277話─天空の球技決戦!
第二ラウンドが決着の時を迎えたその頃。離れた空域で、エヴァたちは残る三人の敵サモンマスターとの戦いを繰り広げていた。
イシュナルギの主砲が定期的に飛んでくるため、そう簡単に仲間と合流出来ない。そんな状況下で、アスカとドルトは敵と対峙していた。
「ふむう……そのほうら、なかなかにやるではないか。ワテとここまでやり合えるとはのう。褒めてつかわそう、この『サモンマスタースイフウ』がな」
「ハン、敵なんかに褒められたって嬉しゅうないっちゅーの。どうせならキルトに褒めてもらった方が何億倍も嬉しいわボケ!」
「口が悪いぞアスカ。敵とはいえもう少し丁重に接しろ」
アスカたちの相手は、Ω-13の生き残りの女メルフィン。白を基調とした、神主風の装束と緑色の烏帽子を身に着けている。
日本史の教科書に載っている、平安時代の貴族のような格好をした敵を見てアスカは日本にいた頃を思い出す。
「んー、せやけどアンタ見てるとえらい懐かしい気持ちになるわぁ。大阪におった頃はロクに勉強も」
「ほお、ワテを前にずいぶんと余裕であるな。その態度がいつまで保つのか試してくれようぞ」
『ケマリコマンド』
「なんだ、あいつボールを召喚し」
「ほいっとな!」
「おあっ、蹴ってきよったで! ドルトはん、避けぇや!」
人の良さそうなえびす顔のまま、メルフィンは腰に下げた桜色のデッキホルダーから一枚のサモンカードを取り出した。
それを、髪を束ねるのに使っているかんざし型のサモンギアにかざして効果を発動させる。舞い散る桜の花びらが描かれた鞠を召喚し、勢いよく蹴った。
「ハッ、たかが鞠一つウチらの射撃で……? んん、なんやゴツい金属音がするで!?」
「うおっ!? あ、危なかった……あのボール、一体どんな材料を使ってるんだ!?」
それまでのらりくらりと攻撃を避けてばかりだったメルフィンの反撃。アスカたちは所詮は蹴鞠とタカを括っていたが、すぐにそれがまずいと悟ることに。
鞠は凄まじく硬く重く、銃弾も矢も全く効かない。そんな物騒なモノが猛スピードで飛来してくるのだから、たまったものではない。
なにせ、すぐ近くを通り過ぎただけでかなりの風圧が発生するのだ。直撃を食らえばどうなるか、想像するだけで鳥肌ものである。
「ホホホ、ワテの攻撃を避けるか。そのほうら、実に面白いわあ」
「へん、ちょいと驚いたけど問題あらへんわ。お前を直接ねら」
「アスカ、後ろ! ボールが戻ってきてるぞ!」
「へ!? おあっ!」
見事攻撃を避けたアスカとドルトに、メルフィンは付属品の扇子を仰ぎながら声をかける。余裕しゃくしゃくな相手にイラッときまアスカは、躊躇なく銃口を向けた。
が、その直後。メルフィンが口笛を吹くと、遥か空の彼方へすっ飛んで行っていた鞠がUターンして戻ってくる。
ドルトの叫びによって、アスカは即座にバックパックをフル稼働させて回避を試みる。が、初動が遅れたことで避けきれず、左下のエンジンに直撃してしまう。
「おああああ! お、落ちるーーーー!!」
「アスカ、今助けに」
「行かせるわけないんですわなあ、これが。次はあんさんの番どす、ワテの鞠で真っ逆さまに落ちていきんさい!」
頑丈さゆえに全壊とまではいかなかったが、コントロールを失いアスカは地上へ落ちていく。ボーンバードを駆り、ドルトは助けに向かう。
そんなドルトの背中に向かって、メルフィンは再度鞠を飛ばす。背後から迫り来る死の球の存在に気付くのが遅れ、ドルトは……。
「がはっ!」
「ドルト! くそっ、あのアマよくもやってくれおったな!」
胴体を鞠に貫かれ、ボーンバードから落下する。魔力を注ぎ、無理矢理コントロールを取り戻したアスカは急ぎ彼を助けに行く。
事前に双子から蘇生の炎を宿してもらっていたおかげで、即座に傷が癒え息を吹き返した。だが、ドルトが乗っていたボーンバードは鞠の追撃で倒されてしまう。
