるか〜?(≧Д≦)
[一言] 復讐がつくづく虚しい結果を呼んでるな(ʘᗩʘ’) もっと口調にそった余裕のある人物と思ったが結局は敵討ちかい(ー_ー゛) タナトスも最終兵器の完成を見てるけど(゜o゜; フィニスに代わる…
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