「ホホホ、これでそちらのエルフさんはもう飛べませんなあ。どないしはりますか? 尻尾を巻いて逃げるんなら背中を撃ち抜きますえ」
「くっ、済まないアスカ。オレがもう少し気を配っていれば」
「ええんや、こういう時は助け合う……っぶな! アカンわ、あの船の砲撃もあるの忘れとったで」
アスカに腕を掴まれ、申し訳なさそうに謝罪するドルト。そんな彼らに向かって、イシュナルギの主砲が放たれた。
どうにかレーザーを避けた後、ドルトは策を閃く。アスカに耳打ちし、反撃の一手を伝える。
「なるほど、それならまた攻めていけるわ。よっしゃ、ほんなら早速やるで!」
「ああ、失礼させてもらう。よっと!」
「んん~?? ホホ、こら面白いどすなぁ。お仲間の上に乗ってサーフィンごっこかい?」
「ハッ、言ってろボール女。見せてやる、オレとアスカだからこそ出来るコンビネーションを!」
『リレイコマンド』
バックパックとアスカの肩に足を乗せ、魔力のロープで身体を繋いだドルトは相方の上に立つ。それを見たメルフィンがカラカラ笑うなか、狙撃中継衛星を十四個召喚する。
「こんなたまっコロで何が出来るんでありんしょ。そろそろ死んでもらいますえ、お二人さんにはね!」
『ストライクコマンド』
衛星に囲まれたメルフィンは、二枚目のカードを取り出して鞠の貫通性能を強化する。狙撃中継衛星諸元に、ドルトたちを始末するつもりだ。
「ホホホ、これで終わり……なっ!?」
「残念だったな、オレとアスカ……二人分の魔力を使えば、こんな芸当も出来るのさ!」
「自分の蹴ったタマッコロに貫かれるがええ!」
が、手元に呼び戻した鞠を勢いよく蹴り飛ばした次の瞬間。衛星が動き、飛来する鞠に触れる。そのまま木っ端微塵……になることはなく。
別の衛星へと鞠を飛ばし、さらに加速させながらメルフィンの方へと軌道修正し始めたのだ。本来、衛星が軌道をコントロール出来るのはドルトの矢のみ。
だが、アスカとドルトの二人分の魔力を注ぎ込んでブーストすることで、無理矢理リミッターを解除して他の飛翔物も軌道を変えられるのだ。
「まず……あぐあっ!」
「へっ、一矢報いてやったで。ざまあみろやな!」
「ああ、このまま死んでくれればいいが……無理だろうな。あいつ、致命傷を負う直前でボールを消したのが見えた。まだ仕掛けてくるだけの余力はあるだろう」
まさか自分の攻撃を跳ね返してくるとは思っていなかったようで、メルフィンは土手っ腹に鞠の直撃を食らった。そのままリタイヤ……と、思われたが。
「ふ、ぐう……! やってくれはりましたなあ、出撃する時に『フウスイコマンド』のカードを使って運気を整えてなかったら……今ので死んでましたえ」
「安心せえや、次でキッチリ殺したるさかいな。アンタの今日の運勢は大大大大大凶で固定や!」
「小娘ぇ……舐めたクチ利いてっと……クチャクチャに潰すぞわりゃあ!」
『ダイナライズ:アニマクロス』
『ディセプティス・ガラ……オン・エア』
アスカに挑発されたメルフィンは、激昂しながら扇子を投げ捨てる。怒りのままにダイナライズキーを取り出し、秘められた力を解き放つ。
すると、メルフィンの周囲を煌びやかな四つの宝石が取り囲むようにあらわれ浮遊しはじめる。ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ。
それらが宿す炎、水、風、地の四つのエレメントのパワーを用いて戦うようだ。アスカはフンと鼻を鳴らし、銃を構える。
「ダイナライズしたところで無意味やで、ウチらは負けへん! せやろ、ドルトはん」
「ああ、こんなところでやられてたらキルトに申し訳が立たないからな。……足を引っ張るのはオレの流儀に反する、一気呵成に仕留めさせてもらおう!」
アスカの言葉に応え、ドルトも弓を構える。戦いを制するのは、果たしてどちらなのか……。




